「日本で働く外国人は足りない」入管法改正も物議…外国人雇用協議会理事が語る外国人労働者の現状

外国介護福祉士研修の様子(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

近頃、外国人労働者の問題が関心を集めている。

法務省によれば、日本で働く外国人の数は、昨年末時点で約128万人に達したという。法務省が統計を取り始めてから過去最高の記録だ。

今年9月には訪日外国人観光客の数が5年ぶりに減少したことが関心を集めた一方で、外国人労働者の数は増加の一途をたどっている。

(参考記事:5年ぶりに減少した訪日外国人観光客。なかでも韓国人観光客がもっとも減った理由は?

そんな中、最近は一般紙でも外国人労働者の実態が取り上げられており、各種メディアで特集が組まれることも多い。

また、安倍政権が進めている外国人労働者の受け入れ拡大政策も関心を集めており、開会中の臨時国会に提出される出入国管理法の改正案も注目されている。

外国人労働者の増加に対するさまざまな議論も巻き起こっているが、そんな外国人労働者問題に対応すべく、2016年4月に設立されたのが一般社団法人外国人雇用協議会だ。

企業や有識者で構成された外国人雇用協議会は、「日本の言語・文化・ビジネス習慣に通じた質の高い外国人を、日本のビジネス社会で最大限に活用できる環境を整えること」を目的とし、安倍首相への政策提言や企業向けセミナー・勉強会などを行っている。

そんな外国人雇用協議会は、外国人労働者が急増している現在の状況をどのように見ているのか。同協議会理事であり、外国人材専門の紹介・派遣会社グローバルパワー代表取締役の竹内幸一氏に話を聞いた。

「日本で働く外国人はまだまだ足りない」

「たしかに外国人労働者の数は急増していますが、まだまだ足りていないというのが私の考えです」

外国人労働者の現状について訊くと、開口一番にそう切り出した竹内理事。日本で働く外国人が足りないと考えているのはなぜだろうか。

竹内理事は、「日本の課題を解決するためには、外国人労働者が必要なのです」という。

「現在、日本が直面している一番の課題は、15歳から64歳の生産年齢人口が激減していることです。これが唯一無二といってもいいぐらい深刻な問題です。今年1月の時点で、生産年齢人口は初めて全体の6割を切りました。高齢者が多いため、全体の人口は急激には減りませんが、生産年齢人口は今後さらに減っていきます。

その解決法として、“女性”“高齢者”“AI・ロボット”、そして“外国人”の活用が挙げられますが、その中で日本社会にもっとも貢献できるのが外国人労働者だと私は考えています。日本は今後、社会保険料や年金保険料を納め、日本で経済活動をする人を増やさなければならないわけですが、AI・ロボットでは大きな成果を見込めないでしょう。

つまり、日本は外国人労働者に頼るしかないのです。日本において外国人労働者は、労働力としても必要であり、日本社会を担う人としても必要な存在だといえるでしょう」

「外国人の採用需要は10年前の1000倍」

実際に、生産年齢人口の減少によって人手不足が進むが、企業の中でも外国人労働者の需要が増えているという。

「私の肌感覚では、外国人の採用需要は10年前と比べて1000倍ぐらいに増えています。今、外国人雇用をまったく考えていないという企業は、全体の3~4割程度しかないのではないでしょうか。逆にいえば、6~7割の企業は外国人を雇用する必要性を痛感しているわけです。一昔前なら外国人を雇おうとする企業はほとんどなかったのですから、大きな変化を実感しています」

日本企業は外国人なしでは回らなくなっているわけだが、その外国人材の中でも、特に外国人雇用協議会が注目しているのが、「中核外国人材」と呼ばれる層だ。

「中核外国人材」とは、いわゆる高度人材と単純労働者の中間に位置する層のこと。高度な専門性は持たないが、一定のコミュニケーション能力や事務能力などを持った外国人労働者がこれに該当する。

「“高度人材”の在留資格の資格要件はレベルが高く、資格を取得できるのは一部の外国人のみ。一方で単純労働に従事する外国人の数は増えていますが、就きたい仕事に就けず自分の国に帰ってしまうケースも多い。今後は、その2つのどちらにも属さない中間層の拡大こそが必要だと考えています」

例えば、韓国でも最近、青年失業率が過去最悪となり、自国を“ヘル朝鮮”と揶揄して日本に移住する若者が増えているが、そんな韓国人の多くが「中核外国人材」に該当すると竹内理事は話す。

(参考記事:「バイトすらない」韓国の“青年失業率”が最悪レベル…頼みの綱は人手不足の日本なのか

「外国人の中でも、韓国人はもっとも“中核外国人材”に適している人材ではないでしょうか。他国の人に比べて日本語の習得スピードも早いですし、日本のタテ社会は韓国から学んだことも多い。文化的にも近いので、高度な専門性を持たなくても、日本にとって受け入れやすい人材だと思います。

日本は人手不足で、韓国は人が余っている。そのため、どうしても人材の流入が一方通行になってしまうかもしれませんが、いずれにしても、日本はもっと韓国人を受け入れていってもいいのではないかと思います」

日本と韓国にはさまざまな意識のズレはあるが、互いに人手不足と就職難という課題を抱えているのは事実。韓国人が日本で「中核外国人材」として活躍できれば、“ウインウイン”の関係を築ける可能性もあるだろう。

(参考記事:日本5%vs韓国56%という意識のズレ…なぜ韓国人は「日韓関係は今後良くなる」と考えるのか

外国人採用の基準となる試験がスタート

ただ、外国人労働者の受け入れ拡大には、課題も多いという。竹内理事は、「入管法の問題もありますが、一番の問題は日本人の意識の問題です」と語る。

取材中の竹内理事(著者撮影)
取材中の竹内理事(著者撮影)

「日本人の中には、いまだに外国人を下に見ているところがある。特に、アジア人は見た目が似ているため、日本語が少し変なだけで小馬鹿にする傾向がありますよね。

日本人だけで成り立ってきた企業にとっては、そんな外国人を受け入れるのが面倒くさい。これまでは人口が増えていた中で企業が人を選べたので、日本語が上手に話せて、日本の常識を踏襲してくれる人でなければ、なかなか受け入れられないのです」

そんな課題も踏まえたうえで、外国人が日本で活躍できる環境を整えるために外国人雇用協議会が実施しているのが、「外国人就労適性試験」(TEAFN)だ。

TEAFNは、日本で働くためのマナーや常識、ビジネス上のコミュニケーション能力などを測定するもので、企業にとっては外国人を採用するうえでの基準の一つになる。

11月5日には、今年9月の第1回試験受験者だけを集めた合同就職面接会も行われるというが、竹内理事は試験実施の背景について、「これまでは、企業が外国人を採用するうえで基準となるものがなかったのです」と話す。

「外国人を採用する企業側が知りたいのは、日本で働くうえでの常識レベルと、コミュニケーション能力です。これまでは多くの企業が日本語能力試験(JLPT)のレベルを見て外国人を選んできましたが、JLPTは“正しい日本語”の普及を目指して設計されています 。外務省系の組織が主催するJLPTに対抗して、経産省系列で開発されたBJTについても主たるコンセプトに違いはありません。

それに対してTEAFNは、“日本で就労するために必要な日本語”を測定することに目標を置いています。したがって、“正しい日本語かどうか”は重視しません。極論すれば文法や漢字が少々間違っても、コミュニケーションできればその人材の評価は高くなるように試験を設計しています。

私自身、JLPTのスコアが良くても、面接において日本語の会話で面接官とのコミュニケーションが取れない受験者を多く見てきました。JLPTのレベルを見ただけでは、企業側が本当に知りたいことがわからなかったのです。

そんななかで、日本で働くうえでの常識とコミュニケーション能力を試験し、就労の適性を見られるような基準を作ろうという狙いでスタートしたのがTEAFNです。第1回試験では400人以上の受験者が集まりましたが、今後は企業への認知も広げ、この試験を受験すれば、外国人の就職が有利になるような状況を作っていきたい。将来的には、この試験を突破すれば在留資格を取得できるようにしたいです」

このTEAFNをはじめ、外国人労働者を受け入れる環境も整いつつあるわけだが、それだけに気になるのは今後のことだろう。はたして、外国人労働者は今後も増え続けるのか。

「今後も外国人労働者が増えていくのは間違いないでしょう。企業の人手不足はさらに加速していきますし、日本人の意識も変わってきています。外国人が働いていることに違和感を感じる人も少なくなりましたが、そうして外国人労働者に慣れていけば、外国人を下に見る風潮も改善され、もっと外国人に寛容な社会になっていくと思います。

宗教的な背景もあって、日本人には順応性があります。日本の生産年齢人口が激減しており、外国人労働者を受け入れざるを得ないという現実を理解して、どうすれば日本を後世に残していけるかと考える人が増えれば、外国人労働者も日本でもっと受け入れられていくのではないでしょうか」

日本で急増している外国人労働者。これからもその数は増えていくと竹内理事は語ったが、当面はこの問題が大きな話題になり、さまざまな議論を呼ぶことは間違いないだろう。日本で暮らす外国籍の一人として、この課題は今後も注視していきたい。