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女王キム・ヨナは本当に「朴大統領と不仲」で政府からも睨まれていたのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
不仲説の原因となった昨年の行事(写真提供:SPORTS KOREA)

フィギュアスケートの女王キム・ヨナも “崔順実スキャンダル”の被害者だった…。韓国の国営放送KBSニュースが11月19日付けで報じたこのニュースは、かの国はもちろん、日本でも大きく報じられて話題になっている。その報道については本欄でも昨日紹介した通りだが、韓国ではさらに新たな憶測が飛び交っている。

例えば11月18日に発表された平昌五輪の記念コインの絵柄にフィギュアスケートが外れたのは、キム・ヨナが何かと非難の的になっている『ヌルプム体操』お披露目会への参加を断り、政府の怒りを買ったせいかもしれないという憶測報道が各メディアで流れたのだ。

(参考記事:動画で見る『ヌルプム体操』のミス・コリア出身マッスル美女チョン・アルム、“崔順実ゲート”のとばっちり!?)

これについては平昌冬季五輪組織委員会が11月21日午後に公式見解を発表して即座に反論。「18日発表の記念通貨は第1次分で、ショートトラック、スピードスケート、ボブスレーなど8種目となったのは競技連盟別に観覧選好度が高い種目を選んだため。フィギュアスケートは国際スケート連盟の3種目のうち2位だったため第1次分から外れただけで、来年に発表される第2次発行では含まれている」として、疑惑を完全否定した。

キム・ヨナが『ヌルプム体操』お披露目会への参加を辞退したことで文化体育観光部から睨まれ、政府からさまざまな不利益を被ったのではないかということについても、組織委員会は反論。「キム・ヨナは2014年11月から現在に至るまで平昌五輪の広報大使を務めている」としている。

キム・ヨナ関係者も韓国メディアの取材に対し、「報道されているように、断ったことで不利益を被ったとは思っていない。フィギュア選手だったキム・ヨナのイメージに合わず、ほかのスケジュールとも重なったので参加しなかっただけで、ほかに理由はない」として、一連の憶測を完全否定している。

逆に厳しい立場に立たされているのはキム・ヨナと何かと比較される新体操界の妖精ソン・ヨンジェだ。

ソン・ヨンジェは『ヌルプム体操』お披露目会に参加していたせいでネット住民たちから猛攻撃を受けている。「キム・ヨナとソン・ヨンジェ、“ヌルプム体操”で分かれた2人の運命」(『韓国経済TV』)と報じるメディアもあるほど、2人の立場は対照的なものになっている。

キム・ヨナの不参加理由がどうであれ、彼女に対しては同情する意見が多い(文化体育観光部の要請を受けて参加しただけなのに今になって非難とバッシングを浴びているソン・ヨンジェにも同情の余地があると思うが)。

同情を誘っているのは、キム・ヨナが『ヌルプム体操』お披露目会不参加が原因で、文化体育観光部が選定した『2015スポーツ英雄』の受賞者に選ばれなかったのではないかという指摘があったからだ。

事前のネット投票では候補者12人中最高の82.3%の支持を集めていたが、最終審査で「年が若い」という理由で選ばれなかったのは、文化体育観光部の報復ではないかとされているのだ。

気になって当時(2015年9月27日)の記事を調べてみたが、たしかに当時の国会・教育文化体育観光委員会でユ・ウンヘ議員がこの件について問題視していた。

ただ、『朝鮮日報』なども報じているように、大韓体育会の「スポーツ英雄」選定基準のひとつに「満50歳以上」という文言があった。キム・ヨナが昨年の選考に漏れたのは、この基準のせいだったという見方もできなくない(この項目があったのにキム・ヨナを最終候補にしたことがそもそも波紋を呼ぶ始まりだったのでないかと思う)。

実際、今年3月に「満50歳以上」という規定は取り除かれ、キム・ヨナは今年10月18日に「2016スポーツ英雄」に選ばれている。キム・ヨナは10月14日に体育勲章のなかでも最も階級が高い「青龍章」にも輝いている。こうしたことから、政府から睨まれたり憎まれていたことはないとする韓国メディアも出てきている状態だ。

(参考記事:キム・ヨナの特例的な体育勲章にネット民たちも「何かしたっけ?」

もっとも、今回の一件で再燃したキム・ヨナと朴槿恵大統領のギクシャク関係に関しては、さまざまな意見が出でている。2人の不仲説は昨年8月の行事で2人態度がぎこちなかったことが原因で取り沙汰され、当時も多くのメディアで取り上げられて憶測を呼んだが、改めて時間軸を整理してみると、一つのことに気づく。

というのも、『ヌルプム体操』お披露目会があったのは2014年11月26日。仮にそこに出席しなかったことでキム・ヨナが政府の怒りを買ったとしても、前出の「2015スポーツ英雄」の発表があったのは2015年9月8日で、キム・ヨナと朴槿恵大統領が接近したイベントは2015年8月15日だった。「怒りを買った→報復された→ぎこちない関係になった」という流れにはならないのである。

当時のネット住民たちの反応をみると、「キム・ヨナは緊張してしまい、朴大統領にしっかり対応できなかったのだろう」「朴槿恵大統領をディスったキム・ヨナこそ女王にふさわしい」などキム・ヨナ支持者のほうが多かったのも事実だが、この件に関する真相を知るのはキム・ヨナと朴槿恵大統領という当事者以外にほかにいないだろう。

(参考記事:韓国の2大プリンセス朴槿恵大統領とキム・ヨナの不仲説はいつなぜ起きたのか!?

だからこそ注目されるのは、今月11月23日に開催予定の「2016スポーツ英雄授賞式 名誉の殿堂 献額式」だ。前述した通り、2016年度のスポーツ英雄に選ばれたキム・ヨナは同授賞式に参加予定なのである。

はたしてその授賞式で、キム・ヨナは一連の騒動について何を語るのだろうか。彼女は政府に睨まれ、朴槿恵大統領ともぎこちない関係だったのか。

ウインタースポーツの新シーズンが幕を開けつつある今、フィギュアとはまったく関係ないことで注目を集めるのはキム・ヨナにとっても不本意なことだろう。

久々に公の場に登場するのだ。永遠のライバル浅田真央のことや、師が同じで何かと引き合いに出される羽生結弦の今季について聞きたいメディアやファンも多いはずである。

(参考記事:キム・ヨナ、浅田真央、羽生結弦のコントラストな三角関係

ただ、さすがのキム・ヨナも今回の騒動について言及しないわけにはいかないだろう。韓国メディアで言われているように、キム・ヨナも崔順実容疑者とその一派たちに睨まれた「ミウントル(憎まれ髪)」だったのならば、それこそ“崔順実スキャンダル”の闇はかなり深く悪質だと言わざるを得ない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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