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久保建英も日本も「競争相手じゃない!?」韓国の“バルサ・デュオ”、真価問われる一戦へ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
5月30日付けの韓国スポーツ新聞(著者撮影)

韓国に来ている。5月20日から行われているFIFA U-20ワールドカップを取材するためだが、大会への関心が日に日に高まっている印象だ。今日のスポーツ新聞の各誌一面もU-20ワールドカップで固められた。韓国でサッカーがスポーツ紙の一面を独占するのは、久ぶりのことではないだろうか。

関心を集めるのは理由がある。日本では飛び級でU-20日本代表に選出された久保建英に関心が集まっているが、韓国でも大きな話題を集めている選手たちがいるのだ。

韓国を沸かすふたりの“バルサ育ち”

ペク・スンホとイ・スンウだ。久保と同じくFCバルセロナの下部組織育ちで、ペク・スンホはバルサB、イ・スンウはフベニールAに現在も属していることから、韓国では“バルサ・デュオ”と言われている。

(参考記事:韓国のイ・スンウとペク・スンホはなぜ、バルサの一員になれたのか)

その“バルサ・デュオ”がU-20ワールドカップでも期待以上の大活躍を見せている。

ギニア、アルゼンチン、イングランドと同じグループAに属する韓国は、初戦となったU-20ギニア代表戦でイ・スンウが先制ゴールで口火を切って、最後はペク・スンホがダメ押しの3点目を決めて3-0の勝利を飾ると、5月23日に行われたU-20アルゼンチン代表との一戦でも、ふたりが爆発した。

前半18分にイ・スンウがセンターライン付近からのドリブル突破から相手DFを振り切って先制点を決めると、42分にはペク・スンホがPKを冷静に決めて、アルゼンチン相手に2-1の勝利を飾った。

あのディエゴ・マラドーナがドロワーを務めた組み分け抽選直後は 「開催国のアドバンテージがない厳しい組」とも言われていたが、早々と決勝トーナメント進出を決めたのだ。ペク・スンホのパフォーマンスなどは世界各国でも話題になり、それが韓国でも大きく取り上げられている。

(参考記事:「マラドーナをディスった?」韓国の“ネクスト・シャビ”ペク・スンホはどんな人物なのか)

イ・スンウとダブる、かつての天才児にしてビッグマウスたち

このペク・スンホ以上に脚光を浴びているのが、イ・スンウでもある。そのプレーもさることながら、ヘアイタイルや言動まで何かと話題になっては記事になる。今や韓国サッカー界のニュースメーカーに躍り出たとも言えるだろう。

切れ味鋭いプレースタイル同様に、言動にもためらいや遠慮がないまだ19歳の彼を見て思い出すのは、かつて韓国を沸かせたふたりの“天才”でもある。

1997年に若干18歳で韓国代表入りを果たし、“アンファンテリブル(フランス語で「恐るべき子供」という意味らしい)”と呼ばれたコ・ジョンスと、2000年に同じく18歳で韓国代表入りして“ミレニアムスター”と呼ばれたイ・チョンスだ。

ふたりはともにJリーグでもプレーしているので、その名を記憶しているファンも多いだろう。筆者も彼らを日本の多くの媒体で紹介する機会を得たが、ビッグマウスで自由奔放な彼らは強烈な個性の持ち主だった。

と同時に、その自由奔放さゆえに、ふたりとも“韓国サッカー界の風雲児”とも言われた。ふたりともワールドカップに出場したが、その一方でトラブルも多く、10代の頃に期待された以上のキャリアを積んでいったかといえば、決してそうではなかった。

そんなふたりの“若かりし頃”とどこか重なるところもあるイ・スンウだが、意外と協調性もあり、チームへの犠牲精神はもちろん、“孝子精神”の持ち主であるという。

(参考記事:生意気?礼儀知らず?自分勝手? “韓国のメッシ”イ・スンウの意外な素顔)

それがまた人気が高まる要因にもなっているようだが、その真価が問われる一戦になりそうなのが本日5月30日に行われる、ポルトガルとの決勝トーナメント1回戦だ。

「久保も日本もライバルじゃない」に込められた真意は?

U-20代表レベルにおいて、韓国はポルトガルと過去7度対戦しているが、通算成績は0勝4敗3分けと1度も勝ったことがない。果たして韓国は開催国としてのアドバンテージを追い風に、難敵を打ち破ることかできるだろうか。その期待を一身に背負うのが、ペク・スンホであり、イ・スンウであることは間違いないだろう。

ちなみにイ・スンウは、日本の久保建英についても言及している。

曰く、「久保がバルサにいるとき、彼はまだとても若かった。一緒にプレーしたことがないので、(自分と)比較できる位置ではない。久保は頑張っているけど、僕よりもイ・ガンインの競争相手という表現のほうが合っているのではないですか」と。

韓国メディアでも久保への関心が高く、同じバルサ下部組織出身ということで比較されることが多いが、イ・スンウからすれば、「世代が違う」といったところだろうか。

(参考記事:「神童」「列島が興奮」「日本のメッシだ」…韓国メディアから見た天才・久保建英の長所とスゴさ)

イ・スンウは大会前にU-20日本代表についても言及しており、「日本も競争相手と考えたことがない」と語っている。まるで「日本はライバルじゃない」と一刀両断しているような印象を与えてしまっている感もあるが、あくまでも自分たちの対戦相手に集中したいという思いから語った言葉なのだろう。

いずれにしても日本と韓国を盛り上げるバルサ育ちの選手たち。日本も本日、ベネズエラとの決勝トーナメント1回戦を戦うが、日韓ともに勝ち進むことを期待したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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