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「羽生と似ている」美少年選手チャ・ジュンファンに韓国フィギュア・ファンが期待する理由

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
チャ・ジュンファン(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

開幕まで1か月を切り、平昌五輪に挑む各種目の日本代表が次々と発表になる今日この頃だ。

韓国でも先週、ウインタースポーツの花形競技であるフィギュアスケート韓国代表が決まった。韓国フィギュアは男子シングル1枠、女子シングル2枠の出場権を持つが、男子はチャ・ジュンファン、女子はチェ・ダビンとキム・ハヌルが平昌五輪に出場することになった。

日本と同様に韓国でも関心高いフィギュア

韓国のフィギュア代表を決める選考過程は独特で、国内選手権などでの一発勝負ではなく、昨年7月から3度にわたって行われた代表選抜戦の合計点によって決められた。

約半年にわたる選考レースを勝ち抜いた選手たちには、韓国メディアも注目している。

「チャ・ジュンファン、男子フィギュア16年ぶりの出場…女子はチェ・ダビンとキム・ハヌルが平昌行き」(『ニュースピム』)、「フィギュアのチャ・ジュンファン、劇的な演技で“平昌チケット”獲得」(『KBSニュース』)、「“フィギュアの妖精”チェ・ダビン、選抜戦1位で平昌へ」(『中央日報』)といった具合だ。

昨年12月に日本代表が決定したときも韓国では様々な報道がされていたが、自国の代表決定に関する報道の多さと熱量からも、フィギュアに対する注目度の高さがうかがえる。

(参考記事:宇野よりも羽生、宮原は…。フィギュア日本代表決定を平昌開催国・韓国はどう見ているのか

ブライアン・オーサーも絶賛した可能性

それだけに気になるのは、韓国代表選手の実力だろう。

男子シングルのチャ・ジュンファンは、今季シニアデビューしたばかりの16歳。まだシニアでの実績こそないが、昨季のジュニアグランプリ(GP)ファイナルで銅メダルを獲得した新星だ。

代表選抜戦では、初戦こそ3位と伸び悩んだが、第2戦では羽生結弦がわざわざ韓国語で挨拶したことが話題になったキム・ジンソを抜いて2位に。最終戦では、首位を独走していたイ・ジュンヒョンに逆転勝利を収め、代表入りを決めている。

韓国では期待を込めて“男子版キム・ヨナ”とも呼ばれているが、チャ・ジュンファンは実力だけでなく、話題性と将来性も抜群だ。

何しろ、彼を指導しているのはブライアン・オーサー氏。かつてキム・ヨナを指導し、羽生結弦を教えるカナダ人コーチのもとで実力を磨いているわけだ。

オーサーも、チャ・ジュンファンの才能を高く評価している。「羽生と似ている」と語ったこともあった。

(参考記事:羽生結弦の師ブライアン・オーサーがチャ・ジュンファンを「羽生と似ている」と絶賛する理由

端正なルックスも、チャ・ジュンファンが注目される理由の一つだ。

韓国メディア『イルガンスポーツ』などは、チャ・ジュンファンと羽生、ハビエル・フェルナンデスの3人を「フィギュア男子シングル、平昌を熱くするミソニョン三銃士が来る」と取り上げているほどである。

羽生結弦や宇野昌磨に迫れるか

“ミソニョン”とは、直訳すれば“美少年”という意味になる。

ちなみに、もともと羽生は韓国で、“ウセンキョルヒョン””との別名があるほど知名度が高いが、その整ったマスクも関心を集めている一因ということがこの報道から伺えるだろう。

ただ、チャ・ジュンファンが平昌でメダルを獲得する可能性は薄いと言わざるを得ない。

第3次代表選抜戦では、自己最高得点を更新する252.65点を記録して話題を呼んだが、羽生や宇野などトップ選手たちは幾度も300点を超えていることを考えると、開幕まで1カ月を切った平昌で上位争いに食い込むのは難しいだろう。

オーサーコーチも、チャ・ジュンファンが初の五輪でいきなり花開くとは考えていないらしく、韓国メディアにこんなことを言っている。

「現実的に言えば、10位から12位までには入れるでしょう。ホームの利点が生かされれば、もう少し上も狙えるかもしれない。それでも彼にとってこの五輪は、良い経験になるはずです」

韓国ファンの間では「羽生は無理でも宇野昌磨とは互角に張り合えるではないか」との期待よりも対抗心のほうが強い展望もあるが、果たして…。

(参考記事:韓国ファンが宇野昌磨にこんなにも厳しい理由)

いずれにしても韓国男子フィギュアの希望であるチャ・ジュンファンの名は覚えておいたほうがいいかもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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