財政再建までのタイムリミットを再試算してみたよ

(ペイレスイメージズ/アフロ)

100兆円の壁を突破した予算

いささか旧聞に属しますが、昨年の流行語大賞に「ボーっと生きてんじゃねーよ!」というのがあったそうで、今に至るまで毎日をボーっと生きてきた私には人権が認められない肩身の狭い世の中になったかのように感じられます。ボーっと生きる権利の創設・保障を切に願います。

さて、もうすぐ通常国会が始まります。通常国会では次年度予算が審議されますが、次年度予算の目玉は何と言っても今年10月からの消費税率10%への引き上げと、2014年の引き上げ時にマクロ経済を失速させてしまった反省に基づき、大盤振る舞いされる負担軽減策でしょう。その結果、当初予算では初めて100兆円の壁を突破した予算規模となりました。

消費税率引き上げの目的

ところで、政府がなり振りかまわず邁進する消費税率引き上げの目的はなんでしょうか?意外なことに、財政再建ではありません。周知の通り、消費税は社会保障の目的税とされているので、それ以外には使用できないからです。現実には、消費税は財政再建ではなく、これまた政府が全力投入している全世代型社会保障を確立するための財源として利用されることになっているのです。

なお、消費税は財政再建に目的外使用されている!と指摘する方もいらっしゃるかと思いますが、これまで消費税収で足りない財源を赤字国債で賄ってきた(次世代への付け回し)ので、それと相殺しているのを財政再建に回していると思われているのだと思います。

実際には、消費税率を10%に引き上げたところで社会保障(4経費)の赤字垂れ流しは止まず、次年度予算でも消費税収と社会保障予算の差額は赤字国債の新規発行で賄われているのです。

したがって、2025年に団塊の世代がフルに後期高齢者になられると、医療と介護から社会保障費への増加圧力は強まる一方で、現時点ですら財源が足りない社会保障は更なる赤字を生み出すことになりますので、このままいけばいずれかの時点で消費税率の追加の引上げは不可避となるでしょう。

財政再建に対する3つの派閥

しかし、社会保障におカネがかかるとして、1997年に消費税率が3%から5%に引き上げられるまで8年、5%から8%への引き上げに17年、8%から10%は今度こそ予定通り引き上げられるとして5.5年かかっていますので、すんなり引き上げられるかはかなり怪しいです。

もちろん、増税が好きな人は極まれで、大多数が増税しない方を好むのは世の摂理と言えるでしょう。

これまで、財政再建に対しては、インフレや経済成長率を高めることで対処できるとする上げ潮(リフレ)派と、インフレや経済成長で対処できればそれに越したことはないけれども実際には不確実性が高すぎる(ギャンブルすぎる!)ので、歳出削減や増税での対処を推奨する一派(増税派?)と、もっとも過激なのは、日本にはそもそも財政問題など存在しないから、政府はどんどん国債を刷ってどんどんお金を使うべき!という財政赤字(内国債)無問題派があります。

私も、増税しないで済むのならもちろん増税なんてしない方がいいと思いますが、一方では突然財政に限界がきて増税や歳出削減が必要なってしまうと被る損害は早めに財政をキレイにしておいた場合に比べて大きくなりすぎると思っていますので、どちらかと言えば早期の財政再建必要派と言えるでしょう。世に謂うところのミニマックス原理の信奉者なだけなのかもしれませんが。

財政はもってあと20年程度

2019年10月からの消費税率引き上げやその負担軽減策等を盛り込んだ政府の大盤振る舞いを前提として考えれば、日本財政の将来はどのような姿になるのでしょうか?もしかすると、国債の買い手がつかなかったり(財政資金のショート)、国債金利急騰で金融機関が軒並み経営危機に陥ったり、あるいはその要因で財政再建が必要になるかもしれませんし、または、消費税率を10%に引き上げたことにより財政は著しく改善しないまでも、現在のような状況をずっと続けていけるかもしれません。

どうなるかは、まさに神のみぞ知る、ですが、ここでは、経済成長率や金利が人口動向、歳出歳入等と整合的に内生的に決定されるミクロ経済学的な基礎を持つシミュレーションモデル(OLGシミュレーションモデル)を用いて、可能な限り現在の日本のマクロ経済及び財政・社会保障の姿を再現した上で、今後の財政がどうなるのかを試算してみましたところ、日本財政はもってあと20年程度で、2035年には歳出削減や増税のような何らかの財政再建を実行する必要があるとの結果となりました。

この結果は、今回の試算とは少々異なる前提(歳出歳入、社会保障の負担と給付、マクロ経済の状況、財政や社会保障の赤字をどうやって埋めるかについての考え方等々)を用いて試算した財政破綻までのタイムリミットを計算してみたより5年早くなってはいるものの、ほぼ近い結果ですので、ロバスト(頑健)な結果なんだろうと思います。

いわゆる氷河期世代が高齢者になり、(現在の制度を前提すれば)年金や医療、介護の負担者から需要者に替わる時点が限界ということでしょうか。

まぁ、消費税を10%に引き上げるとは言え、赤字垂れ流しを放置したまま、全世代型社会保障という名目で老若へのバラマキ強化を図るわけですから、財政が音を上げるのが早くなるのも仕方のないところでしょう。

とは言いつつ、所詮、シミュレーションモデルの結果ですので、当たるも八卦当たらぬも八卦ではありますが、特に私のようなビビり症の人間にとっては、一定の指針を与えるものではないかと思います。

責任ある政治家の使命

一定の仮定を置いた試算では日本財政は2035年には抜本的な財政再建を行う必要があるとの結果が得られましたが、裏を返して言えば(?)、抜本的な財政再建を行うまでにはまだ少々時間的な猶予があるということでもあります。

このモラトリアムに、年齢、性別、職業、収入の多寡等にかかわらず全国民が合意できる財政再建策を取りまとめる必要があるでしょうし、それこそが責任ある政治家の使命ではないかと、今年行われる参議院通常選挙を前に考える次第です。

蛇足

蛇足ですが、次は、このシミュレーション結果を前提として、逃げ切れる世代(勝ち組)と逃げ切れない世代(負け組)について記事にする予定です。