増え続けるコロナ関連自殺。コロナ対策、経済対策、どちらも大事だ。

(写真:アフロ)

自殺者数は、実質的なロックダウン中は、昨年と同じ月の自殺者数を大きく下回っていましたが、7月以降、足元で急増し、2019年の同時期までの累積自殺者数は17059人、2020年では17219人と前年を上回るに至りました。

図1 自殺者数の推移((出典)警察庁「自殺統計」により筆者作成)
図1 自殺者数の推移((出典)警察庁「自殺統計」により筆者作成)

こうした自殺者の増加の原因としては、新型コロナ対策による直接的・間接的影響が挙げられることも多いです。

しかし、急増した自殺者がすべて新型コロナの影響と考えるのは正しくはありません。このことを図2を用いて説明してみます。

図2 自殺者数の分解(模式図)((出典)筆者作成)
図2 自殺者数の分解(模式図)((出典)筆者作成)

わたしたちが今現在目撃している自殺者の急増は図2によれば、(0)2019年の自殺者数と(1)2020年の自殺者数とを比べて理解していることになります。しかし、(1)2020年の自殺者数には、元々コロナがなくても2019年から景気が後退することで雇用情勢が悪化する結果命を絶つ人(雇用情勢の悪化と自殺は残念ながら密接な関係があります)((3)景気悪化などによって2019年から増加する自殺者数)が含まれていますから、新型コロナの影響による自殺者数を把握するには、実際の自殺者数の動き((1)2020年の自殺者数)からこの部分((3)景気悪化などによって2019年から増加する自殺者数)を控除しなければならないのです。それが、図2では(4)コロナ関連自殺者数と呼んでいる部分です。

本記事では、こうした現状の自殺者数急増の動き((1)2020年の自殺者数)を、(2)コロナがなかった場合の2020年の自殺者数と(4)コロナ関連自殺者数とに分解し、さらに、(4)コロナ関連自殺者数を、新型コロナ対策によって経済活動が政策的に抑制された結果、失業などにより経済的に困窮することで、直接自らの命を絶った自殺者(直接的自殺)と、職を失うなどした者によって物理的精神的な暴力を振るわれるなどして、家族内の他者(多くは男性配偶者)から死に追いやられた自殺者(多くは女性配偶者)(間接的自殺)とに分けて、明らかにしてみたいと思います。

もちろん、政府の統計では、こうした区分けはされていないため、大胆な仮定を置いて推計せざるを得ません。

具体的には、直接的自殺の場合は、自殺と失業率の間に安定的な関係がある(失業率が1ポイント悪化すれば、自殺者が月に400人弱増加する)ことと、新型コロナ対策がなかりせば実現していたであろう失業率と現実の失業率の差を利用して推計しました。次に、間接的な自殺の場合は、実際の自殺者と直接的自殺者の差分に、DV相談件数等を考慮して推計しました。なお、直接的自殺を推計するのに用いる失業率が9月までの数値しか公表されていないため、9月までの数値となっていることに留意してください。

以上の推計結果が図3となります。

図3 コロナ関連自殺者数の月別推移(累積、人)((出典)筆者作成)
図3 コロナ関連自殺者数の月別推移(累積、人)((出典)筆者作成)

図3によれば、直接的自殺は中国で新型コロナが発生し例年より中国人観光客が減少し始めた1月にはすでに発生していて、実質的なロックダウンによる経済の大きな落ち込みを経て9月時点では1204人となっています。一方、間接的自殺は直接的自殺より遅れて、つまり失業率が次第に上昇し始めると増加し、7月以降急増していることが確認できます。これは残念ながら足元で女性や子供の自殺者が増えているのと整合的といえます。

図4は、新型コロナによる死亡者数とコロナ関連自殺者数の月別推移です。

図4 新型コロナによる死亡者数とコロナ関連自殺者数の推移(人)((出典)筆者作成)
図4 新型コロナによる死亡者数とコロナ関連自殺者数の推移(人)((出典)筆者作成)

図4からは、新型コロナによって失われてしまった命、その対策によって失われてしまった命、どちらも大切な命であることには何ら違いはありません。

新型コロナ対策によって守られる命があることは確かです。しかし、一方で、経済を政策的に(人為的に)ストップさせることは、本来、失われる必要がなかった命を死に追いやる側面もあることは絶対に忘れてはいけません。

コロナの蔓延により医療崩壊が起きれば「助けられる命が助けられなくなる」可能性もある一方で、コロナを恐れすぎるあまり経済をオーバーキルしてしまえばやはり「助けられる命が助けられなくなる」わけです。

移動や飲食(GoToキャンペーン)が感染を広めるとか広めないとかというよりも、感染を広めてしまう(不注意な)移動や飲食があることは常に忘れないでいたいと思います。

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