【判定検証】Jリーグで増えつつある乱暴、侮辱行為。子どもに見せたくない競技にならないように

主審のホイッスル(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

9月21日に『2017第5回JFAレフェリーブリーフィング』が行われ、直近のJリーグ等で起きた事象と、その判定について解説があった。

今回のテーマは大きく分けて3つだ。

●乱暴、侮辱的な行為

●ペナルティーエリア内の事象

●オフサイド

最近の試合で増えている事象として、今回は『乱暴、侮辱的な行為』が取り上げられた。JFA審判委員会の副委員長、上川徹氏はその背景を説明した。

「シーズン終盤を迎えて試合が激しくなるのは当然ですが、ここ何節か、プレー以外のところで退場に値する行為がいくつか見られます。クラブにも共有してもらい、みんなで共有して、我々レフェリーがそこに目を光らせていることを伝えたいと思います。熱くなるのはわかりますが、日本のサッカーをよりフェアで、価値あるものにするために、ぜひリスペクトして、やめてほしいと取り上げました」

侮辱的なジェスチャーに厳しく対応を

ひとつめのシーンは、J1第19節川崎フロンターレ対ジュビロ磐田、後半19分だ。スローインになった場面で、川崎のエウシーニョと磐田の川又堅碁の間で少し言い合いがあり、川又に対してエウシーニョが頭の横で、指をクルクルと回し、ジェスチャーを見せている。この事象について、上川氏は次のように説明した。

「このジェスチャーは認められるものではないですし、場合によっては侮辱的な行為として大きな問題になりかねないです。レフェリーは見ていましたが、そこに至る2人の関係を踏まえ、(エウシーニョに対しては)退場ではなく警告としました」

「ただし、挑発しているのであれば、20番(川又)には警告、このジェスチャーをした選手(エウシーニョ)には退場を示すのが適当であると、担当レフェリーには伝えました。試合の温度もありますが、このような行為を子どもたちが真似する危険性もあります」

「昔はレフェリーに対して、手で眼鏡を作り、“お前ちゃんと見てんのか”というジェスチャーもありましたが、そのようなことも認められません」

直接的に手を出していなくても、侮辱行為はレッドカードの対象となる。今までは、それほど厳しく取られていなかった試合もあるかもしれない。しかし、今後は違う。それはサッカーが、『子どもに見せたくない競技』にならないように、未来を守るためのレフェリングと言える。プレーする選手や監督はもちろん、メディア、サポーターも、この判定基準を共有してほしい。

乱暴行為による退場

次は侮辱ではなく、乱暴な行為が見られたシーン。J1第20節、柏レイソル対ヴィッセル神戸の後半22分だ。

神戸の田中英雄に対し、柏の手塚康平が後ろからスライディングタックルを仕掛け、その後に転倒した手塚に対し、田中が右足で蹴っている。上川氏は次のように説明した。

「実際の試合では、レフェリーは乱暴な行為で(田中を)退場にしています。反則をされたこと、それに対して、近くに倒れている選手を強く蹴ったのは明らかです。見ようによっては、(後ろからタックルした手塚が)アキレス腱を踏む行為はレッドカードかもしれませんが、イエローカードを示しました」

後ろから危険なタックルをされ、怒りを覚えるのは仕方ないが、それに対する報復行為はもちろん認められない。

また、今回のテーマからは外れるが、ルール上、もう一つ確認しておきたいのは、この場合にどちらのフリーキックで再開するのか、ということ。

「順番があります。重い罰はえんじ(神戸)側ですが、先にファウルをしたのは黄色(柏)側なので、えんじのボールでリスタートとなります」

柏の手塚にファウルがあった時点で、プレーは一旦切れる。そこから先に起きたことはアウトオブプレーだ。その間に乱暴な行為があり、神戸の田中は退場になったが、プレーの再開者は神戸のまま、変わらない。

乱暴行為により、退場とすべきだった場面

次も乱暴な行為が見られた場面だ。J1第21節、ヴィッセル神戸対鹿島アントラーズ、前半26分のシーンになる。

鹿島のレアンドロがすれ違う神戸の選手に対し、足を残して蹴り、反則を犯した。焦点はその後のシーンだ。神戸の藤田直之が遠くから走ってきて、レアンドロに対し、至近距離で強く抗議に行った。するとレアンドロは頭で藤田の顔を打ち、藤田は地面に倒れている。実際の試合ではレアンドロにイエローカードが示されたが、この事象について、上川氏は次のように説明した。

「すごく強い動きではないかもしれませんが、頭を使って、相手の顔を打ったこと。顔は危険な部分です。ボールのないところでそれをするのは認められないし、レッドカードが必要な場面と考えます」

「えんじ(神戸)の選手はどうでしょうか? この選手(藤田)も、寄って来なければこんなことは起きていません。要は挑発したと考えられます。イエローカードが適当です」

「実際のレフェリーは、白(鹿島)の最初のファウルがラフということで、警告を示し、その後の行為はどっちもどっち。えんじ(神戸)が寄って来なければいいし、どちらかと言えば、(神戸側が)大げさに倒れたと。その行為に注意のみとしました。ただし、それではサッカーを守れないし、明らかに顔を打っている」

上川氏はこのシーンについて、レアンドロは退場、藤田に警告が妥当であると結論付けた。その一方、レフェリーが両者の間に入り、この諍いを未然に防ぐチャンスはあったのか?

「(最初は藤田に)そこまでの勢いがなく、(近づいてから)急に温度が高くなったので、そこまでは感じられなかったと。ただし、ベンチ前は温度が高くなりやすいので、注意するようにと、我々もそういう研修をしています。14番(藤田)が近づくような行動は、防げたかもしれません」

乱暴行為に追加処分が課されたケース

最後のシーンはJ2第32節、アビスパ福岡対愛媛FC、後半アディショナルタイムだ。

左サイドからクロスが上がる直前、ファーサイド側で愛媛の深谷友基に対し、福岡のウェリントンが腕を振って顔面に当てた。深谷は2度目の打撃により、地面に倒れている。そしてクロスに対し、フリーになったウェリントンがヘディング。決定機だったが、シュートは枠を外れた。このシーンについて、上川氏は次のように説明する。

「相手の顔に強く腕が振られています。白の選手(深谷)は出血しました。青のチーム(福岡)はリードされた終盤ですが、冷静さを保ってプレーしてほしいと思います。最近、こういうプレーは多くなっています」

「残念ながら、これをレフェリーは確認できていません。難しいですよね。ボールがここ(サイド)にあり、その後にクロスを上げるのは予測できますが、なかなか(ファーサイドにまで)目が届かない。副審はラインを見なければいけません」

「第4審判、反対側の副審が見れる可能性はありますが、レフェリーの視野外で起きている事象です。Jリーグの規律委員会に図られ、青の選手(ウェリントン)は2試合の出場停止になりました」

現在のJリーグは、審判がその場面を見て、判定した内容については、それを最終とし、追加処分は課していない。ただし、この事象は、主審が見えていない場所、ボールとはまったく関わりのない場所で起きたため、規律委員会から処分が課されることになった。

これから10月、11月、12月と、Jリーグは最も熱く盛り上がる終盤戦を迎える。エキサイトする場面も、激昂する場面も増えるだろう。その感情の爆発は、サッカーの大きな魅力だ。

しかし、プロ選手がついやってしまう乱暴、暴言、侮辱的な行為は、子どもたちが真似をする。自分たちの様子は、常に見られているという自覚を忘れてはいけない。

サッカーが『子どもに見せたくない競技』にならないように。選手や監督はリスペクトされる存在でなければならない。結果にこだわるのはもちろんだが、サッカーに対して誠実に、正直に。そんな最高の試合を楽しみにしている。