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韓国記者も「大迫がハンパない」と絶賛。明暗分かれた日本と韓国は何が違ったか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

西野ジャパンがコロンビアを相手に挙げた大金星が韓国でも大きく報じられたことは、日本でも紹介されていることだろう。

「日本、コロンビアを2-1で制圧…アジアが南米に初勝利」(『聯合ニュースTV』)、「まさか日本がコロンビアに勝つなんて…開いた、H組のHell Gate」(『SPOTVNEWS』)などがそうで、スポーツ新聞『スポーツ・ソウル』などは、セレッソ大阪のユン・ジョンファン監督の戦評も掲載したと聞く。

(参考記事:C大阪ユン・ジョンファンがコロンビア戦を分析。日本と韓国は何が違ったか

異例のボリュームでの扱いがその衝撃の大きさを物語るが、ここロシアで取材を続ける韓国記者たちも、驚きを隠せないでいるようだった。

日本対コロンビア戦が行われていたとき、韓国代表はキャンプ地のサンクトペテルブルクで練習中だったが、ク・ジャチョルの会見を待つ間、インタビュールームでは試合の映像が流れて、多くの記者たちがそれを見守った。

試合が終わった直後、決勝ゴールを決めた大迫に関する問い合わせも多かった。

経歴だけではなく、性格やプライベートのことまで訊かれたので、2014年にモデルの三輪麻未と結婚したことを教えてあげると、「韓国のサッカー選手も芸能人の妻が多いですけど、日本もそうなんですね」と笑顔を見せた記者もいたほどだ。

(参考記事:【画像】ソン・フンミンの「恋人」は? 韓国代表の「美女パートナー」たちがかわいすぎる!!

そんな韓国記者とのやり取りの中で印象的だったのが、ソ・ホジョン記者の話だった。

ソ・ホジョン記者は、韓国大手ポータルサイト『NAVER』で活躍するサッカージャーナリストで、『Goal.com KOREA』の編集長も務めている。

テレビ中継ながら、ロシアで日本の大金星を見守ったソ・ホジョン記者が、開口一番に語ったのは、こんな言葉だったのだ。

韓国記者が見た「日本対コロンビア」

「前半3分にあまりに大きな幸運が舞い降りましたね。“一つを放って二つを得た”コロンビア選手の退場は、日本にとってとても有利な状況を作りました」

香川真司が放ったシュートを腕で止めたとして、カルロス・サンチェスが一発退場となった場面のことだ。

日本はこのハンドによってPKを獲得。このPKを香川が決め先制したが、ソ・ホジョン記者は、日本は1人多い状況をうまく活用したと評価する。

「日本の選手たちは、数的優位を活用するのが上手かった。ボールをキープし、コロンビアを疲れさせたことが効果的だったと思います。

単に1人多い状況だっただけでなく、日本がそのように試合を展開したからこそ、有利に試合を運べたのではないでしょうか。実際、後半の中盤ごろからはコロンビア選手たちの疲労が目立っていましたよね」

日本は数的優位の状況を効果的に活用し、試合を有利に進めたことが大金星をもたらしたという見方だ。

また、決勝ゴールを決めた大迫勇也の活躍も大きかった。

「大迫のようなFWは久しぶりに見た」

「大迫のプレーは強烈に印象に残りました。大迫が前線でアグレッシブに相手と競り合うことで、日本にチャンスが生まれたと思います」

特に後半28分にコーナーキックから決めた決勝ゴールが印象的だったという。

「あのゴールは良かったですね。相手との激しいコンタクトを恐れず、ためらいなく飛び込んでいった。その大迫の闘魂が、数センチの決定的な差を生んだのではないでしょうか。

こんなFWは、日本では久しぶりに見た気がします。これからも楽しみな選手です」

韓国記者の目から見ても大迫のプレーは際立っていたわけだ。試合前はもともと韓国で知名度の高い香川や本田に注目が集まっていたが、コロンビア戦を機に大迫に対する評価が高まったということだろう。

(参考記事:「不振の中心に本田がいる…」韓国メディアはロシアW杯に挑む本田圭佑をどう報じているのか

そんな大迫の活躍もあってコロンビアに勝利した日本だが、ソ・ホジョン記者は、ワールドカップ開幕前のテストマッチの成績も日本のパフォーマンスに影響したとみている。

「日本はパラグアイとの最後のテストマッチに勝ちましたよね。ここで勝利したからこそ、日本は自信を持って初戦に臨めたのではないでしょうか。初戦のスウェーデン戦に敗れた韓国とは対照的ですよね。

韓国は直前のテストマッチでは3戦連続で白星なし。試合内容も悪かった。そんな沈んだムードを引きずったまま初戦に臨んでいました。それが結果にも表れてしまいましたから」

直前のテストマッチで勢いに乗った日本に対し、韓国は悪い流れを断ち切れないまま初戦に臨んでしまった。その差が両チームの明暗を分けたということだろう。

「初戦で敗れた韓国を横目に、イランに続いて日本まで……正直、妬ましい気持ちもないわけじゃない(苦笑)。でも、それでも日本の力を認めざるを得ません。

コロンビア戦では、この試合にかけているという日本の覚悟の強さも見えました。日本には、“大金星”を手にする資格があったと思います。コロンビア戦の勝利には大きな拍手を送りたいです」

コロンビアを相手に大金星を挙げた日本と、黒星スタートとなった韓国。東アジアの初戦は対照的な結果となったが、だからこそ注目したいのは韓国の第2戦となるメキシコ戦(23日)でもある。

初戦に敗れ意気消沈する韓国は、西野ジャパンに続いて結果を残せるか。もっとも、開幕前から続く沈んだムードを引きずったままのいまの状況が気がかりだが……。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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