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U-19は監督解任、A代表も苦戦する危機の韓国サッカー。「ワールドカップが来るのが怖い?」

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国代表を率いるシュティーリケ監督にも解任論が出始めている(写真:ロイター/アフロ)

U-19日本代表がバーレーンで行われているU-19アジア選手権の準々決勝でタジキスタンを下した。これにより、来年5月に韓国で行われるU-20ワールドカップへの出場を決めたわけだが、開催国である韓国は来年の本番が不安になるほどの危機に直面している。

韓国もU-19アジア選手権に出場し、タイ、バーレーンに勝利するもグループリーグ最終戦でサウジアラビアに敗北。バーレーン、サウジ、韓国が勝ち点6で並ぶも、当該国対戦成績で3位に甘んじ、グループリーグで姿を消したのだ。

韓国は開催国枠で来年のU-20ワールドカップへの出場権を獲得しているが、アン・イクス監督への非難が噴出。特に今回のチームには、2010年からFCバルセロナの下部組織でプレーし、現在はバルサBに籍を置くMFぺク・スンホも招集していたが、アン・イクス監督はコンディションを理由に起用しなかった。

アン・イクス監督は、ぺク・スンホと同じくバルサのフラベニールAに属するイ・スンウとも不仲説が囁かれ、飛び級でのU-19代表入りが期待されていたイ・スンウの招集も見送ったことで韓国のサッカーファンたちから批判を浴びていたが、結果も残せなかっただけにさらに非難が集中した格好だ。

(参考記事:久保建英だけじゃない!! イ・スンウとペク・スンホはなぜ、バルサの一員になれたのか

そんな世論の声をもはやKFAもアン・スンイク監督も無視できず、昨日10月24日に監督交代を発表。「アン・イクス監督が辞意を示し、KFAもそれを受諾して契約解除することを決めた」というのがKFA公式発表だが、実質的には解任と言っても過言ではないだろう。

というのも、アン・イクス監督は帰国会見で「今回は残念だったが、内容は悪くなかった。重要なのは本大会だ」と意欲を見せていた。それだけに複数の韓国メディアが「更迭」という言葉を使っている。

KFAは11月末に予定されている技術委員会まで新しい代表監督を決めるとしているが、新監督が本番まで5カ月弱しかない状況でチームを立て直せるか、とても先行き不安な状況なのだ。

ただ、5カ月先のこともさることながら、今は韓国代表のほうが心配だという意見もある。9月から始まったロシアW杯のアジア最終予選でグループAに属する韓国代表だが、現在はグループ3位にあるのである。

そんな苦しい戦いぶりもさることがら、チームを率いるドイツ人監督ウリ・シュティーリケ監督の評判が芳しくない。2015年アジアカップ準優勝は“god(神)ティーリケ”と絶大な支持を得ていたが、敗因を責任転嫁する数々の発言が原因で批判を浴びている。

いまだに韓国の国民的英雄として人気を集めるフース・ヒディンク監督とも何かと比較され、限界論や解任論まで飛び交っている状態なのである。

(参考記事:批判と更迭の危機に立つシュティーリケ韓国、英雄ヒディンクと何が違うのか

興味深いのは、シュティーリケ監督と日本代表を率いるヴァヒド・ハリルホジッチ監督を同列に並べながら報じる記事が、韓国でも多いことだ。

「アジアの盟主は昔のこと、韓日サッカーのプライドはいずこに」(『デイリーアン』)

「シュティーリケとハリルホジッチ、11月Aマッチで運命が決まる」(『スポータル・コリア』)

日本と韓国の代表監督が同列に報じられたり、比較対象になるのは今回が初めではない。むしろ日本と韓国の代表監督は何かにつけて比較されてきた。外国人であろうとその比較からは逃れられず、韓国では「韓日代表監督たちの宿命と因縁」がしばしば話題になる。

しかも、ハリルホジッチ監督は、日本代表監督になる前から韓国では有名で何かと因縁のある人物ということもあって、韓国メディアは就任時はもちろん、ハリル・ジャパンのAマッチやチーム状況などを漏れなく報じてきた。

日本で好評価だった試合を酷評したり、ときには日本で問題視されたハリル流を持ち上げてみたりと、独自の視点でハリルホジッチ監督をウォッチしてきたのだ。

(参考記事:「鬼神」「日本の良さを置き去りに」韓国が報じてきたハリルJへの“無慈悲”な指摘の数々

そんな蓄積もあるせいか、サッカー専門誌『月刊ベストイレブン』などは「シュティーリケのように窮地に立つハリルホジッチ」「もしやまた選手のせい?韓日の代表監督、なぜにこんなに同じなのか」(『ベストイレブン』)と、連日のように報じているほどでもある。

思い出すのは、今からちょうど16年前のことだ。シドニー五輪やアジアカップで日本とは対照的な結果に終わった韓国では、「ワールドカップが来るのか怖い」という嘆きの声があちこちで囁かれた。

あれから16年。5カ月後に迫った自国開催のU-20「ワールドカップ」のことを思えば不安は尽きず、11月に迫ったロシア・「ワールドカップ」アジア最終予選のことを思うと心配でならない。サッカーファンたちにとってはまたしても、「ワールドカップが来るのか怖い」と思える日々が続いているかもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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