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美女三銃士や人気モデルもボランティアとして奮起。平昌五輪は過去の“汚名”を返上できるか?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
聖火リレーでも多数のボランティアが活躍した(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

開幕が間近に迫った平昌五輪。

開催国・韓国でも五輪ムードが高まっているが、大会の成功に欠かせないのが、会場案内やメディア対応、通訳などを行うボランティアスタッフたちだ。

「美女ボランティア三銃士」も登場

彼らの役割の重要性は、韓国メディアも強調している。

「平昌五輪成功の大きな力となるボランティア」(『ニューシス』)、「ただ立っている人? 平昌成功のカギとなるボランティア」(『ニュース1』)、「平昌五輪の成功のためにボランティアも奮闘する」(『KBSニュース』)と、大会開幕が近づくにつれてボランティア関連の報道も増えている。

先日も一般紙『中央日報』で「平昌の寒さを情熱で溶かします!!“美女ボランティア”三銃士」という特集記事も組まれていたほどだ。

(参考記事:【画報】現地メディア注目!! 平昌の“美女ボランティア三銃士”はどこで会える?)

では、平昌五輪ではどれほどのボランティアが活動するのか。

組織委員会によると、平昌五輪の運営に携わるボランティアは1万8347人。

そのうち1090人が外国人で、年齢層は16~88歳と幅広く、20代以下が83.3%(1万5283人)ともっとも多い。

男女比率では、女性が70.5%(1万2935人)を占めている。

仁川アジア大会での“手抜き対応”

女性の参加意識が高いことがわかるが、ただ、平昌のボランティアスタッフに一抹の不安が残るのも事実だ。

というのも、近年、韓国で開催された国際スポーツイベントでは、スタッフの管理がうまくいかなかったことが多かったと報道されてきたのだ。

例えば、2014年の仁川アジア大会だ。

同大会で韓国は、美女ゴルファーとして人気を集めるパク・キョルがゴルフ女子個人で金メダルを獲得するなどメダルラッシュに沸いたが、成績とは対照的に会場案内を受け持ったボランティアスタッフの手抜き対応が問題となった。

一部のスタッフが、観客の案内を後回しにして携帯電話をいじったり、居眠りをしたりしていたというのだ。

そればかりか同大会では、通訳を担当した一部のボランティアスタッフが大会の途中に仕事を放棄する事態も起きている。一部のスタッフは競技会場でカード賭博を行って物議を醸した。

また、昨年に韓国で開かれたサッカーU-20W杯では、ボランティアスタッフの“ドタキャン”が多発した。その数はボランティアスタッフ全体の13%にも上ったという。

私も当時、現地で同大会を取材したが、会場案内の少なさもさることながら、試合に見入ってしまうあまり、本来の仕事を疎かにしているような一部スタッフたちの姿が気になった。

人気チアドルたちもボランティアを応援

こうしたトラブルは、スタッフの教育不足などが要因だったと指摘されているが、平昌五輪では、そんな過去の教訓を踏まえた上で準備が進められている。

例えば、ボランティアスタッフの選考は、約10カ月を費やして慎重に行った。

2016年の7月から募集を始め、面接や2度の基本教育などを行い、昨年4月にスタッフを決定したのである。人数も、万が一の“ドタキャン”に備えて必要数の117%を用意したという。

スタッフの確定後も配属された分野別に教育が進められている。ちなみに、73%のスタッフが希望の職種に配属されたという。

さらに、スタッフたちの士気を高めるための活動を行なう「パッションクルー(ボランティアスタッフ)広報サポーターズ」に女性タレントで結成された野球チーム「Go~Go’s FrieMily」を任命した。

同チームには韓国人気ナンバーワンのチアリーダーであるパク・キリャンが所属している女性タレントチームである。

パク・キリャンのほかにも、アン・ジヒョン(ネクセンヒーローズ)、チョン・ダヘ(LGツインズ)、キム・ボベ(NCダイノス)など人気チアリーダーが所属しており、まさに韓国を代表する選りすぐりのチアリーダー集団とも言われている。三人は聖火リレーにも参加した。

(参考記事:韓国“3大チアリーダー”の平昌聖火リレーが超絶かわいい!!)

そんな彼女たちがボランティアスタッフ発足式で公演を行うなど精力的に活動しているだけではなく、一風変わった試みとしては、本日1月25日に開催予定の『パッションクルー・アイドル・コンテスト』が挙げられる。

平昌五輪組織委員会によれば、この大会はスタッフのモチベーションアップと五輪ムードの向上が狙いで、参加者は歌やダンスで競い合うという。入賞者には、ボランティアスタッフ解散式で公演を行う権利などが与えられるらしい。

こうした対策も功を奏したのか、現時点では教育やトレーニングを放棄したボランティアスタッフはほとんどいないという。

前出した“美女ボランティア三銃士”も中央日報の取材に対して、「ホームで開かれる五輪に貢献したい」と意気込んでいた。

それだけに、平昌では過去のような醜態をさらさないことを信じたいが、果たしてボランティアスタッフたちはどのような仕事ぶりを見せるだろうか。平昌では、彼らの働きにも注目したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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