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今季初勝利キム・ハヌルが明かした勝負ジンクスとイ・ボミら“朴セリ・キッズ”の共通点

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国時代のキム・ハヌル。彼女も“朴セリ・キッズ”のひとりだ。(写真:ロイター/アフロ)

女子ゴルフの『アクサ・レディース』でキム・ハヌルが今季初勝利を飾った。日本ツアー通算2勝目。先週まで2週連続して最終日を首位で迎えたが、最後に栄冠を逃していただけにその喜びもひとしおだろう。優勝カップを手にする笑顔を見たとき、彼女が韓国女子ツアー2年連続(2011年、2012年)賞金女王の実績を引っ提げて来日したばかりの頃に雑誌の取材でインタビューしたときのことを思い出した。

当時は来日したばかりで日本の文化にも興味津々のようで、「日本の着物も着てみたい」とも語っていた。さすがファッションにも関心が高く、韓国では“フェアウェイのファッショニスタ”と呼ばれるだけあるとも思った。

ちなみにハヌルとは韓国で“空”という意味で、大会最終日はスカイブルーのウェアを着用するのがジンクスだと明かしてくれた。「スコアが悪くなる」というジンクスからサングラスも着用しないとも語っていた。イ・ボミとは同級生でミニスカ対決が話題にもなるが、『アクサ・レディース』ではそのジンクス通り、スカイブルーのルックスで見事に優勝した。

(参考記事:「イ・ボミとの“ミニスカ対決”でも負けていない!! 美女ゴルファー、キム・ハヌル」)

もちろん、キム・ハヌル優勝の一報は、「キム・ハヌル、3回挑戦でシーズン初勝利」(『Newsen』)など韓国でも報じられている。日本とは異なり韓国メディアが話題にしているのは、シン・ジエを退けての優勝であること。同じくイ・ボミが欠場したことも報じているが、実はこの3人は同じ1988年生まれで(パク・インビも)、韓国では“朴セリ・キッズ”とも言われている。

朴セリとは韓国女子ゴルフ界の“生きる伝説”で、今季限りの引退を表明したスーパースター。韓国では彼女に影響されてゴルフを始めた者たちを“朴セリ・キッズ”と呼ぶ。以前、イ・ボミを取材したときも「私たちの世代は、セリ・オン二(姉さん)に影響されてゴルフを始めた選手が多い。まさに私は“朴セリ・キッズ”です」と言っていた。

(参考記事:「苦労と悔し涙の連続だったイ・ボミの知られざる原点~イ・ボミ特集」)

“朴セリ・キッズ”と呼ばれるのはイ・ボミやキム・ハヌルだけではない。1987年生まれのチェ・ナヨン(2010年LPGA賞金女王)やアン・ソンジュ(2010〜2011 年、2014年JLPGA賞金女王)も“朴セリ・キッズ”だろう。

例えばアン・ソンジュは、もともとテニス選手になることを夢見ていたが、朴セリに惹かれてゴルフに転向し、メキメキと上達していったらしい。小学生の頃から彼女を知る元韓国代表コーチによると、「当時から度胸がある選手でしたね。勝負どころで動じることはなく、冷静に自分のゴルフを貫けるタイプ」だったという。

(参考記事:「元コーチが教えてくれたアン・ソンジュの強さとスランプ克服秘話」)

美人ゴルファーとして長くアメリカで活躍し、そのルックスから日本でも人気があるチェ・ナヨンも“朴セリ・キッズ”だ。チェ・ナヨンは中学3年生で韓国代表入りし、翌2004年にはアマチュアの高校生ながら韓国女子ツアー優勝、2008年からアメリカ女子ツアーに参戦する“早熟の天才”だが、アマチュア時代やプロになってからも壁にぶち当たったこともある。そのたびにアドバイスをくれたのが韓国代表コーチや朴セリだったという。

(参考記事:「チェ・ナヨンを進化させたワンフレーズ・アドバイス」)

そんなチェ・ナヨンは今季限りでの引退を表明した朴セリについてこう言っている。

「セリ・オンニは若い選手たちにお手本になってくれた。オンニはアメリカでホテルとゴルフ場の間しか往復しなかった日々が今となっては残念だったと言って、若い私たちにはゴルフを楽しみ、たくさんのことを見て経験し、たくさんの友人を作るようアドバイスをしてくました。今でもその言葉を大切にしています」

ゴルフを楽しみ、たくさんのことを見て経験し、たくさんの友人を作ること。それはキム・ハヌルやイ・ボミが日本でも実践していることでもある。レジェンドの教えとアドバイスは今でも“朴セリ・キッズ”たちに大きな影響を与えているのだろう。

(参考記事:「チェ・ナヨンの育成過程で見る韓国ゴルフ強さの本質」)

今では20代後半になった“朴セリ・キッズ”たち。イ・ボミ、キム・ハヌル、シン・ジエ、アン・ソンジュなど日本で活躍する“朴セリ・キッズ”たちは今後、どれだけ勝利を重ねていくのだろうか。

ちなみにキム・ハヌルは以前取材したとき、「私、一度波に乗ると爆発するタイプなんです!!」とも言っていた。待望の今季初勝利を飾った今、ますますその勢いに弾みがつきそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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