問題は柴崎だけではない。日本のビルドアップに不協和音が響いた、本当の理由

森保一監督(写真はコートジボワール戦)(写真:ロイター/アフロ)

パナマ戦の日本代表は後半16分に得たPKを南野拓実が決め、1-0で勝利を挙げた。

後半に攻勢をかけたことが勝因となった一方、前半の日本はあまりにも退屈な出来だった。日本時間で23時15分キックオフ。あの動きのない前半では、ハーフタイムに日をまたぐ気力を失い、魅惑の後半を見ることなく、布団に入った人も少なくないかもしれない。

日本が前後半で激変したのは、ビルドアップだった。橋本拳人に代わって遠藤航がボランチに入り、ゲーム内容は驚くほど改善された。それは誰が見ても頷くはず。

前半のビルドアップは、どこに問題があったのか。パナマ戦の日本はメインシステムの[4-4-2]ではなく、[3-4-2-1]を採用した。序盤から目についたのは、柴崎岳のポジショニングだ。橋本を後ろに残して前方へ行き、1トップ・2シャドーの周り、相手MFとDFのライン間に立った。

[3-4-2-1]は3バックとダブルボランチ、計5人が自陣中寄りに立つため、初期配置のままでは、中が混雑しがち。たとえば、左右DFが縦パスを入れようとすると、そのコース上にボランチが立ち塞がり、味方同士でコースを潰し合ったりする。

このような3バック時の自陣混雑に関しては、過去のA代表、あるいは五輪代表の試合で指摘する選手もいた。今回あえて柴崎が横並びを避け、橋本がワンボランチ気味の縦関係にしたのは、チームの流れとして理解できる。

ところが、この配置バランスの中で、縦パスは入らなかった。

サッカーは相手も見なければならない。パナマは[4-2-3-1]を敷いた。中盤の底に残った橋本は、相手トップ下の8番アダルベルト・カラスキージャと1対1でかみ合う。ここで橋本はプレッシャーを受け、前を向いて縦パスを刺せなかった。

単純にスキルの問題はある。数の上で1対1とはいえ、8番カラスキージャを含むパナマの中盤は、ブロックを作り、縦パスに対してゾーンで待ち構えた。つまり、1対1とはいえマンマークではないので、瞬間的に橋本がフリーになれる場面はたくさんある。しかし、彼は前を向くボールの受け方がスムーズではなく、前方視野を確保できないまま、後ろに下げるシーンが散見された。

たとえば後半の遠藤のように、相手が近くにいても、軽いバックステップで立ち位置をずらして自分のスペースを作ったり、あるいは身体の向きを変えたりと、ボールの受け方がうまい選手なら、もっと縦パスを刺せたはず。この点は遠藤との質の違いがあった。

そして、そうやって後方から縦パスが入らない状況が続くと、1トップ・2シャドーの南野や久保建英、三好康児らは、下がってボールを受けようとする。

ところが、前半5分には下がった南野と、上がった柴崎がポジションをかぶらせ、スペースを潰し合う結果になった。さらに前半14分、今度は南野と橋本が似た状況でスペース被りを起こし、攻撃を詰まらせた。

敵陣にスペースが空き、カウンター気味にスピードを上げるタイミングなら、ボランチが前へ潜るのは有効に働くが、狭くブロックを閉じられた状況で前へ行っても、渋滞を引き起こすだけだ。

前半はある程度の時間が経つと、柴崎は徐々に縦関係をやめて、元のボランチの位置に下がってボールを受け始めた。しかし、一方の橋本もまた前へ潜ろうとする意志が強いため、状況は進展せず。同じような問題が起きた。

柴崎と橋本の組み合わせは、どちらもボールに寄る傾向、あるいは前方へ行く意識が強い。はまる試合もあるかもしれないが、少なくともビルドアップが焦点となったパナマ戦では機能しなかった。

3バックのポジショニングは?

さて一方、ボランチだけが、前半のビルドアップに不協和音を奏でた要因かと言えば、そうではない。

橋本が1対1で身動きが取れなくなった一方、全体のかみ合わせの中で浮いていた選手もいた。それは3バックの左右、板倉滉と植田直通だ。真ん中の吉田麻也は常に1トップの9番ガブリエル・トーレスに見られていたが、左右の彼らはプレッシャーを受けていない。パナマの中盤はブロックを作って構えたため、両サイドはそれほど出て来ず、板倉と植田はフリーだった。

しかし、そこからの縦パスは相手によく引っかかった。パナマはその縦パスを引っ掛けるために、ブロックを作って待ち構えているので、距離の長い縦パスを刺そうと思っても、途中で引っかかるか、仮に通っても、受け手が強いプレッシャーを受けてしまう。

ちょっとバカ正直に、あるいは消極的にプレーしすぎたのではないか。まるで3バックの教科書を読むかのように、ワイドに横並びで開いてプレーしていたが、相手は1トップなのだから、吉田のサポートに常に2枚も控える必要はない。

たとえば植田が少し絞って、吉田と植田で1トップのトーレスに2対1を作った上で、板倉は逆サイドから内へ入り、ボランチの脇にポジションを取る。そうすれば、かみ合わせで苦しむ橋本に、数的優位をプレゼントできる。そこでボールを受け、1トップ・2シャドーへ縦パスを刺していく。後半に遠藤がやったように、だ。

純粋DFの植田にそれを望むのは難しいが、少なくともボランチ経験のある板倉にはチャレンジしてほしかった。比較するのは酷だが、冨安健洋が左DFで出場していれば、彼はボランチ脇まで持ち運ぶか、あるいは内に入って受けるプレーを見せたはず。

前半13分、30分には、フリーでボールを持った板倉が前方のスペースへ運ばず、バックパスを下げた場面で、「(板倉)滉! 運べるよ!」と森保監督の声が飛んだ。板倉は守備面で良かったが、ビルドアップが消極的だったのは残念だ。後半は少し改善されたものの、冨安だったらどうなっていたか、と思うシーンは何度もあった。

仮に相手が2トップなら、3バックがワイドに広がる配置は意味がある。2トップのプレスに対して1枚の優位を確保し、外からドリブルで持ち運ぶ場面は、いかにも想像しやすい。ところが、パナマは前線に1トップしか居なかったのだから、もっと状況に合わせたプレーを選択してほしい。パナマ目線で見れば、9番のトーレス1人で吉田も板倉も植田も、3人も釘付けにできて、大儲けだ。だから相手の中盤を動かせず、パスは引っかかり、プレーが窮屈になった。

遠藤航が変えたこと

前半にビルドアップが機能しなかった理由。それを一言で表現するなら、蛮勇なボランチの積極的すぎるポジショニングと、生真面目で消極的すぎる3バックのポジショニングが奏でた不協和音である。ボランチのラインは上下にびりびりと引き裂かれ、日本のビルドアップは分裂した。

そして後半、この分裂を、瞬間接着剤のようにくっつけるのが、遠藤の仕事だった。

センターサークルに立ち、真ん中を離れない。柴崎と共にトップ下の8番カラスキージャに2対1を作り、真ん中でパスを一度受けることで、相手MFを引きつけ、左右のハーフスペースへ縦パスを入れて行く。最後方の3バックから縦パスを入れるよりも、遥かに近い距離感で、テンポ良く。そのために味方は受けやすく、敵はインターセプトしづらい。分裂した日本の3バックと1トップ・2シャドーを、遠藤のシンプルなプレーがくっつけた。

相手のプレスのやり方を見て、それに合わせたポジショニングをする。森保監督が掲げる『対応力』を見せた遠藤。彼のパフォーマンスが際立つ試合だった。

そして、こうなると、柴崎を軸とするチーム作りにも疑問符が付く。『軸』とは何かを考えれば、当然ではないか。

柴崎も橋本も持ち味があるので、違う試合では良いコンビになるかもしれないが、この選手とは合う、この状況なら合うと、チョイスを限定しがちな選手を、『軸』と考えていいものか。

個人的には2018年に森保ジャパンの初戦を見たときから、今後は遠藤中心のチームになることを予測した。オールマイティな能力を持つ遠藤は、合わせる相棒を選ばない。何より戦術眼があるので、味方への指示を的確に出せる。柴崎+誰かではなく、遠藤+誰かで個性をプラスしていくように、今後は軸の交代もあり得るのではないか。

3バックの慣れ、不慣れでは片付けられない

最後に、パナマ戦前半のビルドアップ問題は、3バックの慣れ、不慣れで片付けないほうがいい。なぜなら、チームの目標に合致しないからだ。

森保ジャパンはシステムを使い分けること、目の前の状況に臨機応変に対応することを目指している。3バックだろうと、4バックだろうと、特に攻撃はボールを回しながら、いくらでも形を変えられる。たとえば前半は、窮屈になった橋本が下がって4バックに変形する場面もあった。(もっとも、変形して解き放たれた板倉と植田が特に何もしていないので、効果は得られていないが)

たとえば次の試合は4バックで挑み、やはりシステムのかみ合わせで相手に問題を突きつけられたとする。それに対応して3バックに変形したり、あるいはボランチの並びを変えたり…。

つまり、根本的にやることは変わらないのだ。

相手のプレスのやり方を見て、それに合わせたポジショニング、配置をするだけ。パナマ戦で出来なければ、4バックの試合でも出来ない。初期配置のパターンに慣れているだけで、相手に変化されたら詰むのは一緒だ。

次のメキシコ戦は4バックで行くかもしれない。だが、課題は同じ。相手を見てサッカーが出来るかどうか。その点に注目したい。

→森保ジャパンの戦術修正力を問うインタビューはこちら