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アジア大会で続く韓国の不振。野球の衝撃敗にファンが怒り爆発のワケ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

ジャカルタで開催中のアジア大会が11日目を迎えた。

総合2位を目標に掲げている韓国は、先日も紹介した“ヒョジャ種目”アーチェリーで女子リカーブ団体が大会6連覇を果たし、水泳女子200メートル個人メドレーではキム・ソヨン(24)が36年ぶりに金メダルに輝くなど、大会前から期待された「アジア大会7大美女アスリート」たちが着実に結果を残している。

ただ、その一方で6連覇が期待されていたフェンシング女子フルーレ団体は準決勝で日本に敗退。“お家芸”のテコンドーも目標だった金9つのうち5つに終わり、16年間王座を守ってきたアーチェリー女子個人では世界ランキング1位のチャン・へジンが決勝進出を逃すなど、予想を裏切る結果も多い。

特に、メディアやファンがもっとも懸念を示している種目が、野球だ。

アジア大会に出場している韓国野球代表は8月26日、B組初戦で台湾に1-2の敗北。早くも窮地に立たされた。韓国球界は今回のアジア大会に、人気ナンバーワン・チアドルのパク・キリャンをはじめ、アン・ジヒョン、チョン・ダヘ、ナムグン・ヘミ、シム・ソヨンら人気チアドルたちを選抜し送り込んでいるが、そんな力の入れようも情けなくなるような結果だった。

(参考記事:【写真11枚】激かわ「キス顔」も!! アジア大会の“韓国代表チアリーダー”が美女すぎる!!

というのも、プロに所属する7人を除けば全員が社会人チーム選手だった台湾に比べ、韓国はエントリー全員がプロ選手だったのだ。それゆえに韓国の野球ファンたちの間でも不満と心配の声が噴出している。

メディアでも台湾戦を「ジャカルタ惨事」と表現するところは多く、「台湾戦の敗北…韓国野球のバブル再確認」(『MKスポーツ』)、「台湾にひざまずいた宣銅烈号」(『Oh my news』)、「韓国野球の衝撃敗、マンネリに陥ったベンチの敗北」(『スポーツ朝鮮』)などの見出しを打って報じているほどなのだから、その衝撃の大きさがうかがえるだろう。

そもそも、今回の韓国代表はエントリー発表時から炎上が絶えなかった。過去5回のアジア大会のうち4回も優勝に輝いている韓国代表は、今大会でも当然のごとく優勝が予想されていたが、多くの兵役未了選手が選ばれたことで「アジア大会優勝=兵役免除」という恩恵狙いの魂胆が見え見えだった。

特に、兵役延期のリミットが迫った28歳のオ・ジファン(LGツインズ)、パク・ヘミン(三星ライオンズ)は昨年末、有能なスポーツ選手たちの受け皿となる国軍体育部隊や警察庁野球団などでの代替え服務のチャンスを自ら放棄していた。

よって2人はこのままでは現役兵として入隊するしかないが、放棄の背景には、明らかにアジア大会での金を念頭に置いたディールがあったという噂が絶えなかった。

(参考記事:大リーガーがアジア大会に“死に物狂い”になる理由とは? 兵役問題で早まった韓国プロ野球の開幕

そんな一部のやっかみがある中でアジア大会の初戦、それも社会人中心の台湾に敗れただけに、ファンの怒りの矛先はふたりに集った。

ファンから「露骨な兵役逃れ。アジア大会の優勝が兵役免除の手段として悪用された」「ぜひ銀メダルにとどまってほしい」との怒りの声が続出したのは、言うまでもない。

かつてアジア大会やオリンピックで自身はもちろん後輩たちの金メダル獲得も、その活躍でアシストしたとして「兵役免除ブローカー」とされ、今大会では解説者デビューしたイ・スンヨプも複雑な口調で後輩たちの躓きを慮っていた。

(参考記事:「日本時代は最悪だった」イ・スンヨプは今、どこで何をしているのか【独占インタビュー】

いずれにしても、台湾に負けたというまさかの事態に韓国の野球ファンたちの怒りは爆発気味だ。決勝進出のためには残りの全試合に勝つことが絶対条件になったため、まだ決まってもいない日本戦で誰が先発を務めるかを騒いだメディアの先走りも、虚しいばかりである。

韓国は近年、国際大会の初戦に敗れると予選突破に苦戦するジンクスがあるため、優勝は険しい道のりになりそうだが、はたして。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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