コロナ禍で増える隠れ失業者

(写真:アフロ)

今月2日公表された総務省統計局「労働力調査」によれば、8月の完全失業率(季節調整値)は、7月の2.9%から0.1ポイント上昇し、2017年5月の3.1%以来、3年3カ月ぶりに、3.0%と3%台に乗りました。完全失業者は、206万人と200万人を超えました。

2018年10月の景気後退期入り以来、消費税引き上げの影響もあって、完全失業率は2019年12月を底として上昇基調にはありましたが、それでも、最近までは、人手不足を背景として、完全失業率は2%台の低水準で推移していました(失業率は、リアルの景気から一歩遅れて進む遅行指標なので、少し遅れて悪化したのです)。

足元では、新型コロナの感染拡大に伴う政策的な経済圧殺によって、完全失業率の悪化のペースが加速した形になっています。

完全失業率の推移(総務省統計局「労働力調査」により筆者作成)
完全失業率の推移(総務省統計局「労働力調査」により筆者作成)

しかし、実は、完全失業率(完全失業者)は、今回のような大きな経済危機に際しては、実態を表しているとは言い難いのが現状です。

わたしたちが、新聞やTVなどで普段目にする失業者数は完全失業者の数字で、総務省統計局によればその定義は下記のとおりです(完全失業率は労働力人口に占める完全失業者の割合)。

完全失業者 : 次の3つの条件を満たす者

1.仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった(就業者ではない。)。

2.仕事があればすぐ就くことができる。

3.調査週間中に,仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む。)。

出典:労働力調査 用語の解説(統計局ホームページ)

この定義の中の「調査期間中」というのが、実は日本の場合「1週間以内」とされているのですが、国際標準である国際労働機関(ILO)の定義に基づくならば「1カ月以内」と対象がグッと広がることになるのです。

このようなより国際標準に近い基準で、失業の実態をとらえようとする試みが2018年1月から開始され、総務省統計局から「労働力調査(詳細集計)」の中で未活用労働指標として公表されているのです。

未活用労働者とは、「(1)追加就労希望就業者(就業時間が週35時間未満で、さらに働きたい就業者)」、「(2)拡大版失業者(1カ月以内に求職活動を行った失業者)」、「(3)潜在労働力人口=(3a)拡張求職者(仕事を探してますが、すぐには働くことができない者)+(3b)就業可能非求職者(働きたいけれど職探しをあきらめた者)」からなります。

つまり、未活用労働者とは、働きたくても働けない状態にある方、言い換えれば、隠れ失業者と呼べるかと思います。

例えば、景気が悪くなってシフトを減らされた場合、収入を維持しようと思えば、別のパートなりアルバイトを探さなければならなくなりますが、そうした場合が(1)追加就労希望就業者です。しかし、景気が悪いのでなかなか追加の仕事は見つからないでしょう。あるいは、景気が悪化したため、自分のスキルと見比べて見劣りする賃金しか貰えない仕事しかなければ、もしくはそもそも自分の業界において仕事自体がなくなれば職探しをあきらめてしまう場合もありますが、そうした場合が(3b)就業可能非求職者です。

なお、未活用労働指標の詳細については、総務省統計局「未活用労働指標の解説」をご覧頂ければと思います。

では、隠れ失業の状態にある方は、どれだけいらっしゃるのでしょうか?

総務省統計局「労働力調査(詳細集計)」によれば、単月の完全失業率の数字より公表がやや遅れるのですが(詳細なデータですから仕方ありません)、コロナ禍の真っただ中にあった4~6月期には、追加就労希望就業者267万人、拡大版失業者20万人、潜在労働力人口52万人(拡張求職者6万人、就業可能非求職者46万人)の合計339万人いました。

したがいまして、コロナ禍による経済活動の停滞で、完全失業者(194万人)を大きく上回る339万人が隠れ失業者となっていることが分かります。

未活用労働者の推移(総務省統計局「労働力調査(詳細推計)」により筆者作成)
未活用労働者の推移(総務省統計局「労働力調査(詳細推計)」により筆者作成)

しかも、新型コロナ対策で経済が政策的にストップさせられてしまった2020年1~3月期以降、急激に、隠れ失業者が増えているのも確認できます。

未活用労働者の増減(総務省統計局「労働力調査(詳細推計)」により筆者作成)
未活用労働者の増減(総務省統計局「労働力調査(詳細推計)」により筆者作成)

このように、国際標準よりは厳しめに測られている従来の完全失業者194万人では、コロナ禍で苦しむ方が過少推計されている可能性が高いのでして、より実態に近い、国際標準での隠れ失業者339万人も含めれば、533万人にも及ぶのです。

しかも、失業はリアルの景気に一歩遅れて動く遅行指標である旨を冒頭で記しましたように、今後は、隠れ失業がもっと増えることになるのですから、完全失業者に加えて隠れ失業も踏まえた政策の実行が求められていると思います。

個人的には、このような隠れた弱者にやさしい政治であってほしいと思います。