新型コロナショック対策などでの国債発行額を試算してみた

(写真:アフロ)

報道によりますと、公明党の山口那津男代表は、安倍総理に対し「所得制限なしで国民1人当たり現金10万円の給付を実現するよう要請した」ところ、安倍総理も前向きに検討するとお答えになったようです。

安倍首相、所得制限なしで10万円給付検討 山口公明代表の要請に―新型コロナ(時事通信 2020年04月15日12時59分)

さらに、IMF(国際通貨基金)の推計によれば、世界経済は世界恐慌以来最悪の景気後退を示し、2020年の世界の経済成長率は▼3.0%のマイナス成長になり、日本の経済成長率も2009年のリーマンショック時の▼5.4%に次ぐ▼5.2%にまで落ち込むと見込まれています。

今年の世界成長、マイナス3% 「大恐慌以来の不況」―IMF予測(時事通信 2020年04月14日21時53分)

今般のような未曽有の経済危機かつ個人や企業の自由な活動を制限する場合には、当然、政府が責任をもって財政支援を行うことになるのが、J.M.ケインズ登場以降の世界の潮流ではありますが、その財源は国債発行に頼らざるを得ません。

日本は財政法を無視してすでに(実質的には40年以上にわたって)新規国債(特に赤字国債)を毎年度発行し続けていますので、追加的な新規国債発行額の規模いかんによっては、日銀がこれまで以上に国債を大量に購入すれば話は別ですが、国債消化に支障をきたす懸念があります。

そこで、(1)日本経済の落ち込みによる税収の低迷、(2)令和2年度第一次補正予算(案)、(3)国民一律10万円現金給付によって、当初予算の見込みより新規国債発行額がどの程度増えるのか試算してみたいと思います。

(1)日本経済の落ち込みによる税収の低迷

ここではリーマンショック時の経験を参考にしてみたいと思います。平成21年度当初予算では、名目経済成長率0.1%、税収46.1兆円でしたが、実績値では名目経済成長率▼2.4%、税収37.7兆円(決算額)となりましたので、危機時の一種の税収弾性値は7.3となります。

次に、2020年度(令和2年度)の名目経済成長率の落ち込みを、政府経済見通し+2.1%からエコノミストの予測平均値▼2.4%((出典) 公益社団法人日本経済研究センター「ESPフォーキャスト調査」(2020/4/10))を用いて、税収の落ち込みを試算すると、▼33.1%の減少となります。

そこで、令和2年度(2020年度)当初予算の税収見込み値63.5兆円にさきほどの税収落ち込み▼33.1%をかけると、▼21.1兆円となります。

(2)令和2年度第一次補正予算(案)

令和2年度第一次補正予算(案)による新規国債発行額については、16.8兆円となっています。

経済対策の財政支出39兆円、世界的に最大級と首相-補正16.8兆円(ブルームバーグ 2020年4月7日 9:47)

(3)国民一律10万円現金給付

まだ国民一律10万円現金給付が実現するかは分かりませんが、仮に公明党の山口代表がご提案のように所得制限なしに全国民一律に10万円給付するとすれば、2019年10月1日現在日本国民1.24億人(総務省統計局「人口推計」確定値)ですから、12.4兆円となります。

以上の推計額を足し合わせることで新型コロナショックによって発生する新規国債発行額50.2兆円となります。

新規国債発行額の試算結果((出典)筆者試算)
新規国債発行額の試算結果((出典)筆者試算)

さらに、もともと、令和2年度(2020年度)当初予算では、新規国債が32.6兆円計上されていますので、先の追加新規国債発行額50.2兆円と合わせると、2020年度には82.8兆円の新規国債を消化しなければならなくなります

しかも、問題は新規発行国債(新発債)だけではありません。現実には新発債の他にも借換債、財投債、復興債などが発行されていまして、既に2020年度では当初予算分の新発債32.6兆円を除いて120.9兆円発行が計画されていますから、結局、合計203.7兆円もの国債を消化しなければならなくなります

2020年度単年度で203.7兆円もの国債を安定的に消化できる余力が日本経済に残されていれば問題ありませんが、果たしてどうでしょうか?