Yahoo!ニュース

“犬食文化”が残る一方で、熱心な愛犬家も…韓国の両極端なドッグ状況

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

韓国で、2種類の犬が人気を博しているという。

ひとつは、韓国・済州島の固有種である「済州犬」だ。昨日7月11日に済州島・畜産振興院で開かれた分譲の抽選イベントには、数百人の申請者が殺到したという。今年4~5月に生まれた済州犬の子犬20匹を巡って、551人が手を挙げたそうだ。

その倍率が28倍というのだから、人気の高さがわかるだろう。1匹当たりの値段は5万ウォン(約5000円)。済州犬は性格は温厚だが、狩りの才能は高いといわれている。

日本の「柴犬」も大人気

もうひとつは、日本原産の「柴犬」。柴犬の人気は世界的なものだが、韓国での最近のブームは特にすさまじく、日本の柴犬ブリーダーも「とても驚いた」と韓国メディアに話しているほど。『ソウル新聞』は昨年の「人気アニマル・トップ8」で柴犬を選出していた。

こういった特定の犬種が人気を集めることを見てもわかるように、韓国には愛犬家が少なくない。

なかには月4~6万円もする“ワンちゃん幼稚園”に通わせている飼い主もいるというのだから、驚いてしまうほどだ。

(参考記事:愛犬家たちの行きすぎた愛情!? 韓国で人気の“ワンちゃん幼稚園”の一日とは

国際的に非難される韓国の犬食文化

ただ一方で、韓国には犬食文化も残っている。

ちょうど本日7月12日は今年の「初伏(チョボク)」にあたる日で、この日には夏の暑さに負けないように栄養価の高い食用の犬肉を食べる習慣が古くからあった。

最近は「初伏」に食用の犬肉を食べる習慣がかなりなくなったが、毎年この時期になると韓国の食文化に対する国際的な非難が集まる。

(参考記事:イギリス人9万人が請願サイトに署名!! 非難を浴び続ける韓国の“犬食文化”とその実態

韓国メディアも「明日は初伏、繰り返される犬肉騒動」(『時事ジャーナル』)、「“もう食べるのをやめなさい”…初伏を前に犬肉が議論」(『MBN』)などと、センシティブになっている。

迷子の犬を近隣住人が食べる事件も…

前出の「済州犬が人気」という記事のコメント欄を見ると、「最後まで責任取れる人だけが飼ってください」「純粋に飼いたいという人たちだろうか…」といったコメントも目立つ。

ペットを飼う人が増加するなかで、捨て犬や虐待に関する指摘も強まっているわけだ。

たしかに近年も呆れてしまうような事件が起こっていた。迷子になった愛犬が近隣住人に食べられてしまったという事件で、韓国のネット界隈が大炎上していたことが、記憶に新しい。

(参考記事:「迷子になった愛犬が食べられた…」飼い主を横目に近隣住人が“犬食パーティー”の恐怖

振り返れば、極端な事例は他にもあり、仁川空港で愛犬が射殺されてしまう被害に遭った事件もあった。貨物室に預けられた犬がケージを抜け出したことが原因だったが、「ひどすぎる」という声が殺到した。

いずれにしても、済州犬や柴犬が人気を博していることからもわかるように、大多数の韓国人は犬好きといっていいだろう。その一方で、少なくなっているとはいえいまだに犬食文化も共存しているところは、なんとも韓国らしい部分かもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事