3%のインフレを我慢すれば一世帯15万円のベーシックインカムが実現できる

(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

税や社会保障による再分配制度が目詰まりを起こす中、ベーシックインカムが注目を集めています。

ただし、ベーシックインカムを実現するうえでネックとなっているのは、財源をいかにして確保するかです。増税によって捻出すれば、ベーシックインカムの意義が薄れてしまいますし、社会保障を再編することで実現すれば、個人で私的保険に加入しなければならなくなったりして、やはりその意義は薄れます。

そこで、本記事では、政府がベーシックインカムを配るのに必要な金額と同額だけ国債を発行し、しかもその国債を日銀に引き受けさせることで財源問題をクリアする仮想的な状況を考えてみます。

なお、ここで、仮想的と申しますのは、皆さまご承知の通り、財政法第5条で、日銀による国債の直接引き受けは原則禁止とされているからです。

では、なぜ、日銀による国債の直接引き受けは原則禁止なのでしょうか?

その理由として、日銀は、以下のように主張しています。

これは、中央銀行がいったん国債の引受けによって政府への資金供与を始めると、その国の政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがあるからです。

出典:教えて!にちぎん(「Q 日本銀行が国債の引受けを行わないのはなぜですか?」)

悪性のインフレーションが問題だとすれば、日銀による国債の直接引き受けが悪性のインフレーションを引き起こす恐れがない限り、日銀引き受けが認められる可能性があるのです。

こうした点を踏まえたうえで、ベーシックインカムの財源を、国債の日銀引き受けによって捻出するものとしたうえで、ベーシックインカムの給付金額とインフレ率との関係を試算してみたいと思います。

結果は、下図の通りとなりました。

図 ベーシックインカムの給付金額とインフレ率との関係(出典)筆者作成
図 ベーシックインカムの給付金額とインフレ率との関係(出典)筆者作成

つまり、給付金額が今回のコロナ対策の特別定額給付金と同じ、全国民一人当たり10万円を、今後も毎年配り続けた場合、インフレ率は長期的に5%となります。20万円の場合は、7.4%です。1980年以降の先進国のインフレ率の平均は2%ですので、5%や7.4%は、悪性のインフレーションに区分されるかもしれません。

先進国のインフレ率の平均値である2%に抑えたければ、ベーシックインカムは、全国民一人当たり年額で2万円ほどと、今度は給付金額が物足りなくなります。

そこで、悪性のインフレをもたらさず、給付金額もそれなりにしたいと思えば、全国民一人当たり5万円のベーシックインカムを、毎年配り続けるとした場合には、インフレ率は3.3%にとどまることが分かります。

逆に言えば、毎年、3%程度のインフレを甘受できれば、国民一人当たり5万円(一世帯当たり15万円弱(平均世帯(単独世帯を除く)では5万円×2.95人=14.75万円/年))のベーシックインカムの給付額を実現できることになるのです。

最後に蛇足ながら、以上の試算は、2000年から現在に至るまでのインフレ率とマネーストックやその他の経済変数の関係が今後も維持されるとの仮定の上での結論であることに留意してください。