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イギリスから“犬食文化”を痛烈批判された韓国で起きている新たな「食の変化」

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

イギリスが韓国の伝統的な食文化といえる“犬食”を非難したという。韓国メディアによると、イギリス外務省のアジア・太平洋担当次官が「韓国政府に動物を愛する私たちの見解を伝え、犬肉を食べる慣行を変えるようにする」「犬は食べ物ではなく愛玩動物という点を立証していく」などと話したそうだ。

そもそも、なぜイギリス外務省の次官が韓国の食文化を非難したかというと、イギリス政府が設置している請願サイトの影響だという。

(参考記事:韓国の犬食文化反対にイギリス人9万人が請願サイトに署名した理由 ”

韓国にはたしかに「ポシンタン」という犬肉料理があるが、実はその人気と需要は近年下がっている。さらに韓国国内では犬肉の流通を禁止する法律を作る動きもある。すでに犬食の文化は失われつつあるだけに、韓国にとって今回のイギリスの忠告は余計なお世話だったかもしれない。

日本とは異なる韓国の“ラーメン文化”を知っていますか?

犬食に限らず、韓国の食文化や食の好みは近年、めまぐるしく変化している。

韓国の食文化といえばキムチを思い浮かべがちだが、例えば、ラーメンも長らく韓国人に愛されている“ソウルフード”だ。昨年のラーメン市場は2兆16億ウォン(約2000億円)で、韓国人1人あたりの年間ラーメン消費量は74食。これは世界1位とも言われており、5日に1食はラーメンを食べる計算になる。

とはいえ、韓国のラーメンはインスタントが主流。それは1963年9月に「三養ラーメン」という即席ラーメンが発売されたのが、韓国のラーメン史の始まりとされているからだ。ただし50年が過ぎた現在、韓国で人気を集めているラーメンは“日本式ラーメン”だろう。

(参考記事:韓国で人気爆発中の“日本式ラーメン”、韓国人の味覚に最も合うのは「一蘭」!?

韓国には1998年頃から日本ラーメン専門店があったが、当時はあまり人気がなかった。しかし、2000年代中盤頃から日本式ラーメンの人気に火がつく。とある料理評論家は「旅行で日本を訪れた韓国の若者たちが日本のラーメンを食べて、帰国後もそのおいしさを求めたから」と理由を解説している。

韓国のコンビニ弁当が凄いことになっている

また、20~30代の学生・社会人や、最近急増している「一人世帯」の人に注目されているのがコンビニ弁当だ。「11菜弁当」「サムギョプサル定食弁当」など、コンビニ弁当とは思えないほど種類が豊富で、こだわり抜いた味とボリューム、そして廉価(ほとんどが500円以下)で大人気なんだとか。

正月や秋夕(チュソク)などの大型連休にも売上好調で、コンビニ「CU」が発表したところによると、ここ3年間の秋夕、正月連休期間の売り上げは、2013年18.4%、2014年24.3%、そして2015年45.0%の成長率を記録したという。だが背景には、「セブン-イレブン」ら3大コンビニによる“コンビニ弁当戦争”があることも見逃せない。

(参考記事:圧倒的なクオリティで大人気&競争激化!! 仁義なき韓国の“コンビニ弁当戦争”

日本のネットで話題になっている“トンスル”の真実

ちなみに、一時ネット上で話題になった「トンスル」は、当時の韓国メディアが「そのような酒を飲む人はいない」と断言しているとおりだと思う。韓国の知人たちも聞いたことがないと口を揃える。ただ、トンスルが本当に存在したことだけは確かなようだ。

国際的な非難の声や経済的な影響、そして若者の味覚の変化などで、食文化は時代とともに移り変わっていくもの。それでも個人的には、その国特有の伝統的な食文化はいつまでも残ってほしいと思う。何かと変化の早い韓国の食文化は、今後どうなるだろうか。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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