商品券配布も現金給付も政策効果に違いはない。国民の命を重視するなら現金給付が望ましい。

(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

欧米各国が、新型コロナショックに対して、大胆な経済対策を講じる中、我が国でも現金給付を求める声も強くありましたが、どうやら現金給付ではなく商品券の配布となるようです。

麻生財務相「商品券は貯金にはいかない」 経済対策(2020年3月24日 朝日新聞)

報道によれば、麻生太郎財務大臣は「現金を給付しても貯蓄に回ってしまうので、商品券の方が消費喚起効果が高い」とのご認識のようです。

要は、商品券は全額使うから消費喚起効果が大きいのに対して(使用期限が来れば紙くずになってしまうから)、現金は貯蓄できるので消費喚起効果は小さいということです。

個人的には、受け取った現金(の一部)を貯蓄に回す人がいたとしても、いずれ必要になれば消費に回すのですし、なんといっても現金給付は生活の安心安全を高める効果を持つので無問題だと思うのですが、それはひとまずわきに置いておきましょう。

果たして、商品券配布の方が現金給付よりも消費刺激効果は大きいのでしょうか?(結論を先取りして要約した図をここに載せておきます)

図 商品券配布と現金給付の政策効果の違いのイメージ(筆者作成)
図 商品券配布と現金給付の政策効果の違いのイメージ(筆者作成)

ここで、参考になるのが、1999年に実施された地域振興券とリーマンショック後の2009年に麻生太郎内閣で実施された定額給付金です。

なお、政策規模としては、地域振興券は、総事業費7千億円程度、1999年1月1日時点で15歳以下の児童が属する世帯の世帯主(児童 1 人につき2万円)、老齢福祉年金の受給者等1人2万円、一方、定額給付金は、総事業費2兆円程度、2009年2月1日時点で65歳以上及び18歳以下は1人2万円、それ以外は1万2千円でした。

いずれの政策に関しても、アンケート調査と計量分析により内閣府が政策効果を検証しています。

アンケート調査によれば、地域振興券の効果に関しては、「調査世帯については、振興券既使用金額の32%程度分、新たに喚起した」とのことで(※1)、一方、定額給付金の効果に関しては、「定額給付金がなかった場合と比較して消費が増加した金額は32.8%」としています(※2)。

つまり、どちらの政策もほぼ68%が貯蓄に回り、新たに消費を喚起したのは(たったの)32%でしかないのです。要は、商品券も現金給付も効果は同じなのです。

しかし、これらのアンケート調査では、需要の先食いなどが考慮されていないため、内閣府はのちに家計調査の個票データなどを用いて厳密な計量分析を行っています。

その結果を見ると、地域振興券では、受給額の10~20%に相当する消費喚起効果があった一方(※3)、定額給付金では、受給額の25%を上回る消費喚起効果があったとしています(なお、子どもがいる世帯では40%、高齢者がいる世帯では37%の消費喚起効果)(※4)。

つまり、厳密な分析を行っても、やはり、商品券も現金給付も効果は同じといえます。

このように、先行事例のエビデンスから評価すると、実は、現金給付も商品券配布も消費喚起効果に違いはないのです。

とすると、自粛要請で仕事がなくなり、収入が途絶えた世帯もあることを考えると、納税や社会保険料納付に使えず、公共料金などの支払いにも当てられない商品券よりも現金給付の方が、生活の下支えに直結し、したがって、わたしたち国民の命を守ることになるため、こうした緊急時に際してはより望ましい政策と言えると思いますが、いかがでしょうか?

蛇足ながら付け加えますと、貯蓄に回らないのがベストな経済対策というのであれば、消費税減税もあり得る選択肢になってしまう気もしますが、そこんところはどうなんでしょうか?

===(補足)2020年3月25日 10時30分===

なお、与党公明党さんからは、「所得制限を設けない一人10万円の現金給付とプレミアム付き商品券」の発行が提案されているようです。

現金10万円・商品券の給付案 公明部会―新型コロナ(2020年3月24日 時事ドットコムニュース)

プレミアム付き商品券に関しましてはこれまでも何度も発行された実績がありまして、内閣府地方創生推進室から2017年4月に「平成 26 年度 地域消費喚起・生活支援型交付金事業における効果検証に関する報告書」が公表されています。

これを読みますと、

事業を実施した全自治体のアンケートを集計したところ、商品券の使用総額が 9,511 億円、このうち、新規消費喚起額(=商品券使用額のうち「商品券があったから新たに消費」した額)が 3,391 億円となった。

3,391 億円の新規消費額から財政出動した経費 2,372 億円を差し引くと、実質的な消費喚起効果は 1,019 億円の内数となった

出典:平成26年度 地域消費喚起・生活支援型交付金 事業における効果検証に関する報告書

とのことですので、プレミアム付き商品券の消費喚起効果は、定額給付金や商品券配布よりも小さく、10%強(=1019億円(新規消費喚起額)÷9511億円(商品券の使用総額))ということになるかと思います。

ただ、公明党さんのご提案は現金給付+プレミアム付き商品券ですから、生活の下支えに加えて、消費喚起効果も狙っていることになります。

(参考文献)

※1 内閣府「地域振興券の消費喚起効果等について」1999年8月6日

※2 内閣府「「定額給付金に関連した消費等に関する調査」の結果について-概要-」2010年1月15日

※3 堀雅博、シェー=チャンタイ、村田啓子、清水谷 諭 Did the Shopping Coupon Program Stimulate Consumption? Evidence from Japanese Micro Data ESRI Discussion Paper Series No.12 2002年4月(Journal of Public Economics vol.94に採録)

※4 内閣府政策統括官(経済財政分析担当)定額給付金は家計消費に どのような影響を及ぼしたか 政策課題分析シリ-ズ8 2012年4月