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本田圭佑、強さと賢さの両立が呼び込んだゴール

清水英斗サッカーライター

4日に行われたブラジルワールドカップ最終予選、日本代表対オーストラリア代表は1-1の引き分けに終わった。その結果、日本がブラジルワールドカップ本大会出場を決めている。

日本は81分の失点で一気に追い詰められたが、終了間際、右サイドのショートコーナーからボールを受け取った本田圭佑がクロスを蹴り、これが相手選手の手に当たって土壇場でPKを獲得した。

空中戦の強いオーストラリアに対しては、正直にポーンと放り込むよりも、ショートコーナーで揺さぶりをかけ、マークのずれを誘発してからクロスを入れる戦術が有効だ。なぜ、前半からやらなかったのか不思議なほどだ。しかも本田が蹴ったボールは、低めの軌道でニアサイドの香川真司をねらった。これも、空中戦に強いオーストラリアの長所を出させないための有効なボールだ。

この切羽詰まったシチュエーションで、本田は恐ろしいほどの冷静な判断力を見せた。

本田は少しも諦めていなかった。決して「神頼みのクロスが運を呼び込んだ」といった類のPK獲得ではない。理論的にもケチのつけようがない、素晴らしい状況判断だった。

たしかに、PKをど真ん中に蹴り込む胆力にも恐れ入った。それはみなさんも衝撃を受けたはずだ。しかし、あの場面はそれだけではなかった。

判断力と精神力。強さと賢さ。豪胆さとしなやかさ。頭とハート。それらが両立したPK獲得であったことは言っておかなければならない。

しかもそれを、誰も経験したことのないプレッシャーの中でやってのける。正直、「すごい」という感想よりも「こんな人間は考えられない」という気持ちのほうが先立った。脱帽だ。

サッカーライター

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。新著『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』。既刊は「サッカーDF&GK練習メニュー100」「居酒屋サッカー論」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材に出かけた際には現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが最大の楽しみとなっている。

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