消費の低迷は消費増税が原因ではない

(写真:アフロ)

今回のポイント

  1. バブル崩壊以降の消費の委縮効果は2001年頃に終了
  2. 現実の消費は、消費税引き上げにもかかわらず強い基調で推移してきた
  3. 現在の消費の低迷は、景気後退がもたらした
  4. 2019年10月の消費税引き上げは、景気後退期に消費が低迷する中で断行された
  5. 2019年10月の消費増税は新型コロナ対策の実質的なロックダウンと相まって、消費の低迷を深刻化させた

最近、消費税は消費への罰則なのだと頻繁に指摘されるようになりました。

図を見ると、確かに、消費税を引き上げる度に、消費(家計最終消費支出(除く持ち家の帰属家賃)、実質季節調整系列)が低下しているように見えます。

図1 消費トレンド下方屈折((出典)内閣府経済社会総合研究所『国民経済計算』をもとに筆者作成)
図1 消費トレンド下方屈折((出典)内閣府経済社会総合研究所『国民経済計算』をもとに筆者作成)

しかし、これは単に消費の動きを見ているだけに過ぎず、他の要因で消費が減っているのかもしれません。経済学者が良く言う「他の要因をコントロール」しなければ、消費税と消費の本当の関係は分からないのです。

消費に影響を与える要因は消費税もそうですが他にもいくつかあり、一番重要なのは所得であると考えられています。わたしたちは、恒常的に財布の中身が増えれば自然と使うお金も増えてきますし、今後は所得が減っていくと思えば財布の紐をひもをきつくしたり、消費行動の見直しを迫られたりするでしょう。

消費税を引き上げたとしても、今後も所得がグングンと伸びそうだと思えば、消費を減らさないでしょうし、逆に、消費税を引き下げたとしても、将来的に所得がつるべ落とし的に減りそうだと思えば、消費を増やさないでしょう。このように消費は(所得の)将来をどう予想するかにも依存していると言えます。景気がよい時には、いつも以上にお金を使うでしょうし、景気が悪い時には、もしもの時に備えて、いつもよりも使うお金の金額を減らすでしょう。

つまり、消費の動きを検証したり予測したりしたければ、消費の動きは所得との対比で見ていく必要があるのです。

まとめれば、消費の動き(消費が強いか弱いか)は、これまでの所得と消費の関係性から推定される消費(ここでは理論値と呼ぶことにします)と現実の消費(ここでは現実値と呼ぶことにします)の動きを比較することで明らかになるのです。繰り返しになりますが、消費の動きだけを見ていても、なぜ消費が変動しているのかは分からないのです。

下図は、現実値(現実の消費)と理論値(これまでの所得と消費の関係性から推定される消費)の推移を比較したものです。

図2 現実の消費と所得と整合的な消費の推移((出典)筆者作成)
図2 現実の消費と所得と整合的な消費の推移((出典)筆者作成)

この図からは、次のことが分かります。

バブル崩壊以降2001年頃まで、現実値が理論値を下回っていました。つまり、小泉内閣が登場する頃までは、まさかの時に備えて普段よりも所得を消費に回さずに貯金していた家計が多かったと言えます。逆に言えば、バブル崩壊以降の消費の委縮効果はこの頃をもって終わったとも言えます。

2002年から最近までほぼ一貫して現実値が理論値を上回って推移していました。つまり、現実の消費は、消費税引き上げにもかかわらず強い基調で推移してきたのです。消費の動きを単純にプロットしただけのグラフからは、消費税引き上げによって消費が低迷したように見えますが、実は、そうした直感とは違って、消費は所得との対比で見れば、順調に推移してきたと言えます。

ただし、アベノミクス後半(だいたい2016年下期)には基調に変化の兆しが見え始め、2018年上期以降は、理論値が現実値を恒常的に上回る状況になりました。つまり、2014年4月の消費税引き上げから4年経過した2018年上期以降から、突然、みんな財布の紐をきつくし始めたのです。

もちろん、元々は2015年10月に10%への引き上げが予定されていたのを、2014年11月に「2015年10月の税率10%への引き上げを2017年4月に1年半延期」、さらに、2016年6月に「2017年4月の税率引き上げを2019年10月に2年半延期」して、2019年10月に税率10%に引き上げる方針が最終的に確定したのは2018年10月ですから、アナウンスメント効果が働いたようにも思えません。しかも、消費の基調が変化しと言っても、2016年下期から2017年いっぱいまでは、ほぼ理論値通りに推移していたので、消費は強くも弱くもないニュートラルな状態だったと言えます。

2019年10月の消費税引き上げは、消費が(理論値よりも)低迷を続ける中で断行された。また、所得水準から得られる消費水準(理論値)よりも反動減の影響が大きい。

したがって、消費の基調を考える上でのポイントは、消費増税が消費を弱めたのではなく、アベノミクス後半に、突然、それまで好調だった消費が突然変調をきたしたことにこそあるのです。

アベノミクス後半は、株価の伸びの停滞はありましたが、株価水準が大きく下落したわけでもなく、また、雇用や所得環境にはそれまでと大きな変化もなかったわけですから、所得との対比で見て安定的に推移してきた消費が突然なぜ変調したのか、大きな謎のようにも見えますが、実は、2018年のこの時期は、景気の転換点にあたります。

2018年と言えば、米中貿易摩擦などの影響により中国経済が失速し始めた年です。その結果、日本の輸出減少を通じて、日本の景気も失速し始めたので、国民が家計の防衛を意識したことが消費を低迷させたと言えるでしょう。

つまり、現在の消費の低迷は、景気後退期における通常の現象であり、再度の消費増税がきっかけというよりも、再度の消費増税は新型コロナ対策の実質的なロックダウンと相まって、消費の低迷を深刻化させたのです。

消費税引き上げは常に困難な選択ですが、今回は景気後退期に引き上げたのと、新型コロナショックが襲ったのとで、深刻化してしまいました。またまたわたしたちの消費税嫌いが加速しそうです。

最後に、蛇足ながら、新型コロナ対策での実質的な経済的ロックダウンが消費に与えた影響は、所得水準と整合的な消費水準よりも過大すぎる下落を示しており、新型コロナによる将来不安が大きく国民に影響を与えたことがうかがい知れます。