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2016年“新語”1位は日本生まれの“あの言葉”だった!! 韓国のややこしすぎる日本語事情

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:アフロ)

韓国で最も利用者の多いポータルサイト「NAVER」が12月27日、今年最も検索された“新語”を発表した。

見てみると、韓国で『逃げ恥』級の大ヒットを記録したドラマ『応答せよ1988』の影響から生まれた「オナムリュ」、ネットに写真や動画を上げて関心を集めようとする行為を揶揄する「オグロ」など、当然日本には馴染みのない言葉が並ぶなかで、意外にも1位は日本生まれの言葉だった。

2016年、NAVER国語辞典で最も検索された新語は「ツンデレ」だ。

その説明を見ると、「多くの人の前では冷たい態度をとるが(ツンツン)、好きな人の前だけでは態度が180度変わり、好意的な態度をとる(デレデレ)こと」となっている。まさに日本で使われているツンデレという単語が、そのまま韓国に“輸入”されたかたちだ。

そもそも韓国でも通じる日本語は、少なくない。

世界中で通用する「さけ」や「すし」などの単語だけでなく、韓国では「お元気ですか?」という挨拶言葉も理解する人が多い。

(参考記事:韓国で通じる意外な日本語は「お元気ですか?」 ある映画の影響だった!!

「お元気ですか?」が特殊な例だとしても、「刺身」「わさび」「マグロ」「イカ」「アナゴ」「アジ」など、特に水産物は日本語がそのまま通じるケースが多いのが実状だ。

興味深いのは、そういった現状を韓国政府がポジティブには受け取っていないということ。

その証拠に2015年10月、韓国の海洋水産部(「部」は日本の「省」に相当)は、魚市場や刺身店など水産物を扱う現場から、日本語をそのまま使った“日本式単語”を撤廃する意向を明かした。

(参考記事:「スシ」「ワサビ」も使わないように…? “日本式単語”の撤廃騒動

ただ、“用語純化”などと呼ばれるその事業は現在、まったく進んでいない。

今年10月、大阪の寿司屋「市場すし」難波店で 大量のわさびを盛る嫌がらせを韓国人が受けたとして話題となったニュースに対しても、ほぼすべての韓国メディアが「わさびテロ」という単語を使っていた。

とある韓国メディアが取材したところによると、海洋水産部関係者は「(用語純化事業には)予算がほとんど投入されていない」とのこと。意向を明かした当時から「わさびをコチュネンイと言ったら何のことかわからない」などと不評だったため、取りやめになったのかもしれない。

韓国では事あるごとに、日本統治時代の名残りをなくそうという動きが出る。「言葉」だけでなく、ソウル市にある日本統治時代の「建造物」を撤去しようとする計画などもあった。いずれも韓国の現実には合っていないようだが。

ちなみに、韓国サラリーマンが選んだ今年の新語・流行語のなかにも、日本生まれの言葉があった。ずばり「社畜」だ。

『聨合ニュース』は「“会社が飼育する家畜”という意味で、日本から来た言葉」と解説。韓国サラリーマンの現実を悲しくも見事に表現している新語・流行語のなかでも、特に共感を得た言葉だそうだ。

(参考記事:今年も仕事漬けだった!? 韓国サラリーマンが選ぶ2016年の新語・流行語ベスト5

いずれにせよ、日本で生まれた新語や造語までもが、そのまま使われている韓国。最近は両国の異質性が強調されがちだが、改めて同質性があると感じざるを得ない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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