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日本にはない!韓国の独身男女たちが喜怒哀楽する「ブラックデー」とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(ペイレスイメージズ/アフロ)

2月14日はバレンタインデー、3月14日はホワイトデー。この2大“恋のイベント”を知らない日本人はいないだろう。それは韓国も同じで、このシーズンには恋人たちを中心にチョコレートやプレゼントが飛び交ったりする。

ところが、韓国にはこの2大イベントから派生した面白い記念日が一つ存在する。ホワイトデーからちょうど1ヵ月後である4月14日の「ブラックデー(Black Day)」がそれだ。

華やかなイメージのバレンタインデーやホワイトデーに比べると、「ブラック」と名が付くだけでどこか不吉で陰気な感じもするが、実はそれがまさにブラックデーの狙いでもある。

というのも、ブラックデーはバレンタインデーやホワイトデーにチョコやプレゼントを受け取れなかった、独り身だけに許されたイベントなのだ。

愛に恵まれず心が「真っ黒」になってしまったであろう独り身たちが、その恨めしさを思う存分アピールする日なのである。名前にブラックが付いたのは「ホワイトデーを皮肉った」という説がもっとも有力だ。

韓国の大手ポータルサイト『NAVER』でブラックデーの定義を検索すると、「バレンタイデーとホワイトデーにチョコをもらえなかった男女がジャージャー麺を食べる日」と出てくる。

ジャージャー麺といえば、韓国における“黒い料理”の代表格。その上、一人分でも気軽にデリバリー配達を頼める数少ない料理でもあるので、ブラックデーを記念するにはうってつけなのかもしれない。

(参考記事:日本と似て非なる韓国のバレンタインデー。チョコじゃなくてジャージャー麺を食べる?

ブラックデーがどういうふうに始まったのかは定かではないが、韓国紙『アジア経済』によると1990年代にもブラックデーは存在していた。

少なくとも約30年の歴史があるわけだ。当時の記事には、「恋人のいない若い男女が黒い服を着て、ジャージャー麺やブラックコーヒーなどブラックフードを口にしながらお互いを慰める日」と紹介されている。これを見る限り、ブラックデーの伝統は今のところ守られていると言えるだろう。

この韓国特有の文化であるブラックデーについては、海外メディアでも何度か取り上げている。『フォーブス』は2008年に、「韓国の若者たちが早い結婚などの古い慣習を破り始めている証拠だ」などと分析していた。

最近は多くの企業が、ブラックデーをマーケティングに利用するようにもなった。韓国でも企業のマーケティング担当者があの手この手で商品PRを企画したり、マーケティング担当者たちが「広告モデルに起用したい美女ランキング」などを実施しているが、ブラックデーを活用したマーケティングも活発である。

(参考記事:【画像】韓国企業マーケティング担当者が選ぶ“広告モデルにしたい美女”TOP5

今年も結婚相談所や映画館、キムパプ(海苔巻き)チェーン店など、さまざまな企業がブラックデー記念イベントを実施するのだが、とあるコスメブランドは、「私は独り身です」と売り場で叫んだ客に限って一部商品を20%オフにするという奇抜なイベントも行うという。独り身であることがメリットにもなる時代になったわけだ。

(参考記事:渦中の朴大統領もそうだった!! 韓国で大量増殖している“お一人様族”とは?

実は韓国では、毎月14日がかならず何かの記念日となっている。5月は「ローズデー」(Rose Day)、6月「キスデー」(Kiss Day)、7月「シルバーデー」(Silver Day)、8月「グリーンデー」(Green Day)、9月は「フォトデー」(Photo Day)、10月「ワインデー」(Wine Day)、11月「ムービーデー」(Movie Day)、12月「マネーデー」(Money Day)、1月が「ダイヤリーデー」(Diary Day)といった具合だ。

ただ、バレンタインデーやホワイトデー、そしてブラックデーならともかく、ほかの記念日が一般的に知られているかというと、そうでもない。むしろ「多すぎる記念日に嫌気がさす」という声があるくらいだ。

それでなくとも、現代の韓国人は「ペペロデー」(11月11日)や「チョコパイデー」(10月10日)など、企業のマーケティング戦略が見え隠れする記念日にも振り回されている。

日常にイベントやサプライズは必要だが、適切なバランスを保つことも忘れてはならないだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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