驚きの連続だった。10月12日にソウルで行われた韓国代表対ウルグアイ代表のことだ。

韓国、ウルグアイ代表に初勝利

すでに報じられている通り、試合は2-1で韓国代表が勝利した。韓国ホームでの試合だったとはいえ、過去の対戦成績は0勝1分け6敗と一度も勝った試しがなく、まして現在のウルグアイ代表はロシア・ワールドカップでべスト8入りし、FIFAランキングも5位にある。スアレスを欠いていたとはいえ、カバーニら主力を多数揃えた南米の強豪に、韓国が勝つと予想する者は少なかった。

もっとも、驚きの前兆は試合前からあった。例えばメディアの多さだ。記者室ではサッカー専門メディアや新聞メディアだけではなく、試合を中継しMBCの女性アナウンサーで“Kリーグ女神”と呼ばれるチョン・スンジュさんの姿も見かけるなど、いつになく大勢のメディアが駆けつけていた。

KFA広報担当者によると、通常のメディア枠以外にデイリーパスも発行せねばならないほどで、普段はサッカーを取り上げないメディアからの申請もあったらしい。その中にはサッカーとは縁遠い女性専門メディアの関係者も複数いたというのだから驚きだった。

超満員のスタジアム。急増する女性サポーター

記者席に行くなり目の前に飛び込んできた観客の多さにも驚いた。ソウル・ワールドカップスタジアムの客席が大勢の観客で埋まっていたのである。ロシア・ワールドカップ・アジア予選時は2万人に満たないことが何度もあった韓国代表の試合に、6万4170名(主催者発表)の大観衆が詰め掛けていたのだ。

しかも、その多くが女性たち。4年に一度韓国を沸かせ今年も話題となった “ワールドカップ美女”たちだけではなく、10代の中高生の姿が非常に多かったのである。

グループリーグ敗退で終わったとはいえ、最終戦でドイツ相手に大金星を飾ったことや、アジア大会で金メダルに輝いたことで、ソン・フンミンやイ・スンウがアイドル級の人気を呼ぶようになり、突如としてサッカー人気が沸いているとは聞いていたが、まさかそこまではとは思わなかった。

(参考記事:BTSと同列？ 韓国で起こるサッカー選手の“アイドル化”。女性ファンが人気低迷のKリーグ救うか)

ベント新監督は変化をもたらすか

もっとも、何よりも驚かされたのは韓国代表の変化だった。立ち上がりから積極的に攻撃を仕掛け、ときに韓国らしからぬ流れるようなパスワークも披露。特にカウンター時は本来の速さに加え、複数の選手たちがゴール前に攻め込み迫力もあった。

ロシア・ワールドカップのスウェーデン戦やメキシコ戦では、韓国代表の守備的で消極的な姿に記者仲間たちとため息をついたものだが、今回のウルグアイ戦ではどよめきも起こったほどだった。

8月に新たに韓国代表の指揮官に就任したパウロ・ベント監督体制になって、韓国はコスタリカ代表に2-0の勝利を飾り、チリ代表に0-0に引き分けるなど順調な滑り出しを見せているが、チームの変化は新監督がもたらしたものなのか。

まだ見定めるのは早いかもしれないが、試合開始から終了までたった一度もベンチに座らずテクニカルエリアに出ずっぱりで指示を送る姿は、ウリ・シュティーリケ監督にはなかった“熱”を感じさせたし、記者会見にコーチングスタッフ(4人のポルトガル人コーチと元清水エスパルスのチェ・テウクコーチ)全員を同席させて情報共有するやり方などは、2006年ワールドカップで韓国を指揮したディック・アドフォカート監督時代のそれを思い起こさせた。

ファン・ウィジョが語ったウルグアイ代表

選手たちとの関係も良好のようで、キ・ソンヨンもミックスゾーンで「選手たちは監督が求めるプレーをするために努力している。(監督は)選手たちが自信を持っていることも知っている。もちろん、親善試合だが、ウルグアイに初勝利できたのは、そんな努力の成果だ。(チームは)これからもっとよくなるだろう」と、ウルグアイ戦勝利で得た手応えを隠さなかった。

(参考記事:ソン・フンミンらが語るベント新監督の第一印象。「スポンジになりたい」「練習が繊細」)

そんなミックゾーンで誰よりも記者たちに囲まれていたのは、先制ゴールを決めたファン・ウィジョだった。アジア大会が続く好調を所属するガンバ大阪でも維持し、今では韓国代表のワントップ大本命にも躍り出たコリアンJリーガーは、ウルグアイ代表の印象についてこんなことも語っていた。

「とても強いチームだから当然のことですが、個々の能力が高かった。特に攻守の切り替え、攻撃から守備に切り替えるのが早く、スペースを与えてくれなかった。わずかな隙の中でゴールを決めなければならない難しい試合だった」と。

日本代表は本日、そのウルグアイ代表と対戦するが、逆に韓国代表はホームにパナマ代表を迎え撃つ。韓国メディアはその結果をもとに、日韓両国の間接比較もするだろう。

(参考記事:「停滞期の日本に適任だ!!」森保ジャパン誕生を韓国メディアはどう見たか)

ただ、今日の試合結果にかかわらず、韓国サッカーの盛り上がりは当分続きそうでもある。

試合が終わっても帰路につこうとせず、大勢のファンやサポーターたちが韓国代表を乗せたバスを“出待ち”していた光景を眺めながら、ふとそう思った。