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有働アナの現場主義や「アイドルからの転身」は……韓国も似て異なる女子アナ事情

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
キム・ジュハ(写真提供=SPORTS KOREA)

「女子アナウンサー」が何かとニュースになる今日この頃だ。NHKの“顔”だった有働由美子アナウンサーが3月31日をもってNHKを退局していたことが明らかになったり、乃木坂46のメンバーだった市來玲奈がアナウンサーとして日本テレビに入社したりと、女子アナ関連のニュースが昨日はヤフトピを賑わせていた。

それだけ“女子アナ”という言葉は引きが強く、関心を集めるのだろうが、それは韓国も同じだ。

韓国で女子アナといえば「品行方正のキャリアウーマン」とイメージが強く、かつてはセミショートの髪型でニュースや教養番組の進行を務めるのが主な仕事だったが、近年は日本同様にバラエティ番組やスポーツ番組を彩る女子アナが増え、個人ブログを開設する女子アナや、マニアが集まるファンサイトも増えている。韓国でも女子アナのタレント化が進んでいるのだ。

もっとも、ガールズグループDal★Shabet(ダルシャーベット)のメンバーだったビキが、アイドル初のお天気キャスターになったことはあるが(ビキはその後、成人映画にも主演している)、アイドルから女子アナになるケースは聞いたことがない。

ただ、有働アナのような決断した人気女子アナはいる。有働アナは、NHKに残っていれば管理職かエグゼクティブ・アナウンサーに昇進することが濃厚とされていたが、ジャーナリストとして現場取材を続けたいという思いからNHK退局を決心したというが、韓国でもキム・ジュハが有働アナのような決断を過去にしている。

韓国の民放テレビ局MBCの看板ニュース番組で女性初の単独ニュースアンカーに選ばれ、5年連続して「女子大生が憧れる女性ナンバーワン」に選ばれる人気者になったが、その人気に浮かれることなく、自ら志願して報道記者に転身した。

(参考記事:ドロ沼離婚訴訟も乗り越えた、韓国の“美しすぎるニュースキャスター”キム・ジュハを知っているか)

現在はMBN(毎日放送)に移籍し、アンカーウーマンに復帰しているが、そのバイタリティと文在寅大統領にも鋭く切り込むジャーナリスト魂は高く評価されている。今年で45歳になるが、彼女のように今も第一線で活躍するのは珍しい。

というのも、韓国で女性ニュースキャスターの寿命はさほど長くはない。それは2月から3月にかけて韓国で放映されたドラマ『ミスティー』でも描かれている。

人気女優キム・ナムジュが演じたヒロインのコ・ヘランは、劇中で「今年のメディア人賞」を5年連続で受賞するアンカーウーマンだったが、視聴率を取りたい首脳部は彼女を下して若手の女性アナウンサーを起用しようとする。

経験や年齢の多さが求められる男性アナウンサーに対し、女性アナウンサーにはそれが適用されないということを暗に示した場面だ。

ただ、韓国の女性アナウンサーたちの競争は熾烈でもある。

“韓国でもっとも美しい女子アナ“とされるアン・ナギョンは、以前行ったインタビューで「2000倍の倍率をクリアしてアナウンサーになった」と話していたが、韓国で女性アナウンサーになるためには極度に“狭き門”を通過しなければならないのである。

そのため、晴れてテレビ局の女子アナウンサーになれた者たちがフリー宣言する例も、日本よりも少ない。民放テレビ局SBSの人気女性アナウンサーで「若手ナンバーワン」とも称されるチャン・イェウォンなどはネット投票で「フリー転向しても将来が期待できる女性アナウンサー」の1位に輝くほどの人気だが、現在もSBSに籍を置いている。

(参考記事:“韓国の笹川友里”?190倍の競争率を勝ち抜いた人気アナ、チャン・イェウォン)

もっとも、近年は韓国でも、フリー宣言して成功している女子アナも登場している。チョン・イニョンが代表的なケースだろう。

もともとは韓国の国営放送局KBSのスポーツチャンネル『KBS Nスポーツ』の局アナだったが、フリー宣言して人気がブレイク。人気の成人男性誌『MAXIM KOREA』でその美脚を惜しげもなく披露するグラビアに挑戦したり、バラエティ番組などにも出演。ドラマにも出演するなど、今ではタレントとして認知されている。

(参考記事:“美女スポーツアナ”チョン・イニョンが語る「韓国女子アナたちのヒミツ」)

「昨今はチャンネルが多様化し、アナウンサーに求められる要素や活用範囲も広がりつつある。これからのアナウンサーは、まずはアナウンサーとして放送キャリアをはじめ、さまざまな番組を経験しながらマルチな才能と専門性を磨き、総合的な放送人としてその領域を広げていくことが求められる」とは、韓国のフリーアナウンサー事情をリサーチした『エムジェイピープル』関係者の言葉だが、日本でも同じようなことが言えるかもしれない。

いずれにしても、日本も韓国も女子アナウンサーに求められるものは多く、人気者になれば引く手あまた。有働アナもフリーの立場になったことで、ほかのテレビ局や芸能プロダクションなどが争奪戦を繰り広げているとも噂されているだけに、これからも女子アナが注目トピックスとして取り上げられることが多くなりそうだ。

国は違えど女性アナウンサーへの憧れと人気は、日本も韓国もあまり大差ないことだけは間違いないだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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