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「ハリル・ジャパンに圧勝しても喜べない…」サッカー韓国代表が抱える“山積みの課題”

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
E-1選手権で優勝した韓国の面々(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

12月16日まで開催されたEAFF E-1選手権。韓国代表は、最終戦で日本に4-1で大勝し、大会2連覇を果たした。

ロシアW杯アジア最終予選から低迷が続き、メディアとファンからの厳しい視線にさらされていたが、長く暗いトンネルをようやく脱けたと言えるだろう。

ロシアW杯アジア最終予選後に起きた“ヒディンク再登板騒動”も完全に払拭された。

最終戦の日韓戦直後、韓国でもっとも有名なフリーのサッカージャーナリストとして知られるソ・ホジョン記者も言っていた。

「2017年のラストマッチとなった韓日戦で圧倒的な逆転勝利を収め、国民が抱いていた不信感も同時に逆転させました。シン・テヨン監督は、自身の計画通りにロシアW杯まで突き進むことができる土台を作れたのではないでしょうか」

(参考記事:英雄パク・チソンも気にかける「韓国サッカーが今、直面している問題」とは?

もっとも大きな収穫は「プランB」

ただ、今大会では具体的な収穫もあった。ソ・ホジョン記者はこう話す。

「日本と同様に、ロシアW杯に向けて新しい選手をテストすることもこの大会の重要な目的でしたが、その点でも収穫が多かったと思います」

特に目立っていたのは、キム・シヌクだという。日本戦で2得点を挙げ、大会得点王にも輝いた197.5cmの巨漢FWだ。

『サッカーダイジェストWEB』で「人気急上昇中のビーナス」と紹介された美女サッカー選手イ・ミナとともに、キム・シヌクは今大会で日本のサッカーファンに強い印象を残した。

(参考記事:【画像あり】なでしこジャパンと対戦した“韓国女子サッカーのアイドル”イ・ミナが超絶かわいい!!

「これまで当確線上にあったキム・シヌクは、今大会でその実力を証明しました。これまではソン・フンミン、ファン・ヒチャン、イ・グノのロシア行きが有力でしたが、キム・シヌクは3人とはまったく異なるタイプのFWです。彼の復活によって、シン・テヨン監督は、攻撃の引き出しを増やすことができました」

振り返ればシン・テヨン監督は、11月21日に行ったメンバー発表記者会見で、「(11月のAマッチで)ソン・フンミンの起用法はわかったと思う。プランAだけでなく、プランBも探さなくてはならない」と語っていただけに、攻撃のバリエーションが増えたことは大きな成果だといえるだろう。

もっとも、今大会で頭角を現したのはキム・シヌクだけではない。ソ・ホジョン記者はこう続ける。

「イ・チャンミン、チン・ソンウク、ユン・ヨンソンなど新戦力の動きも良かったし、11月のAマッチで活躍したクォン・ギョンウォン、チョ・ヒョヌ、コ・ヨハン、キム・ミヌのプレーも目を見張るものがありました。特に北朝鮮戦と日本戦に先発出場したGKのチョ・ヒョヌは、守護神の座を争うキム・スンギュとキム・ジンヒョンに良い刺激を与えたと思います。

日本戦で直接FKを決めたチョン・ウヨンも評価が上がりました。献身的なプレーが持ち味の彼は、もともとシン・テヨン監督と代表スタッフからの信頼は厚かったものの、ファンからはなかなか認めてもらえなかった。ファンに不信感を持たれることは選手にとって大きなストレスになります。今大会の活躍が評価されたことで、そうした不安要素も取り除かれました」

「ロシアでは勝点3どころか1も難しい」

ロシアW杯に向けた貴重な実践機会で、多くの選手が存在感を示した韓国代表。

だが、その一方で課題も見えたという。

「正直に言って、課題は山積みです。今大会で優勝したとはいえ、ロシアW杯で戦う相手はもっとレベルが高い。攻撃と守備、組織力などあらゆる面でレベルアップが必要でしょう」

韓国は、ロシアW杯でグループFに入っている。対戦するのは、ドイツ、メキシコ、スウェーデン。“死の組”とされる組だ。

組み分け抽選直後には韓国記者たちも「勝点3どころか1も難しい」と話していたが、そんな現実を認識しているからこそ、ソ・ホジョン記者もチームの現状に満足していないのだろう。

(参考記事:勝点3どころか1も難しい…韓国の“死の組”入りを現地記者たちはどう受け止めているのか

とりわけ不安なのは、戦術の使い分けと守備だという。

「もともとシン・テヨン監督は戦術を頻繁に変えることで知られている監督ですが、この大会も、3戦すべてフォーメーションを変えていました。おそらくW杯でも同じような戦い方をするでしょう。過去にはその采配が裏目に出たこともありましたが、どの戦術を使っても問題なく戦えるように準備を進めなければいけません。

個人的には守備が一番不安です。中国戦と日本戦では、試合開始早々に自分たちのミスから失点を喫していました。相手に崩されたわけでもないのに簡単に失点してしまったことは反省しなければなりません」

収穫も得たが、課題も見えたE-1選手権。今大会の結果は喜ぶべきものだが、それと同時に、チームの現状をしっかりと受け止めることも大切だろう。

日韓戦後にシン・テヨン監督が「W杯が本当の舞台です」と語ったように、E-1選手権はロシアに向けた過程に過ぎないのである。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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