吉本興業のアジア展開 - iflix社への出資

吉本興業清水副社長とiflix社 Mark Britt CEO

2019年4月8日、吉本興業がアジア、中東、アフリカなど20ヶ国以上に動画を配信する「iflix」社(本社:マレーシア)に出資、合弁会社を組成することが発表された。合弁会社は、iflixへの日本コンテンツのアグリゲート機能と、コンテンツの共同制作を担うという。

吉本興業のコンテンツと言えば、「お笑い」を思い浮かべる人が多いだろう。そして、「お笑い」はローカル性が強く、国境を超えないだろうという感覚を持っている人も多いのではないか。アメリカのコメディはあまり笑えないとか、日本の笑いはレベルが高いので海外の人にはわからないいのではないかといった懸念をよく聞く。しかし、実際にアジアのコンテンバイヤーに日本のコメディ作品を見せると、字幕も無いのにゲラゲラ笑い転げることがよくある。そして、彼らは言う「日本のコメディのセンスは世界一である」。

メディア、コンテンツ業界に関わっている人なら、日本の映像コンテンツは国内消費型で、なかなか海外マーケットに出てこないことは誰しもが知っている。しかし、それはバイヤー側にニーズが無いのではなく、供給側の品揃えが課題なだけで、この経験が物語るように、作品があれば、買い手はいくらでもつくのではないだろうか。

今回の吉本興業とiflixの提携は、こうした日本コンテンツを海外に流通させるために大きな役割を果たすだろう。また、iflixは、吉本興業が提供するコンテンツに関し、視聴データを共有するという。その点で、吉本興業が提供する日本のバラエティなどのお笑いコンテンツや、ドラマなどが、アジアや中東、アフリカといった宗教も生活環境も違う市場でそのように受け入れられるか、興味深いデータが得られるに違い無い。

現在のメディアビジネスはデータと切っても切れない関係にある。映像の流通経路が放送から通信に拡大した現在の環境では、データは視聴行動を促進する為にさらに重要性を増している。

では、データは映像作品を流通させるOTTにとって、どのような側面で重要なのか?それは、「次になにを見せるか?」をメディアが知る為に重要なのである。たとえば、韓国のスパイ映画を見た視聴者に、キャストが似ている同じ韓国発の作品をレコメンドするのか?それともコンテンツの嗜好性に着目、スパイアクション系のコンテンツをレコメンドするのか?たくさんの作品アーカイブから、次の作品をレコメンドするにも、選択肢は無限にある。そのなかから、次のコンテンツをオススメする能力、つまりデータの集積とその加工能力がメディアにとって重要になっている。

なぜなら、こうした「次になにを見せるか?」といったオススメ能力は、そのまま視聴者のエンゲージメントを左右し、視聴本数、視聴時間などメディアビジネスのキーファクターの動向に影響、売上に直結していくからである。

アジアには、30代以下のミレニアル世代が6億人以上いる。彼らは、音楽や映画、ドラマなどエンターテイメント産業のメインターゲットである。iflixは、Netflixなどが狙う富裕層ではない、一般大衆向けにマーケティングを行う。それは、吉本興業の強みであるバラエティなど「お笑い」コンテンツが狙うターゲットと同じである。5Gの拡大で映像の流通経路が拡大するなか、今回の提携は日本コンテンツの海外展開に大きく貢献するだろう。