800万円未満の世帯に30万円現金を配れば消費税負担をチャラにできて現金給付もできるし一石二鳥

(写真:アフロ)

新型コロナ禍に対する経済対策は、「商品券より日銀券」ということになりそうですが、相変わらず消費税減税を推す声も根強くあります。

消費税減税については、個人的には否定的でありまして、その理由は財源というよりも、消費税をいったん〇%(0とか5とか)にまで下げ(てまた上げ)る社会的コスト(プログラム変更とか値札変更とかもろもろ含め)の大きさを懸念しているからです。

つまり、社会的コストも含めて現金給付すれば、その分消費税減税よりも多くの現金を国民に支給することができるからです。

本記事では、消費税減税ではなく、現金給付を行うことで、実質消費税減税と同様の効果を家計にもたらす施策を考えてみました。

今回の経済危機に際しては、本当に生活に困った方々に対して、いかに効率よく支援できるか?が何よりも重要であるわけですが、消費税減税の問題点は、その恩恵が高所得層にも及んでしまうことも挙げられます(この点は下に出てくる図で所得が高いほど消費税負担額が大きいことの裏返しです)。

また、現金給付に関しても、いつの時点の所得で対象者を絞るかという問題点があるわけでして、本来とても重要な論点ではあるのですが、ここでは捨象して考えてみます。

さて、総務省統計局が作成公表している2019年の「家計調査報告」を用いて、所得階層別の消費税負担額を試算したものが下記の図となります(※)。

図 所得階層別一世帯当たり年間消費税負担額の推計((出典)総務省統計局「家計調査報告」をもとに筆者作成)
図 所得階層別一世帯当たり年間消費税負担額の推計((出典)総務省統計局「家計調査報告」をもとに筆者作成)

同図によりますと、全所得階層を平均した場合の年間消費税負担額は28.1万円で、所得階層が低いほど年間消費税負担額が小さく、所得階層が上がるほど年間消費税負担額が大きくなることが分かります。

さらに、600~650万円の所得階層の年間消費税負担額がだいたい平均所得税負担額28.1万円に相当することが分かります。

そこで、年間消費税負担額28.1万円に若干上乗せした30万円を年間所得が800万円未満の世帯に現金として配るのです。そうすれば、800万円未満の世帯ではほぼ消費税負担がチャラになりますので、実質的に消費税が0%に減税されたの同じ効果を持ちますし、想定される年間消費税負担額以上に現金を支給された世帯では、その差額がネットで見た現金給付額となります。当然、所得が上がれば消費も増えその分消費税負担額も増えますから、ネットで見た現金給付額は少なくなります。

例1:200万円未満世帯では、年間消費税負担額が14万円ですから、30万円支給されれば、14万円分の消費税負担が帳消しになり、かつ残りの16万円が現金支給されたのと同じになります。

例2:600~650万円未満世帯では、年間消費税負担額が27.7万円ですから、30万円支給されれば、28万円分の消費税負担が帳消しになり、かつ残りの2万円弱が現金支給されたのと同じになります。

これによって、一律現金給付に対して高所得層にも支給するのはおかしいという批判にもこたえられます(そもそも全世帯のだいたい2割に相当する800万円以上の高所得層には現金給付は行われません)し、消費税減税ではいま生活に困っている世帯の助けにならないという批判にもこたえられることになります。さらに、蛇足ながら付け加えれば、厚生労働省「国民生活基礎調査(平成30年)」によれば、高齢者世帯の平均所得は335万円ほどなので、だいたい8万円ネットで給付を受けられますから、高齢者の票も確保できます。ですから、政治的にも実行しやすいのではと愚考いたします。

まさに一石二鳥の案だと自画自賛しておりますが、いかがでしょうか?

※なお、ややテクニカルではありますが、消費税は2019年10月から10%に引き上げられ、同時に軽減税率も導入されていますから、2019年のデータを単純に用いただけでは消費税率10%の場合の家計負担額は計算できませんが、その辺はしっかり修正してあります。したがいまして、この数値は、2019年の消費パターンを前提として、消費税率10%及び軽減税率が1年を通して課せられた場合の所得階層別一世帯当たり年間消費税負担額であると考えて頂いて差し支えないと思います。