「観光産業」を守るにはGo To トラベルキャンペーンがベターな理由

(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

新型コロナの影響で、内外の人の往来が途絶えたため、観光産業は壊滅的な被害を被ったと言われています。そして、その観光産業を助ける目的で、政府が敢えて前倒ししてまで明日22日から実施されるGo To トラベルキャンペーンは頗る不評です。

Go To トラベルキャンペーンに対しては、様々な批判があり、その多くには説得力があります。なかでも、新型コロナが収束しない今、コロナを拡散させる政策を敢えて進めるのではなく、観光産業に直接補助すべきとの批判には賛同する方も多いでしょう。

しかし、日本の産業分類は、国際連合統計部による“International Standard Industrial Classification of All Economic Activities (ISIC) ”に基づき、総務省が『日本標準産業分類』として公表しています。実は、この産業分類には「観光産業」は存在しません。「観光産業」が存在しなければ「観光産業」への直接補助も難しくなります。

そうは言っても、観光立国が国是となっている現在の日本にあって、「観光産業」に関する統計が、観光客数のほかに存在しないのでは、なにかと不都合です。

そこで、観光を所管する観光庁では、世界観光機関による国際基準(TSA)に基づきサテライト勘定を作成して、「観光産業」の経済規模等を明らかにしています。

このサテライト勘定を見ると、「観光産業」は運輸業(バス、鉄道、タクシー、飛行機)や宿泊業(旅館、ホテル)にとどまらず、農業、製造業、サービス業(スポーツ、観劇)、飲食業、小売業等様々な「産業」を横断・包摂した複合産業であることが分かります。そしてその経済規模(旅行消費額)は2019年では27.9兆円(国内旅行21.9兆円)、GDPの5%(同4%)となっています。

このように、「観光産業」は、従来の様々な「産業」を横断・包摂した複合産業であるがゆえに、地域経済にとっては、その浮沈は死活問題であり、政府がスケジュールを敢えて前倒ししてまで、Go To トラベルキャンペーンを進める理由の一端があります。

表 地域別国内旅行消費額((出典)観光庁、内閣府資料により筆者作成)
表 地域別国内旅行消費額((出典)観光庁、内閣府資料により筆者作成)

さらに、「観光産業」に直接補助することは、「観光産業」の「産業」としての広がりを勘案すると、結局、再度持続化給付金を支給するのと同じことになるのです。

しかも、「観光産業」に分類される業種は、観光に従事する割合から考えると、関与の度合いが違いすぎるため、一律の支給額では不公平が生じてしまいます。例えば、鉄道業は旅行客を運ぶほかに、通勤客や学生も運んでいます。したがって、鉄道業の損害をそっくりそのまま観光産業での損害として算入するのは無理があります。

ですから、政府は、「観光産業」への直接補助は諦め、Go To トラベルキャンペーンとして、観光客を地方に誘導することで、「観光産業」へのテコ入れを図ったと理解することができるのです。

逆に言えば、「観光産業」という産業の実態把握が著しく困難である以上、Go To トラベルキャンペーン以外の方法で「観光産業」を守るのならば、企業を守る持続化給付金か、国民を守る特別給付金をを再度支給するしかないのです。

しかし、再度の持続化給付金にしても、再度の特別給付金にしても、既に160兆円(財政赤字90兆円)にも達した政府財政(もしくは若者や将来世代)にさらなる重い負担がのしかかることになります。

そういう点でも、実施までのドタバタ劇で、せっかくの「観光産業」救済策であるGo To トラベルキャンペーンが批判一色になってしまい、また、「夜の街」に感染拡大の責任を押し付けていたら、市中感染が拡大してしまった東京都を除外したことで、官邸対東京都知事という本筋から離れた、しかしマスコミ的には美味しい構図ばかりがクローズアップされてしまい、Go To トラベルキャンペーンが本来持つ意義が脇に追いやられてしまったのは残念としか言いようがありません。

なお、Go To トラベルキャンペーンはいま実施すべきではないとの批判もあります。しかし、いつ収束するか皆目見当もつかない新型コロナウィルスですから、数ヶ月先なら開始できるという保証も一切ありません。

新型コロナウィルスの収束を待っていたら、27.9兆円の経済規模を持つ産業横断的な「観光産業」が壊滅してしまったとなれば、地方経済への打撃の大きさは計り知れません。

私たちは、4月、5月の実質的なロックダウンの経験から、コロナ対策をした上で経済を回す道を選んだ訳ですから、個人的には好きな言葉ではありませんが、with コロナの時代に相応しいGo To トラベルキャンペーンなり観光振興策なりを考え、実施する必要があるのではないでしょうか?