韓国はアジア大会になぜ燃える?日本ではわかりづらい「スポーツと兵役」の関係とは…

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

2017年のアメリカ男子ツアーのプレーヤーズ選手権を制したのは韓国のキム・シウだった。若干21歳10か月(当時)での優勝は、2003年にアダム・スコットが記録した最年少記録を塗り替た快挙として多く取り上げられたが、アメリカでは別の部分にも焦点が集まった。

「プレーヤーズ選手権優勝のキム・シウはいつか兵役義務を履行しなければならない」

『ゴルフチャンネル』や『CNN』が成人男子に兵役の義務を課している韓国の実情を紹介しながら、「キム・シウもその義務を遂行しなければならない」と言及。「彼が兵役に行かなければならないのは、韓国と北朝鮮が依然として休戦状態にあるためであり、軍服務に関して例外はない」との説明も加わった。

まるで北朝鮮の核武装・ミサイル問題で揺れるご時世を意識したかのような報道でもあったが、緊迫した朝鮮半島情勢は今や日本にとっても他人事ではないだけに看過できないところなのだろう。

もっとも、韓国にとって北朝鮮リスクは日常的なものであり、いちいち過敏に反応するものではなくなっている。日本人に馴染みが薄い「兵役=軍隊」も、韓国の成人男子にとっては当然の“国民の義務”なのだ。

ただ、だからこそ気になるのは、韓国スポーツと兵役の関係だろう。最近はサッカー・プレミアリーグのトッテナムで活躍するソン・フンミンが、兵役免除という名の金メダルを目指してアジア大会に参加していることが話題だ。

(参考記事:【裏話】なぜトッテナムはソン・フンミンのアジア大会出場を許可したか。関係者が明かす)

日本人にはわかりづらい“韓国スポーツと兵役”の関係を、男子ゴルフを例に紐解いていきたい。

韓国の男子アスリートたちの兵役事情

「キム・シウにしてもハン・ジュンゴンにしても、いずれ兵役に行くのでしょうが、今のところ申告はないですね。入隊時期は各自が決めることなのですから」

そう教えてくれたのは韓国プロゴルフ協会・運営チームのオ・ヨンソク次長だ。KPGAでは加盟会員の選手たちが兵役に着く場合、事前に申告を受け付けるという。

「KPGAツアーで複数年シードを持つ選手には、兵役期間中は対象外とみなし、シード権の保有年数を延長する特例処置を与えています。国のために大事な2年間を捧げるですから当然です」

そもそも韓国では兵役が法律で定められている。前出の通り、韓国と北朝鮮の間には軍事的緊張があり、国防のために成人男子には兵役の義務が課せられているわけだが、有名なスポーツ選手や芸能人、さらには財閥の御曹司や政治家の息子であっても特例はない。

(参考記事:「えっ、そんな理由で?」兵役を免除された20人の韓国芸能人を一挙紹介!!)

むしろ兵役を拒否したり、不正を働いて逃れようものなら、国中の非難を浴びることになる。かつて有力な大統領候補は息子の兵役不正が発覚して失脚しているし、人気絶頂のアイドルは兵役拒否を理由に今も入国を許されてない。

(参考記事:兵役逃れが発覚した韓国スター10人。精神科通院、抜歯、国籍放棄などその手口とは?)

脱税、麻薬の常用、兵役の不正回避が「韓国人がもっとも反感を抱く3大犯罪」とされているが、韓国人にとって兵役は、誰にでも平等に納税義務のように平等で、社会秩序を守るように当然のことでもあるのだ。

韓国のとある男子プロもこんなことを言っていた。

「子供の心から“自分の国は自分で守る”と教わるし、父親や親族・兄弟や先輩たちも皆、軍隊に行っているから当たり前のこと。むしろ軍隊に行ってこそ“一人前の男”として認められます。兵役は大人になる条件なんです」

兵役の義務が発生するのは満18歳となる年の1月1日から。その後、身体検査や筆記試験などの適正検査を受け、「現役兵」「予備役」「補充兵」「第一国民役」など1級~7級の判定が下り、しかるべきタイミングで4週間の基礎軍事訓練を受けたあと、それぞれの判定に準じた務めに約2年間(21カ月~24カ月)従事する。

(参考記事:【まるっとわかる韓国の兵役】徴兵制は韓国男児の義務! まずは「徴兵検査」から)

しかるべきタイミングとしたのは、兵役の時期を自らの意志で決められるからだ。例えば大学や専門学校に籍を置いている場合や専門的な職種の場合は、数年間、先延ばしすることもできる。

また、外国で永住権を得て当該国に1年以上居住していれば“国外旅行許可”が下り、入隊時期を延長することも可能だ。いずれにしても今年6月の兵役法改正で、28歳の誕生日までに兵役に従事しなければならず、そのためには28歳前後が必然的に兵役タイムリミットとなる。

この兵役法タイムリミットに引っかかってしまった端的な例が、2011年日本ツアー賞金王ペ・サンムンだった。(つづく)

(初出:『週刊パーゴルフ』2017年6月6日号掲載の原稿に加筆・修正を加えたものです)