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“なでしこジャパン”に挑む韓国女子サッカーの本当の実力

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
2013年東アジアカップではチ・ソヨンのゴールで韓国が勝利したが……(写真:ロイター/アフロ)

2月29日から始まったサッカー女子のリオデジャネイロ五輪アジア最終予選。日本女子代表は3月2日に韓国女子代表と第2戦を戦うが、韓国女子サッカーは近年、着実に力をつけている。

2010年にはU-20女子ワールドカップ3位、U-17女子ワールドカップでは優勝に輝き、2015年6月にカナダで行われた女子ワールドカップでは、悲願の1勝と初の決勝トーナメント進出も達成。2003年大会以来2度目のワールドカップ出場で達成したその快挙は、「テハンナンジャ(大韓娘子)、新しい歴史を刻んだ」、「男子は48年かかった偉業、女子は12年で成し遂げた」と称えられた。

そんな韓国女子サッカーが次なるターゲットとして目標に定めてきたのが、リオデジャネイロ五輪である。韓国女子は2004年アテネ五輪から予選に参加しているが、まだオリンピック出場がないだけに今回は是が非でも出場権を獲得したいと意気込んでいる。

チームを率いるのは、2015年女子ワールドカップでも采配を振るったユン・ドクヨ監督。今年1月には中国で行なわれた4カ国親善大会で実戦感覚を磨き、2月4日から木浦(モクポ)で3週間の強化合宿を経て決戦の舞台・大阪にやって来た。

ただ、韓国女子の対日本成績は分が悪い。通算4勝8分14敗。昨年夏に中国で行なわれた東アジア選手権では若手中心の“なでしこジャパン”に2-1で勝利したが、通算成績では日本にほとんど及ばない。むしろ韓国女子サッカー界にとって、“なでしこジャパン”はお手本であり、リスペクトの対象でもある。男子サッカーでは「日本には絶対負けられない」という伝統の対抗心を燃やす韓国だが、女子サッカーに関しては「日本を見習え」という認識がメディアやファンにあるのだ。

(参考記事:韓国が見た“なでしこジャパン”「日本はリスペクトとお手本の対象」)

それだけに一部の韓国メディアは今回の日韓対決も厳しい戦いになることを予想していた。

実際、チームの状況もベストとは言いがたい。前出した中国での4カ国親善大会では、ベトナムに5-0の勝利を飾るも、メキシコ、中国には0-2で連敗を喫した。しかも、身長180cmの大型FWパク・ウンソンとディフェンスの要であるシム・ソヨンをケガで欠く。

特に昨年の女子ワールドカップを機に、「美女サッカースター」「韓国女子サッカー美貌担当」とさえ呼ばれるほどの人気者になったシム・ソヨンの欠場を残念がるサッカーファンは多かった。

(参考記事:「貧弱韓国女子サッカー界の新たな希望となる美人スター登場!!」)

もっとも、ピッチで“なでこしジャパン”と対峙する選手たちから弱気な声は聞こえてこなかった。

チームのエースとなるチ・ソヨンも、大阪入りする前に韓国メディアに言っていた。

「日本との試合になると私はもっと強くなる。日本の選手たちは私のことをよく知っているが、私も日本の選手たちをよく知っている。ピッチに入ると“かならず勝たなければならない”という思いでプレーします」

かつてINAC神戸でプレーし、現在はイングランドのチェルシーLFCで活躍するチ・ソヨン。あまり知られていないことだが、最近、韓国では “日本キラー”とも呼ばれているらしい。

(参考記事:「 “韓国の女メッシ”ことチ・ソヨンが“日本キラー”と呼ばれるワケ」)

そのチ・ソヨンを含め、今回の韓国女子代表には今季からINAC神戸でプレーするチョ・ソヒョン、韓国人初のアメリカ女子プロサッカー進出選手となったチョン・ガウル(ウエスタン・ニューヨーク・フラッシュ)など海外組も多い。ユン・ドクヨ監督は国内合宿でそんな人材たちをフル活用しながら、4-2-3-1や4-1-4-1といった基本フォーメーションの戦術確認をしつつ、より守備的な3バックへの転換もトレーニングしたらしい。

そうした成果があったのか、最終予選初戦となった2月29日の北朝鮮戦では1-1で引き分けた。これまで北朝鮮との通算成績は1勝1分14敗で、直近まで9連敗していたことを考えれば、韓国にとっては大健闘だ。その勢いに乗って“なでしこジャパン”に挑む韓国女子。果たして日本戦ではどんな采配を見せるだろうか。

初戦のオーストラリア戦でまさかの黒星発進となった“なでしこジャパン”にとっても、もはや絶対に負けられない試合。女子サッカー日韓戦は俄然、注目の集まる一戦となる。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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