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「アジアのロールモデル(見本)だ」韓国が岡崎慎司を大絶賛するワケ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国でも評価が高い岡崎慎司(写真:アフロ)

プレミアリーグで快進撃を続けるレスターシティ。“奇跡の優勝”がいよいよ現実味を帯び始めている中、韓国ではひとりの日本人選手にスポットライトが集っている。「3年ぶりのアジア選手EPL優勝、ソン・フンミンか?岡崎だろうか?」(サッカー専門メディア『ベストイレブン』)「まさに“シンセーショナル(慎司とセンセーショナルを合わせた造語)”岡崎、危機に強い勝利の魔術師」(サッカー専門メディア『インターフットボール』)と、岡崎慎司の評価が高まっているのだ。

(参考記事:プレミア好きな韓国ファンも高く評価!!「岡崎慎司は“アジアのテベス”だ!!」)

そもそも韓国は、海外リーグでも特にプレミアリーグの人気が高いお国柄。2005年にパク・チソンがマンチェスター・ユナイテッドに移籍したことを機に、韓国ではプレミアリーグがテレビ中継されるようになり、2007年にはイングランドの専門誌『FourFourTwo』の提携ライセンス誌として『FourFourTwo KOREA』も創刊されている。パク・チソンを皮切りにプレミアリーグでプレーした選手も多く、今季はキ・ソンヨン(スウォンジー)、イ・チョンヨン(クリスタル・パレス)、ソン・フンミン(トッテナム)らがプレミアリーグでプレーしている。そんな韓国で岡崎の評価は高まっている。『FourFourTwo KOREA』のホン・ジェミン編集長も言う。

「今季のレスターシティの快進撃に、韓国のプレミア・ファンたちも大きな感銘を受けており、その主力選手のひとりである岡崎の評価は日を追うごとに高まっています。彼が記事になることも多く、開幕前とはかなり扱いも異なりますね」

開幕前は、プレミアでプレーした日本人選手との比較や同じく今季からプレミア移籍したトッテナムの韓国人アタッカー、ソン・フンミンと比較されることが多かった。年齢もプレースタイルも成長過程も異なるが、ソン・フンミンも岡崎と同じくドイツ・ブンデスリーガからプレミア移籍したこともあって、何かと比較対象になった。

(参考記事:「漫画のような父子物語」で育った韓国サッカー期待の星、ソン・フンミン)

「けれど、今では違います。韓国のサッカーファンたちは今季不振のソン・フンミンに対して、“岡崎のようにプレーしろ!!”と不満を露にするほどです」(ホン・ジェミン編集長)

韓国のサッカーファンたちが岡崎を何よりも高く評価するのは、そのひたむきさだ。ホン・ジェミン編集長も言う。

「爆破的なスピードがあったり、技術がズバ抜けて優れているわけでもない。ただ、彼はいつも全力でプレーしていますよね。ゴール数は多くなくとも、いつも一生懸命に、いつも誠実に。大袈裟な言い方かもしれませんが、毎試合、死力を尽くしてプレーしている。活動量が非常に多いので当然、スペースを探し当てることにも長けていて、チャンスも多く作るし、岡崎本人も顔を出す。そう、パク・チソンを連想させるんです。それが韓国で岡崎の評価が高まっている要因でしょう」

かつてJリーグでプレーし、マンチェスター・ユナイテッドでも活躍したパク・チソン。現役を引退しても今なお、韓国サッカー界の“生きる伝説”と称されるパク・チソンを彷彿させるとして、韓国でも岡崎人気は急上昇中というわけだ。パク・チソンは現在、ロンドンに暮らしているが、きっと岡崎のプレーも見ているに違いない。

(参考記事:あの朴智星(パク・チソン)は今、どこで何をしているのか)

韓国ではこれまで本田圭佑、香川真司に次ぐ“日本サッカー攻撃陣の3番手”という認識が強かった岡崎慎司。しかし、今は違う。『中央日報』のサッカー班記者であるソン・ジフン氏も「日本代表ナンバーワン・アタッカーでしょうし、韓国を含めたアジア選手がロールモデルにすべき選手でしょう」と評価する。レスターシティが奇跡の優勝を成し遂げたとき、韓国のサッカーファンたちは岡崎にどんな祝福の言葉を寄せるのだろうか。今から楽しみだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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