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人手不足の日本と、就職難の韓国。互いに利益得られるウィンウィン関係になれるか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

人手不足の日本とは対照的に、若者の就職難が問題視されている韓国。現在、韓国は解決の糸口を探るべく、日本にも働きかけていくことを決めたようだ。

韓国外交部の趙顕(チョ・ヒョン)第2次官が11月12日から訪日しており、「就職難に苦しむ韓国の若者の雇用問題を協議する」(『聨合ニュース』)という。

『聨合ニュース』によれば、「趙氏は14日まで滞在し、杉山晋輔外務事務次官や日本財界の関係者らと会談。韓国の若者と日本企業をマッチングするなどして両国が共に利益を得る“ウィンウィン関係”になるための方策を協議する」らしい。

「日韓関係は今後良くなる」…意識のズレ

人手不足の日本と、就職難の韓国。たしかにお互いの需要と供給がマッチすれば、ウィンウィンになるかもしれない。

ただ、日韓関係の「今後」について日本と韓国で大きな意識のズレがあるだけに、一筋縄ではいかないのでは…とも思ってしまうのは考え過ぎかもしれないが、より切実なのは韓国のほうであることは間違いないだろう。

(参考記事:日本5%vs韓国56%という意識のズレ…なぜ韓国人は「日韓関係は今後良くなる」と考えるのか

就職難と過酷な競争に辟易

というのも、韓国の青年雇用率は41.5%(2015年)に過ぎず、学校や職場などに所属しない“ニート”が18.0%(OECDの平均は15.8%)もいるからだ。

韓国の中小企業は元気がなく、若者たちは公務員になるか、サムスンのような大企業に入るしか選択肢がないと指摘されて久しい。それだけに競争率は非常に高く、入社後にもし烈な競争が待っているという。

(参考記事:華やかな業績と名声の陰で…韓国サムスン“職業病”の死者118人に

一方で、青年貧困率(9.0%)だけはOECD平均(13.9%)よりも低いのが韓国でもある。約50%という数字を叩き出した韓国の老人貧困率と比べると、圧倒的に青年貧困率が低いのだ。

貧困率の数字は低いが実態は…

つまり、数字だけで判断すれば、韓国の青年たちは、仕事は少ないが貧困に苦しんでいるわけではないということになる。韓国の若者たちが自国を“ヘル朝鮮”と揶揄する理由を踏まえると、青年貧困率の低さに拍子抜けするかもしれないが、9.0%という数字を鵜呑みにはできない。

というのも、韓国保健社会研究院によれば、現行の貧困率の算出方式によって、青年世代の実相がまともに反映されていないだけだという。貧困率は同居世帯員の所得を反映して計算するだけに、親と暮らす割合が高い韓国青年たちの貧困率は必然的に低く表れているということだけなのだ。

ちなみに、韓国青年の親との同居率は84.6%らしい。OECD加盟国のなかでもっとも高い数字だ。つまるところ表面化していないだけで、韓国の青年たちも貧困率は高いと考えるのが妥当ということだ。

最終的には“日本頼り”!?

そしてこの問題を解決するために、現在は“就職売り手市場”の日本に目が向いているということになるわけだが、一部の日本の人々からすると「虫が良すぎる」という意見も出ていると聞く。

韓国は中国の“禁韓令”によって訪韓外国人客が激減したときも、「ニーハオの代わりにコンニチハ」と日本を頼りにしていたが、それと同じ文脈に映るのかもしれない。

(参考記事:困ったときは日本頼り!? 禁韓令に苦しむ韓国の“イルボン・マーケティング”

韓国が日本に対してときたま示してきた理解不能ないくつかの対応から、不信感もあるだろう。

ただ、感情的な部分ではともかく、両国それぞれが抱える問題が協業することで解決するなら、それも悪くはないだろう。人手不足の日本と、就職難の韓国。両国がウィンウィン関係で問題解決をはかれるのか、注目したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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