われわれは老後の生活資金を2000万円も用意できるのだろうか?-退職金編-

(写真:アフロ)

金融庁は今後年金は実質的に減額されるので、老後の生活資金として2000万円必要になるとの報告書を公表しました。

実際、2014年の財政再検証でも、高い賃金上昇率と高い運用利回りのもとでは所得代替率50%が維持されるとの見通しを示したものの、より現状に近い低賃金上昇率と低利回りのもとでは所得代替率は50%を下回り、場合によっては40%にまで低下するとしています。

もし、この状況で年金だけで老後の生活を送ろうとすれば、現役世代の平均賃金が月30万円であれば引退世代は夫婦で月12万円で生活しなければいけないということなので、生活水準を大きく切り下げる必要が出てきます。

つまり、年金だけでは老後の資金をまかなえないことは金融庁の報告書をまつまでもなく、すでに公開されていたのです。野党もメディアも何を今更大騒ぎしているのだろうというのが本音でしょう。

与党は与党でお粗末でシルバー民主主義の幻影を恐れて参院選へのネガティブな影響を懸念して金融庁を叱責する始末です。本件を奇貨として国民的な議論を巻き起こせばよかった思うのですが...。曖昧な態度で真実を覆い隠そうとするのは国民を愚弄しているといわれても仕方ないのではないでしょうか?

金融庁の報告書のわたしの評価については金融庁「老後資金2000万円不足」報告書は高く評価されるべき(島澤諭)で述べたとおりです。

加えて、われわれは老後の生活資金を2000万円も用意できるのだろうか?-統計から確認する-(島澤諭)という記事の中で、これから引退生活に入る60歳代の貯蓄額を見ると2000万円以上の世帯は22%に過ぎず、金融庁の提言むなしく実態ではほぼ不可能な状況であることを指摘しました。

ところで、老後の生活資金は勤労期の蓄えと退職金が主な原資となっています。マイホームのローンを賄い、さらに老後の生活資金とするのに、退職金は十分なのでしょうか?

本記事では厚生労働省「就労条件総合調査」により退職金の推移を見てみましょう。

退職金は企業規模別にみても学歴別にみても、総じてみれば減少しています。

2003年には大卒以上と高卒(非現業職)で退職金が2千万円を超えていましたが、2018年ではどの学歴を見ても2千万円を超えてはいません。

退職金の変化(厚生労働省「就労条件総合調査」により筆者作成)
退職金の変化(厚生労働省「就労条件総合調査」により筆者作成)

しかも企業別にみても2千万円を超えているのは従業員が1000人以上の大企業の大卒以上と高卒(非現業職)に限定されています。大企業でも現業職であったり、大卒以上でも中小企業の従業員では退職金が2千万円には遠く及びませんので、「人生100年時代」を口実に、老後の生活資金を2千万円、公的年金のほかに用意しろと煽られてもどうしようもできないというのが正直なところではないでしょうか?

今から2千万円の資金が用意できない年齢や職種の方々であれば、死ぬまで働き続けるか(生涯現役!)、ハイリスクを覚悟でハイリターンの金融資産に投資するしかないかもしれません。詐欺に引っかかるかもしれませんし(金融リテラシーの向上!)、虎の子の資金が元本割れで一文無しの事態も発生するかもしれません。

そうなれば、生活保護となってしまいます。あと20年もすれば非正規でずっと働いてこられた氷河期世代を中核とした方々が、続々と引退されます。公的年金の網の目から漏れてしまっている方も多く、生活保護受給者の急増も予想されます。貯蓄なし世帯が氷河期世代では17%を占めているこを忘れてはいけません。

当然、年金の負担に加えて税負担も重く勤労世代にのしかかることでしょう。

政治の無為無策のツケを負わされるのは結局、国民なのです。

悲しいですが、これが現実なのですね・・・