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宇野よりも羽生。宮原は……。フィギュア日本代表決定を平昌開催国・韓国はどう見ているのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
平昌五輪への出場が決まった4人(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

来年2月の平昌五輪に出場するフィギュアスケートの日本代表が決まった。男子シングルは羽生結弦、宇野昌磨、田中刑事。女子シングルは宮原知子、坂本花織となったが、五輪開催地の韓国でも、日本代表が決定したことは話題になっている。

羽生をメインに取り上げた韓国メディア

韓国メディアは、「日本フィギュア、男子・羽生、女子・宮原が平昌に向かう」(『OSEN』)、「日本フィギュアの第一人者羽生・宮原、平昌冬季五輪代表に確定」(『オーマイニュース』)、「“フィギュア・キング”羽生、平昌に来る…足首負傷も日本代表に合流」(『聯合ニュース』)などと報じている。

特にスポットライトが当たっているのは羽生結弦だ。『中央日報』などは、「平昌興行の不安要素が消えた、フィギュア・スター羽生の出場が決定」とヘッドラインを置き、「羽生の出場は平昌五輪興行の好材料だ」と報道。

そもそも羽生は、韓国でも知名度が高い。ネット上には私設のファンサイトも存在しており、“ウセンキョルヒョン”という別名まで付けられているほどその名は知られている。羽生の代表入りがメディアで大きく取り上げられていることには、韓国国内での人気も影響しているのかもしれない。

(参考記事:韓国でも有名な羽生結弦、別名「ウセンキョルヒョン」とはどんな意味?)

ただ、そんな羽生と比べると、全日本選手権2連覇を果たした宇野昌磨はあまり注目されていないように見える。

関連記事の中で、ヘッドラインに「宇野」の名を置いたメディアは見られず、田中刑事とともに代表メンバーとして名前を掲載するだけの記事も少なくない。

中には宇野を紹介する記事もあったが、「宇野は去る4月に世界選手権で銀メダルを獲得した主人公だ。羽生の後を追う日本男子フィギュアの看板として注目されている」(『edaily』)などと報じる程度にとどまっている。

そこには、過去に韓国で、2015年にソウルで開催された四大陸選手権での宇野のインタビュー動画が炎上したことも関係しているのかもしれないが、いまや金メダル候補ともいわれる若きスケーターに、韓国は五輪開催国としてもう少し関心を持った方がいいのではないかと心配にもなる。

(参考記事:韓国ファンが宇野昌磨にこんなにも厳しい理由

宮原は「金メダル期待の星」。坂本や落選選手は?

一方、女子シングルの代表では、宮原知子が韓国メディアの視線を集めている。

「日本フィギュアの“ミス・パーフェクト”平昌行きで熱い涙」(『ソウル新聞』)、「“平昌行き”日本フィギュアの看板・宮原“五輪出場にとても興奮”」(『SPOTVNEWS』)といった具合で、「(宮原は)浅田真央の全盛期以降、日本の女子シングルの看板として活躍している」(『Newsen』)など、宮原を日本のエースとして伝えるメディアも少なくない。

中には、「“フィギュア金メダル期待の星”ザギトワ・宮原、平昌五輪出場予約」(『聯合ニュース』)のように、宮原を女子シングルの有力な金メダル候補に挙げる記事もあった。

しかも、こうしたメディアのほとんどは、宮原が1月に判明した疲労骨折から復活を遂げたことにも触れている。『アジアトゥデイ』は、宮原のケガについて振り返りながら、「厳しいリハビリ生活を消化し、表彰台の頂点に立つ奇跡を成し遂げた」と報じているほどだ。

韓国にも宮原と境遇が重なるといわれる女子選手パク・ソヨンがいるだけに、宮原の復活劇には特別に関心を払っているのかもしれない。

ただ、宮原とともに平昌行きを決めた坂本花織については、代表入りしたという事実報道がほとんどだった。

ちなみに韓国では最近、本田真凜の知名度が上がっていたが、平昌行きを逃したことでトーンダウン。彼女の落選を話題にする韓国メディアはほとんどなかった。

(参考記事:「親韓派」「浅田真央を超えた」韓国メディアが本田真凜をべた褒めする理由

いずれにしても、日本代表選手に韓国が注目していることは間違いない。そこには、韓国国内の代表選抜戦が佳境を迎えていることも影響しているだろう。

韓国のフィギュア代表は、1~3次選抜戦の結果により決まる。これまで2次選抜戦を終え、来年1月5~7日に3次選抜戦が行われるのだ。

まして韓国は、キム・ヨナの引退以降、スター選手不在で、“フィギュア不毛の地”と呼ばれて久しいだけに、日本選手に目を向けたくなるのも無理はない。五輪開催国として、羽生をはじめファンの多い日本選手が気になるのも当然だ。

平昌五輪本番に向け、フィギュア日本代表選手には、韓国からますます熱い視線が注がれていくだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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