押し入る厚かましさと、リズミカルな決断力。原口元気は “危険なドリブラー”

(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

ヘルタ・ベルリンの原口元気が、絶好調だ。

浦和レッズ時代から、シーズンの序盤は総じてコンディションが良く、体の切れを感じさせるプレーが多かった。12日に行われたブンデスリーガ第4節のシュトゥットガルト戦も、まさにそんな試合である。

左MFで先発し、迎えた前半14分。右サイドから侵入したミッチェル・ヴァイザーのパスを、ペナルティーエリア内で受けると、間髪入れず、右足でザクッと深く切り返す。そのままテンポ良く左足のシュートを流し込み、今季のブンデスリーガ初ゴールを挙げた。チームも2-1で勝利している。

原口の右足の切り返しに対し、相手GKは前へ飛び出し、シュートコースを狭めるアクションを取っていた。また、DFも遅れてシュートブロックに入ろうとしている。もしも、原口がコントロールにもたつき、ワンステップでも余計な手間をかけていれば、シュートはネットを揺らすことなく、阻まれたに違いない。しかし、流れるボールタッチ、決断力のあるプレーが相手の先手を取り、シュトゥットガルト守備陣の反応スピードを上回った。

近ごろの原口は、“ゴールして然るべきリズム”に乗っている。こういう選手が、もっとも危険だ。

3日に行われたワールドカップ2次予選、日本代表とカンボジアの試合は、日本が圧倒的に攻め込みながらも3-0に留まり、消化不良感を残した。思い返すと、この試合は、ゴールするべきリズムに乗ったプレーが、極めて少なかった。特に長谷部誠や山口蛍は、コースが空いてもミドルシュートを打とうとせず、さらに整えて、整えてと、手間をかける間に、逆にディフェンス側が体勢を整えて有利になってしまう場面が散見された。海外ならブーイングを受けてもおかしくない。

プレーが“きれい好き”すぎる。せっかく敵ゴール近くでボールを受けても、足元で2タッチも3タッチも手間をかければ、「ブロックしてください」と言っているのと同じだ。

サイドから折り返されたボールは、可能な限りワンタッチで打つべき。多少、体勢を崩してでも、早いリズムでダイナミックに打つ。その決断力が、相手DFからポジションを整える時間を奪う。

あるいは、それが不可能でトラップが必要になるシーンでも、ワールドクラスのストライカーならば、足元に何となく止めたりはしない。たとえばトーキックやアウトサイドキックを使って“ト・トン”と、リズム変化して打ったり、ファーストタッチでボールを動かしてDFを外すなど、何かしらの工夫を入れてシュートをねらう。しかし、きれい好きな日本代表の攻撃は、そうしたボックス内での“ダイナミズムと創造性”、どちらも見られなかった。

その後、8日のアフガニスタン戦でスタメンに抜てきされたのが、原口だった。カンボジア戦の展開に慣れたファンの目は、彼のプレーを、まるで異物のようにとらえたのではないか。

シュートチャンスこそ少なかったが、原口のドリブルは、常にゴールへの最短ルートを模索する。外へ逃げるのではなく、中へ押し入る。相手DFより半歩でも前へ出たら、グッと肩と腕を押し込み、追いかけてくる相手の“前”に割って入る。そうやって背中でコースブロックしてしまえば、相手は回り込むこともできず、ファールで止める以外に術がなくなる。

「FKやCKで点が取れないことは世界一。PKもなかった」と、カンボジア戦を自虐的に振り返ったハリルホジッチ。監督が再三にわたって求めたFKの獲得を、原口はアフガニスタン戦で何度も成し遂げたが、それは偶然ではない。嫌らしいところにコース取りをしているからこそ、相手がファールで止めるシーンが増えた。力強くシンプルに運ぶドリブルは、小手先でかわそう、かわそうとするドリブルよりも、かえって怖さがある。

原口といえば、小学生の頃に『バーモントカップ 全日本少年フットサル大会』で、江南南サッカー少年団の一員として、全国優勝を成し遂げたときのプレー動画が有名だ。そこでは原口少年の天才的な足技が光っていたが、しかし、大人のサッカーに進むにつれて、原口はよりシンプルに、時間をかけずに抜く方法を磨いた。大きなフェイントなしで、タイミングや緩急、コース取りだけで突破できるのなら、それがいちばん速くて効果的だ。

巧いドリブラーではなく、危険なドリブラー。

24歳の原口は、ボールの道筋ではなく、ゴールの道筋を立てる。