日韓関係の悪化で韓国経済一人負け

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

日韓関係の悪化は深まることはあっても、収拾に向かう様子は今のところありません。

実際、韓国経済を支える屋台骨の輸出は10カ月連続で減少を続けています。ただし、国・地域別の内訳をみますと、日本との軋轢の結果というよりは、中国経済の減速により大きな影響を受けていることが見て取れます。これはもちろん米中貿易戦争の影響によるものです。

いずれにしても、日本も、韓国も、国際的なサプライチェーンの中に組み込まれているわけですから、一部の方々が「韓国経済崩壊!」と万歳三唱したところで、そのあおりを受けて日本経済も沈没というのでは笑い話にもなりません。したがって、彼我の損得について冷静な分析が必要なのです。

本記事では、この度、筆者が所属する組織の一つが取りまとめ公表しましたレポートのシミュレーション結果を用いて、日韓関係の悪化が、日本経済及び韓国経済、そして世界経済に与える影響を考察してみたいと思います。

なお、本記事のなかの意見にかかる部分は、全て筆者個人の見解であり、筆者が所属するいかなる組織の見解とも一切関係はありません。また、引用などの際には、必ず元のレポートを参照してからにしてください。

シナリオ1

韓国向け輸出管理運用見直しにより、韓国の半導体・ディスプレイ生産の約8割が不可能となった場合

韓国向け輸出管理運用見直しにより、韓国の半導体・ディスプレイ生産の▼76.8%が不可能となるとすると、韓国の実質国内総生産は▼12.72%減少することになります。輸出数量は▼25%以上の大きな減少となり、韓国の内需の縮小を反映して輸入数量も▼4.1%減少することになるなど、韓国経済は大きなダメージを受けることになります。

一方、日本経済への影響を見ますと、韓国向け輸出は減少しますが、韓国経済の落ち込みを日本を含む他の国々がカバーすることになる結果、韓国以外の国で新たな需要が発生することで、日本の輸出数量はむしろ+0.7%増とわずかながら増加します。

韓国からの輸入が減少しますから日本の輸入数量は▼0.5%程度減少することになりますが、 韓国産品に変わって代替調達がなされるので、結果的に、実質国内総生産は▼0.01%の減少にとどまることになります。

つまり、日本経済はマクロで見ればほとんど影響を受けません。

世界経済に目を転じますと、日本よりも影響を受けるのは中国経済で、実質国内総生産は▼0.07%の減少になります。世界GDPは▼0.25%減少することになりますが、この減少分は韓国経済の減少分(韓国のGDP減少分×韓国の世界GDPに占めるウェイト)にほぼ相当します。

つまり、経済的ダメージは国際的にはほとんど波及することなく、韓国一国内にとどまることになります。

表1 シナリオ1のシミュレーション結果(出典)中部圏社会経済研究所「日韓関係の悪化等が全国・中部圏に与える経済的な影響について」
表1 シナリオ1のシミュレーション結果(出典)中部圏社会経済研究所「日韓関係の悪化等が全国・中部圏に与える経済的な影響について」

シナリオ2

シナリオ1に加え、韓国人訪日観光客の観光消費額が5割減少するなどした場合

シナリオ1の結果に上乗せする形で、韓国人訪日観光客の観光消費が▼48.0%減少し、さらに韓国国内の日本製品不買運動により、日本のさまざまな品目の韓国向け輸出が減少することになりますと、日本の実質国内総生産の減少率は▼0.09%となります。

最近、韓国人観光客減少のマイナスの影響がマスコミなどでクローズアップされていますが、マクロ的に評価する限りにおいては、それほど大きくはないことに注目できるでしょう。もっとも、地域によって、マイナスの影響の大きさが異なる点にも留意が必要なのは当然ですが。

一方、韓国経済への影響を見ると、実質国内総生産▼11.99%減少シナリオ1よりも縮小しています。これは、日本からの輸入が減少したことによる実質GDPの計算上の押し上げ効果が働いているからです。

世界の他の国々や世界経済全体に与える影響にはシナリオ1とほぼ同じで、韓国経済だけが損害を被るのです。

表2 シナリオ2のシミュレーション結果(出典)中部圏社会経済研究所「日韓関係の悪化等が全国・中部圏に与える経済的な影響について」
表2 シナリオ2のシミュレーション結果(出典)中部圏社会経済研究所「日韓関係の悪化等が全国・中部圏に与える経済的な影響について」

以上からまとめますと、

・韓国経済は大きなダメージを受けるものの、日本経済への影響は小さく限定的

・韓国の経済的なダメージは国際的にもほぼ波及しない

・韓国からの旅行客減少による観光消費減少の影響も、地域によって異なるが、総じて見れば小さい

というように、少なくとも経済面から判断する限り、日韓関係の悪化や今後考えうる韓国経済の不安定化が日本・地域経済に与える影響をいたずらに過大評価する必要はない、と言えるでしょう。

===これ以降は筆者個人の見解であり、筆者の所属する組織の見解とは一切関係ありません===

これまでのシミュレーションの結果から明らかになったように、日韓関係の悪化が日本経済に与える影響は、マクロ経済的に見れば、軽微なものに過ぎません。言ってみれば、韓国経済の一人負けでした。

したがって、消費増税後の景気動向を心配するあまり、レーダー照射問題、徴用工問題、GSOMIA破棄などの懸案事項を棚上げしたまま、韓国と安易に妥協する必要はなく、日本の正当性をアメリカの理解を得て、正々堂々世界の国々に展開していけば良いでしょう。そういう意味では、経済戦では結果が見えていますから、外交戦がカギとなるのかもしれません。

もちろん、局所的に見れば、韓国からの旅行客の減少により、大きなマイナスの影響を被る地域もあります。その場合には、例えば、東日本大震災や最近の自然災害などからの復興のため、被災地への旅行などに対して補助金などで支援している事例を参考にして、九州や関西などの被害救済に当たればよいでしょう。

そもそも、一連の問題の発端は、韓国側の一連の措置が、日本の安全保障や戦後の日韓関係の礎を一方的に破壊しつつある点にあるのですから、実際には軽微に過ぎない経済的な問題を理由にして拙速に事態の収拾を図るのでは、かえって誤ったシグナルを韓国側に送りかねません。

実際、これまで、少々不満があっても諸事情から丸く収めてきた結果、フラストレーションを抱え込み、いまに至って爆発寸前となっている不幸を21世紀にも持越してしまうことになってしまいます。

今回の諸々を、日韓の歴史的な経緯を乗り越え、真の未来志向の成熟した日韓関係に転換していく奇貨としたら良いと思うのですが、如何でしょうか?

===以上は筆者個人の見解であり、筆者の所属する組織の見解とは一切関係ありません===