【Jリーグ判定】9割のスポーツ記者が見誤った、”ハンド”

Jリーグで笛を吹く審判団(写真:松尾/アフロスポーツ)

23日に行われた、2018年第3回JFAレフェリーブリーフィングの模様をお伝えする。

Jリーグでは昨年より、クラブ側の申し出により、毎試合後にレフェリーの判定について意見交換を行い、競技規則の正しい理解と、チームへの素早いフィードバックを目指している。

今回Jリーグで判定の意見交換が行われたのは、公式戦80試合、101のシーンだった。そのうちレフェリーの判定が間違っていたのは、全体の約3割。ただし、これらの数字は、クラブ側が疑念を抱いて意見交換を望んだシーンが対象であり、そもそもここには含まれない正しい判定が、膨大にあることが前提だ。

そして意見交換の回数自体も、去年より減っているそうだ。

「判定の精度が上がったのかもしれませんし、一方ではこのような取り組みにより、クラブ側でも競技規則や、判定の難しさへの理解が進んでいるのかなと思います。意見交換の内容として多いのは、ハンドかどうか、ですね。前回までのトータルでは38.6%がハンドに関する意見交換。今は28%に減りました。ハンドに対する理解も、徐々に進んできていると考えられます」(JFA審判委員会副委員長・上川徹)

今回のブリーフィングの解説テーマは、以下の6つだった。参加した記者には、妥当な判定内容を、選択式で答えるクイズが実施されている。

●ハンドリング

●ペナルティーエリアの事象

●オフサイド

●決定機阻止

●ゲームマネージメント

●負傷者の対応

ハンドリングをどう見極めるか?

J2第10節金沢対大分、後半1分のシーン。ペナルティーエリア手前から金沢の杉浦恭平が打ったシュートが、大分DF刀根亮輔の腕に当たった。しかし、主審はPKの笛を吹かず。

記者陣の回答は、PKが9割、ノーファウルが1割だった。ノーファウルと答えた記者は、「手は自然な位置にあるので、PKを取られるのはかわいそう」と説明している。審判委員会副委員長の上川氏は、それに以下のように付け加えた。

「そうですね。手は自然な位置にあります。あとは意図的にボールを止めているのかどうかが、ポイントです。それを判断するときに、ボールとの距離、ボールのスピード、予測ができるのか、腕を避けることが可能なのか。それによって、利益を得ようとしているのか。ボールの方向に腕が動いているのか。そういったところが、判断の材料になります」

「距離は8mくらい。この距離が長いのか短いのかは難しいですが、11番はシュートをしていますね。シュートはスピードがあると考えます。そして、白(大分)の選手はどうしていますか? 手に当てないようにとリスクを考えながら、腕を後ろで組んで待っているのだと思います」

「左側にシュートを予測して動いて、速いボールが腕に当たっていると。後ろ向きの状態で、後ろに残っている手に当たったと考えると、そこに意図があると考えるのは厳しいのかなと思います。難しい判定ですが、実際のレフェリーもノーファウルにしています」

審判委員会の見解は、ノーファウル。DFの腕に当たっているが、ボールは背後に蹴られ、方向を予測するのは難しい。腕も身体から大きく広げられてはおらず、動いてもいない。ボールが腕に向かってきている。ノーファウルの判断は正しい、と結論付けた。

同じ結論だったのは、記者の1割。筆者も9割のほうだった。8メートルという微妙な距離、シュートの勢いがやや弱いことも踏まえると、DFの裏拳のような腕の出し方に意図を感じて、PK判定と回答した。だが、ノーファウルに納得しないわけではない。ハンドの見極めは、映像を見ても微妙で、難しい。

また、他の記者から「DFの腕の位置は不用意ではなかったのか?」という質問があったが、「競技規則上は、不用意というのはコンタクトがあるファウルが対象。ハンドの場合は不用意ということではなく、ボールが腕に当たったのか、腕をボールへ動かして当てたのか、という考え方で判定します」と上川氏は答えた。

次は、ルヴァンカップ第5節広島対G大阪、前半31分のシーン。シュートがG大阪DFオ・ジェソクの肘に当たったが、主審は笛を吹かず。記者の回答も、大半はノーファウルで判定を支持した。

「ボールは近い距離から蹴られ、スピードを伴っています。手先は上がっているのかもしれませんが、ボールが当たった肘は普通の位置だと考えます。大きく広げられてはおらず、ボールを避けるのは難しい。そう考えるとノーファウルの判断が正しいと言えます」

「どちらかと言えば、左側にシュートの方向を予測していると思います。この左腕が“あわよくば”という形で高く上げていて、そこにボールが当たったのなら、意図があると考えます。しかし、この右腕のほうは自然な動きであり、避ける時間もありませんでした」

次は、J1第12節湘南対柏、後半32分のシーン。湘南の高山薫がペナルティーエリア内でスライディングしたとき、ボールが腕に当たったが、主審はノーファウルで流した。

「緑(湘南)の選手の読みは、おそらく表側ですね。そして、身体が倒れるときに腕を地面に着くのは、必然だと考えます。その右腕にボールが当たっていますが、そこに(ハンドリングの)意図があるとは考えないですし、ボールの方向に腕を動かしたとも見ません」

「いつもシーズン前にルール講習会でクラブを回っていますが、ハンドの話をして、このシーンのように腕に当たったボールが味方競技者に転がったら、ハンドじゃないと。相手に行ったらハンドを取ってくださいよ、と言われることがあります。そういう考え方はどうなんですか? と。気持ちはわかりますが、我々は競技規則に沿って判定しなければいけない。このシーンは、腕に当たったボールが(柏側に)戻ってきたので、そんなに選手からアピールはなかったですが、そこで判断するのではなく、ボールが手に当たったのか、手でボールに当たったのか、という判断をしなくてはいけません」

次は、J1第13節鳥栖対清水の前半10分のシーン。クロスに対し、清水の河井陽介がスライディングしたが、腕に当たった。主審はハンドを取り、鳥栖にPKを与えている。

「(タックル姿勢の中で)この腕の位置は自然だと思います。高く上がっていれば、また話は違いますが。距離も近いですよね。PKを取られた側は、不満を持っていました。我々の見解はノーファウルです。主審はPKを取りました。これがいちばん難しい判定かなと思います」

「なぜ、PKを取ったのかと言うと、身体をボールが通過した後に、手に当たっているように見えている。ボールのコースがわかって、腕を残しながら止めた、と判断したので笛を吹いた、と。充分に理解はできますが、今まで話したように、ボールとの距離が近く、腕の位置が自然だったことを考えると、映像で見ると、これをハンドでPKを与えるのは厳しい。ノーファウルが妥当であると考えます。クラブ側にもそういうふうに返しました」

次は、ルヴァンカップ第6節浦和対広島、後半21分のシーン。シュートに対し、広島の森島司が腕に当ててしまい、主審は浦和にPKを与えた。

「これは今までの映像とは明らかに違います。距離は近いですが、腕をあれだけ高く上げてチャレンジする、と。これは“あわよくば”止めてやろう、利益を得ようという意図が、充分に考えられます。主審は笛を吹いてPKを与えましたが、正しい判定だったと思います」

ハンド(ハンドリング)の反則は、審判サイドでも見極めが難しい事象の一つと言われている。なにせ映像を見ても、9割の記者が審判委員会とは逆の結論に達してしまうのだから。

基本のきとして、手にボールが当たっても、すべてが反則ではない。手でボールを“扱う意図”が認められたとき、ハンドの判定となる。これは最低限、覚えておきたいところだ。