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日本女子ゴルフ通算20勝を達成したイ・ボミの「歓喜」と「意義」とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
日本通算20勝を成し遂げ、2年連続賞金王も目前(写真提供:KLPGA)

日本女子プロゴルフツアーの『伊藤園レディース』を制して今季5勝目を飾ったイ・ボミ。その快挙はさっそく彼女の母国・韓国でも詳しく報じられている。

「イ・ボミ、日本女子ゴルフ シーズン5勝」(一般紙『ハンギョレ新聞』)、「イ・ボミ、延長戦(プレーオフのこと)の末にシーズン5勝達成」(ネットメディア『OSEN』)、「イ・ボミ、JLPGAシーズン5勝」(国営放送『KBSニュース』)など、新聞、ネット、テレビを問わず各メディアが報じているのだ。

以前、韓国におけるイ・ボミ検索時の意外な関連キーワードを紹介したが、ネットメディアの『イーデイリー』などは「イ・ボミ、JLPGAツアーで“チャリッハン”延長逆転優勝」と報じた。“チャリッハン”を日本語で翻訳すると、「爽快な」となるだろうか。「劇的」とするよりも「爽快な」のほうが彼女のイメージに合っていると判断したのだろう。

気になって韓国の大手ポータルサイトの「リアルタイム検索」でファンの反応も調べてみると、昨日の逆転勝ちは爽快だったという意見があった。

韓国では女子プロゴルファーたちがSNSを積極活用しており、ファンたちの間でもツイッターなどのリアルタイム実況が多々あるが、とあるネットユーザーはこんなことを書き込んでいた。

(参考記事:日本は逆行!? 韓国の“ポスト”イ・ボミたちのSNSがスゴい!!)

「最終日で追いついただけでも凄いのに、笠りつ子プロとは延長戦2戦全敗。延長最初のホールでパットを外して痛恨と思ったけど、最終的には優勝したのだから凄い。爽快だった」

試合展開がここまで詳しく書かれているのは、日本女子ツアーが韓国でもテレビ放映されているからでもある。『伊藤園レディース』も韓国のゴルフ専門チャンネル『SBS ゴルフ』で放映されていた。

そんなこともあってイ・ボミが活躍すると、韓国で喜ぶ関係者たちも多いらしい。例えばイ・ボミとウェア契約を交わしているルコックスポルティフ・コリア社だ。

韓国ではこの秋から彼女の好きなデザインやカラーを取り入れた「イ・ボミコレクション」が発売されているが、かなり反響が良いという。

(参考記事:韓国でも反響「イ・ボミコレクション」を本人が着るとここまで似合う!!)

韓国のルコック関係者も、「彼女は毎試合毎ラウンドごとに違うスタイルで、しかも華やかなので、イ・ボミのような溌剌としたエナジーを求めて購入する女性ファンが増えている」とのことだ。

特筆すべきは、イ・ボミが今回の優勝で日本ツアー通算20勝を達成したことだろう。

2011年から日本ツアーに参戦するイ・ボミは、2012年に3勝、2013年に2勝、2014年に3勝、2015年に7勝と優勝を重ね、今季は5勝目をマークし、その大台に到達したが、実は彼女がこの大台を目標にしていたことは以前から韓国メディアにも語っていたことでもあった。

(参考記事:女王イ・ボミがKLPGAにだけ明かした意外なエピソードとは?)

それだけに『アジア経済』も、「イ・ボミの偉業、“日本で通算20勝”」と題した記事の中で、その快挙を高く評価している。

というのも、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)ツアーでは国内ツアーで20勝以上したり、アメリカ、日本、ヨーロッパツアーでも20勝以上の成績を残せば、KLPGAツアーの永久シード権を付与している。

その栄誉を手にしているのは、故・具玉姫、朴セリ、全美貞、申ジエ、パク・インビ、アン・ソンジュ、そして李知姫だけだったったが、今回の優勝でイ・ボミも新たなに仲間入りしたのである。

特にイ・ボミの場合は過去にKLPGA広報モデルに選ばれたことがあり、“韓国美女ゴルファー神セブン”の中では初のことでもあるだけに、話題性も十分だ。

前出したファンの書き込みにも、「顔も体も実力もすべてよし」「日本でレジェンドになっているね」といったコメントがあったほどである。今季5勝目は、韓国でイ・ボミの存在感を改めて知らしめる、大きな意義があったのは言うまでもないだろう。

いずれにしても今回の『伊藤園レディース』でイ・ボミは見事に復活し、目標としていた大台にも到達した。

次に目指すのは2年連続の賞金女王だが、気の早い韓国メディアは、「イ・ボミ、2年連続の賞金女王も目前」(通信社『聯合ニュース』)、「イ・ボミ、今季5勝とJLPGA通算20勝目、2年連続賞金女王への登板も目前」(一般紙『世界日報』)、「イ・ボミ、2年連続賞金女王が見えた」(一般紙『ソウル経済』)と、ほぼ手中に収めたかのような報道が多いが、果たして…。

久ぶりの優勝で復活の狼煙を挙げたイ・ボミが見せる、残り2試合のラストスパートに注目したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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