民泊の経済効果が新たに算入されるGDP-2015年基準改定の名目GDPへの影響-

(写真:Panther Media/アフロイメージマート)

今月16日に内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部から今年7-9月期の経済成長率(国内総生産の変化率)が公表され、物価変動を差し引いた実質で前期比+5.0%増と4四半期ぶりにプラスと、4-6月期の▼8.2%減から回復したものの、戻りが小さいことが明らかになりました。

ところで、国内総生産(GDP)は、国際連合が提示する「System of National Accounts(通称SNA)」という会計ルールにしたがって様々なデータを用いて推計することによって、日本国内では、内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部が『国民経済計算』として毎年度作成し公表しています。

今回実施される国民経済計算の基準改定とは、国民経済計算は、他の基幹的統計(1次統計)を利用して推計される2次統計なのですが、その基幹的統計の中でも、ソシャゲで言えばURランクの重要統計である総務省統計局「産業連関表」及び「国勢調査」などの公表にあわせて5年に1度行われる国民経済計算のリニューアル作業を言います。このリニューアル作業はGDPをより実態に近づけるため必要不可欠な作業なのです。

そして、2015年基準改定は今年の12月を予定しているのですが、昨日(11月18日)、その関係資料「国民経済計算の2015年(平成27年) 基準改定に向けて」(2020年11月18日内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部)が公表されました。

[GDP基準改定で基準年の名目GDP6.7兆円上振れ=内閣府(2020年11月18日 ロイター) https://jp.reuters.com/article/japan-gdp-criteria-idJPKBN27Y0OG]

上の報道では、「上振れ」とありますので、安倍政権下でSNA変更と基準改定が同時に行われた前回同様、菅政権によるGDP統計の改竄とか偽装とか陰謀論を吹聴する方々がまたぞろ出てこないとも限りませんが、これは改竄でも偽装でも何でもなく、先に申し上げた通り、しっかりしたルールに則った手続きであることを強調しておきたいと思います。

では、今回、どのような変更が行われるのでしょうか?

先の資料を見ると、主に、以下の3点で変更があるようです。

(1)「産業連関表(2015年)」、「国勢調査(2015年)」、「住宅・土地統計(2018年)」の反映によるベンチマークの変更

(2)2008SNAへの対応

(3)経済活動の適切な把握に向けた推計方法の改善

つまり、(1)は最新の基幹的統計に合わせた本来の意味での基準改定、(2)は新しいSNAルールへの対応、(3)は経済の実態をよりよく捕捉するための変更、と区分できるかと思います。

そして、それぞれの変更等に伴う基準年(2015年)の名目GDPへの影響は、合計+6.7兆円旧基準から上方改訂されるということになるのです。

表 2015年基準改定による2015年の名目GDPへの影響(内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部資料により筆者作成)
表 2015年基準改定による2015年の名目GDPへの影響(内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部資料により筆者作成)

もちろん、この影響は、金額(水準)への影響に過ぎませんから、金額の変化率である経済成長率に、プラス・マイナスどちらの影響が及ぶかは定かではないことには留意してください。

ちなみに、上表の最下段にある「住宅宿泊事業」にはいわゆる民泊が含まれますが、GDPへの影響がほとんどないことが分かります。ただし、これは2015年の数値であり、民泊が日本で本格化したのは2018年以降であると考えられるので、仕方がないこととも言えます。

(参考)

シェアリングエコノミーのGDP算入は内閣府による安倍政権への忖度なのか?(2018年8月16日)