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監督更迭もロシア行き失敗も現実味が…サッカー韓国代表に今、何が起こっているのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
更迭が濃厚なシュティーリケ監督(写真:ロイター/アフロ)

ロシアW杯・アジア最終予選グループAの韓国対カタールが行われ、韓国が2-3で敗れた。

韓国はグループ順位こそ2位を維持しているものの、W杯出場が危機的状況となっている。現在2位の韓国は勝ち点13で、3位ウズベキスタン(勝ち点12)とは差が1点しかない(1位イランはW杯出場が確定している)。

韓国に残された試合は、8月31日のイラン、9月5日のウズベキスタンの2戦。いずれも絶対に落とせない状況に追い込まれており、最悪の結果になればグループ4位という結末もあり得る状況だ。

韓国メディアも意気消沈!?

「W杯に出場できない」という悪夢が現実味を帯びることとなった今回の敗戦の衝撃はすさまじく、さすがの韓国メディアも落胆の色を隠せない。

「“ドーハの惨事”韓国、カタールに2-3の衝撃負け…W杯本選出場が大危機」(『スターニュース』)、「“張り子の虎”韓国、カタールに無視された」(『OSEN』)、「もはや誰も韓国サッカーを恐れない」(『news1』)など、批判的な見出しがズラリ。

サッカー専門誌『FourFourTwo』の「無能力と負担感が重なり最悪を生んだ」という記事は、「最悪だった。どんな言葉が必要か」という嘆きから始まっている。

専門誌らしい解説もあるが、「今回のW杯アジア最終予選の期間、ずっとある疑問がつきまとっている。“ワールドカップに出なくてもいいと考えているのか”という印象だ。口では戦意と責任感を約束するが、ふたを開けるたびにボロが出る」という厳しい指摘には、共感せざるを得ない。

「“4つが足りない”シュティーリケ号、カタールに敗れた理由」と見出しを打った『THE FACT』の記事も、容赦がない。

敗因として「守備の呼吸が合っていない」「攻守の連結に負担が大きい」「キラー(ストライカー)不足」「用兵術の不足」などを挙げたが、「シュティーリケ監督が約束した“残り試合の全勝”は最初の一試合で水泡に帰した。何よりも衝撃的なのは、いかにも負けそうで負けたという点だ」などと報じているほどだ。

窮余の策も通じず、33年ぶりの“敗将”に

当然のことだが、批判の矛先はシュティーリケ監督に集中している。「メンバー発表から予見された結果、シュティーリケの遅すぎる変化」(『FOOTBALLIST』)、「“敗北を自ら招く”生半可だったシュティーリケ戦術の矛盾」(『dailian』)、「毒になったシュティーリケ留任、トラウマが作った無意味な執権」(『Newsen』)などなど。

経験豊富なヘッドコーチを入閣するなど“窮余の策”を試みたが、まったく効果はなかった結果だ。

(参考記事:「四強神話を食い潰す」“窮余の策”に頼るしかない韓国サッカーの危機

『聨合ニュース』が「サッカー協会、15日に技術委開催…シュティーリケ監督を更迭する模様」と報じている通り、シュティーリケ監督の更迭は免れないだろう。これまでも更迭の話は何度も持ち上がったが、なにせ韓国がカタールに敗れたのは33年ぶりのことだ。

監督ではなく「問題は韓国サッカー」

ただ一方で、「シュティーリケは“辞めれば済む”、より大きな問題は韓国サッカー」(『KNSニュース通信』)という指摘も。

同記事では「失敗した監督は辞めれば済む。その失敗を栄養分として、より良い明日に向けた教訓にすればいい。しかし、その期待がまったく持てない」と強調している。

「大韓サッカー協会はすでに監督交代のゴールデンタイムを逃している。技術委員会は先の中国戦で敗れた後、シュティーリケ監督の進退を話し合ったが、結果は留任。適当な代替者がいないという理由だった。監督更迭よりもさらに大きな問題がある」

(参考記事:批判と更迭の危機に立つシュティーリケ韓国、英雄ヒディンクと何が違うのか

「スポーツに政治を持ち込むな」と八つ当たり

厳しい今の現実を受け止められないからだろうか。

「カタール“国王Tシャツ”セレモニー、FIFA懲戒の危機」(『スポーツ朝鮮』)という記事には、韓国ネット民たちの「永久追放しろ」「スポーツに政治を持ち込むな」といったコメントが書き込まれている。こんなところにも悲哀を感じざるを得ない。

というのも韓国サッカー界はこれまでたびたび政治を持ち込んできた過去があり、つい先日もACLで見苦しい「乱闘騒ぎ」を起こしたばかりだからだ。

(参考記事:「乱闘騒ぎ」に「全滅」。なぜKリーグは見苦しく恥ずかしい「醜態」ばかりを晒すのか

いずれにしても本当の崖っぷちに追い込まれている韓国。ロシアW杯に出場するために残り2戦は絶対に負けられないが、はたして。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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