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ノーベル賞を渇望する韓国にまさかの“次の一手”…実現する可能性はどれくらい?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

まだ毎年のシーズンではないが、韓国で「ノーベル賞」に関する注目が局所的に高まっている。なんでも、朴槿恵前大統領を罷免に追い込んだ「ろうそく集会」をノーベル平和賞にしようと動いているというのだ。

とある韓国メディアは、その意義を「非暴力で大統領を弾劾にしたことは世界に類例がないだけに、韓国の民主主義と市民の成熟した意識を世界に知らしめ、世界民主主義の模範例とするためだ」と論じている。

先頭を走っているのはソウル市だ。パク・ウォンスン市長は「ろうそく集会がノーベル賞候補になれるよう、関連資料をノーベル賞候補の推薦権のある国会に伝達する」と話しているという。同時に、ユネスコ世界記録遺産への登録も目標にしているらしい。

韓国のノーベル賞に対する強い憧れは、もはやコンプレックスといえるかもしれない。

これまで韓国人でノーベル賞を受賞したのは、2000年の金大中大統領の平和賞が唯一。日本や中国など近隣諸国の受賞ニュースを目の当たりにして、“ノーベル賞コンプレックス”に苦しんでいる状態だ。

(参考記事:“ノーベル賞コンプレックス”から抜け出せない韓国の「嘆き」と「やる気」と「空回り」

そんなコンプレックスを科学誌『Nature』に、「お金ではノーベル賞を得られないことも悟らなければならない」と厳しく指摘されたこともある。

それにもかかわらず最近では、ノーベル賞の候補者を推す“推薦者”に韓国人がいないからといった論調まで出ているのだから、驚かざるを得ない。

(参考記事:ついに「“韓国人推薦者”を増やすべきだ」とまで主張するようになった韓国ノーベル賞コンプレックスの今

とはいえ、気になるのは韓国のろうそく集会が本当にノーベル賞を受賞する可能性があるのかどうかだろう。

それについては、ケーブルテレビ局JTBCの報道番組『ニュースルーム』が詳しい。JTBCの『ニュースルーム』といえば、朴槿恵前大統領と崔順実の政治スキャンダルをスクープした番組で、いわば“ろうそく”の火付け役だ。

同番組の顔で「韓国で今もっとも美しいニュースキャスター」とも言われるアン・ナギョンを取材したときに、他の番組よりも「一歩深く踏み込んだニュースを提供できるようにいつも意識している」と話していた。

その言葉通り、このノーベル平和賞の話にも踏み込んでいる。題して「ろうそく集会をノーベル平和賞候補に?…現実性はあるのか」だ。

同コーナーでは、ノーベル賞は基本的に「個人」が受賞するものとしながらも、ノーベル平和賞に関しては例外的に「機関や協会も授与できる」と解説。実際に同番組が調べたところによると、これまでノーベル平和賞を個人に授与した例が104回、団体に授与した例が24回あったという。代表的なのは2012年の欧州連合(EU)も受賞したという。

特に類似性のある例として取り上げられたのは、2015年のノーベル平和賞だ。「民主主義の構築に寄与した」という理由でチュニジアの「国民対話カルテット」という組織が受賞した。労組や人権組織、弁護士組織などの連合体だという。

たしかに、韓国のろうそく集会と共通点があるかもしれないが、番組の結論通り、「ろうそく集会はノーベル平和賞の対象になることはなるが、推薦されるのは特定の団体に限定しなければならない。よって現実的に容易ではない」だろう。

そもそもの主旨以前に、市民が自発的に集まったデモであるならば、特定の団体だけを推薦することは難しいからだ。また、今も朴槿恵前大統領を熱狂的に支持する「パクサモ」などが反対する可能性も考えられる。

いずれにせよ、ノーベル賞コンプレックスから脱却するためには、実際に受賞するしかないだろう。

近年は天才待望論も強く “天才少女”騒動が起こるなど穏やかではないが、今年こそ成果を出せるのか。尽力するポイントがズレているような気もするが、今後を見守りたい。

(参考記事:ハーバードとザッカーバーグが惚れ込んだ頭脳!? 韓国の“天才少女”騒動)

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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