議員年金復活は言語道断-地方議員のなり手不足対策にはロトクラシーも一考-

(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

二階俊博自民党幹事長が、議員年金の復活を検討するよう指示を出したという話が昨年末報道され、ネット界隈ではなかなかざわついております。

議員年金の復活検討 自民党 「特権」に世論反発も(北海道新聞 2020/12/31(木) 16:32配信)

どうやら本丸は国会議員の年金復活であり、その前哨戦、アドバルーン的にまず地方議員年金の復活を唱えているようです。今年は衆院選もあり、国会議員の選挙活動に地方議員には大いに活躍してもらいたい、そのための布石という裏心も透けて見えます。

それはさておき、廃止される前、「議員特権」と散々国民から批判された国会議員と地方議員の退職年金は、公的年金とは別枠の制度として設計されていて、「国会議員年金」は在職10年で年間412万円、「地方議員年金」(在職12年以上で受給資格)は都道府県議に平均194万円、市議平均103万円が退職後に支給されていました。

それに対して、国民年金は満額でも年額78万円(平均66万円)、厚生年金では男性平均199万円、女性平均124万円、40年以上保険料を払い込んでようやく貰えることとなっていますから、議員という上級国民の厚遇ぶりが際立ちます。

こうした議員特権への批判に加えて、地方議員年金は、(1)平成の市町村大合併の急速な進展に伴う議員数の予想を上回る激減、(2)行革による議員定数・議員報酬の削減、(3)積立金が、市町村では2011年度、都道府県では2022年度に枯渇する見込みなどであったことから、2011年をもって廃止されるに至りました。

しかし、議員年金の復活は、度々話題に上っています。前回検討された2018年では、当時の竹下亘総務会長が「若い議員は辞めたら生活保護だ。ホームレスになった人もいると聞く」と発言したことから、地方議員の年金を復活させる法案を国会に提出する動きが進んだものの、世論からの強い批判を受け、結局提出は見送られています。

こうした議員年金の復活は、統一地方選挙や、衆参国政選挙が近づくと検討される傾向にあります。

なぜ、議員年金の復活に力を注ぐかと言えば、もちろん、自分たちの老後の保障という面もありますが、それ以外の理由もあります。

よく地方議員年金の復活の理由として挙げられるのが、地方選挙での投票率の著しい低下ですとか、無投票当選の増加や定員割れなど地方議員のなり手不足などです。しかし、投票率の低下も無投票当選も議員年金の廃止以前からずっと続ている現象ですから、地方議員年金を復活させたからと言って、地方議会議員という仕事の魅力が増し、志願者が急増するわけではありません。

また、議員引退後の生活保障が薄い点についても、復活をもくろむ勢力からは指摘されますが、国民年金では生活できないというのであれば、国民年金の抜本的な改正こそを提案すべきでしょう。そもそも、国民年金で暮らしている(暮らさざるを得ない)人々も多数いらっしゃるわけですから、そういう方々を救済する道を示さずに、(2018年の検討で示されたように)自分たちだけ、都道府県に雇われているという体裁を強弁してまでも厚生年金に入って老後の生活を安泰なものにしたいとは、特権意識以外の何物でもないでしょう。

議員は、都道府県に雇用されるのではなく、国民、住民から貴重な一票の負託を受けて国民、住民のためにこそ働くべき存在ですから、厚生年金への加入は無理筋と言わざるを得ません。

そもそも、国民年金で不十分であるのならば、国民年金基金などに入ればよいだけです。

また、2011年に地方議員年金は廃止されていますが、それで税負担は消えてなくなったわけではないことに注意が必要です。つまり、地方議会議員年金制度は廃止されたわけですが、元議員等の既存支給者への給付はこの先約50年も続き、税金での負担累計総額は、約1兆1,400億円という巨額な負担となるものと総務省は試算しています。もちろん、その原資はすべてわたしたちの税金なのです。

もし、議員年金が復活すれば、この巨額な負担に更なる追加負担がわたしたちの肩に重くのしかかることになります。

そもそも、地方議員のなり手が不足しているのなら、地方議員の魅力を増し、新規参入を増やすためにハードルを低くする努力をまず議会側で示すべきではないでしょうか?

地方議会は、本来、多様な層の意見を反映させるべきなのですから、会社員や専業主婦(夫)等が地方議員を兼ねやすい環境を整えるのが筋というものでしょう。

そのためには、地方議会の開催を平日夜や週末にするということも考えられます。企業に対して、従業員に長期休職制度を設け、地方議員を志し、もし落選しても、あるいは議員引退後も、戻れるポストを確保しておくことをお願いする。育児中の主婦(夫)のために託児所を設置する、極端かもしれませんが、地方議員の被選挙権を15歳からにするなどいくらでも工夫の余地があるはずです。

また、さらにいっそう大胆な改革案としては、いっそのこと選挙による議員選出にかえて、くじ引きによって議員を選出する「ロトクラシー」の導入も、特に、人口規模の小さな自治体では有効だろうと考えます。

この場合、議員には日当と必要経費を支給すればよいので、歳出削減にもつながりますし、そもそも年金の心配もいりません。

そうした知恵を出すの一切放棄して、議員年金復活に解を求めるのは、やや思慮不足と言わざるを得ないと思いますが、いかがでしょうか?

わたしたちには、重い税や社会保障負担を押し付ける割には、自分たちは特権意識丸出しで、給付を無心する議員年金の復活は言語道断と言わざるを得ません。