家計のデータ分析:おでん編

(ペイレスイメージズ/アフロ)

暑かった今年の夏

 各地で最高気温の記録が塗りかえられるなど、今年の夏の暑さは文字通り異常でした。実際、東京都の7月、8月の平均気温を例年と比べてみますと、それぞれ28.3℃、28.1℃で、例年より+1.5℃、+0.4℃高くなりました(図1)。

図1 7月、8月の平均気温の比較
図1 7月、8月の平均気温の比較

 数字で改めて確認しても、やはり今年の夏は暑かったですね!

コンビニにおでんが並び始めた

 とは言いながらも、夏の間は姿を見かけなかったコンビニおでんが今年も8月中下旬あたりから幅を利かせ始め、セールも始まりました。おでんといえば、冬の季語ですし、冬の食べ物のはずなのですが、いつの頃からか夏も終わりに近づくとコンビニのおでん推しが始まるようになりました。

 本記事では、例のごとく総務省統計局「家計調査」を使って、日本の平均的な世帯のおでん消費の実態を探るとともに、コンビニのおでん戦略の合理性についても考えてみたいと思います。

 なお、「家計調査」にはおでんという項目がありませんので、本記事では「揚げかまぼこ」「ちくわ」「だいこん」「こんぶ」「がんもどき」等、「家計調査」で把握できるおでんの種への支出額は考慮できるのですが、「家計調査」では把握できないおでんの汁ですとか、ちくわぶなどは元より、コンビニやスーパーでのできあいのおでんへの支出額ですとか、外食先でのおでんへの支出額は、残念ながら考慮できてはいません。家計調査の限界!

おでんの月別支出額

 おでんへの月別支出額を見たのが図2です。

図2 おでんの月別支出額
図2 おでんの月別支出額

 図2によれば、1年を通して最もおでんへの支出額が多いのは12月の1700円強で最も少ないの7月の900円弱に比べて約2倍となっていまして、確かに、おでんが冬の食べ物であることが裏付けられます。

 ただし、12月は他の月に比べてそもそも食費が多いので、それに合わせておでんへの支出額も大きくなっている可能性も考えられます。

 そこで、食費に占めるおでんへの支出額の割合を見ると、11月が最高で、7月が最低となっています。やはり、おでんは冬の食べ物であることが分かります。

おでんへの支出額低下している

 おでんへの世帯当たり及び世帯一人当たり支出額を見たのが図3です。

図3 おでん支出額の推移
図3 おでん支出額の推移

 図3によれば、まず、一世帯当たりでも、世帯一人当たりで見ても、2000年以降名目支出額でも実質支出額でもともに減少傾向にあるものの、近年下げ止まっているようにも見えます。

 しかし、食費に占める割合で見てみますと、一世帯当たり名目支出額の割合を除いて、いずれも低下傾向にあるのが分かります。

 したがいまして、世帯で見たおでんへの支出は減少傾向にあると言えるでしょう。

都道府県ランキング

 おでんへの都道府県別支出額を見たのが図4です。

図4 都道府県ランキング
図4 都道府県ランキング

 図4によれば、鹿児島県が年間18500円弱の支出で全国トップ、沖縄県が9200円弱の支出額で全国ワーストであることが分かります。

 しかし、鹿児島県はおでんの重要な種であるさつま揚げの本場でして(鹿児島では「つけあげ」、西日本等などでは「てんぷら」と呼ばれるそうです)、さつま揚げの支出額が全国平均で2400円弱なのに対して7200円と実に3倍強となっています。つまり、鹿児島県ではおでんの季節に関係なくさつま揚げ(つけあげ)への支出額が大きく、結果としておでんへの支出額を押し上げている可能性が高いと考えられます。

 そこで、揚げかまぼこへの支出額を除いてランキングしたものが図5です。

図5 都道府県ランキング(除く揚げかまぼこ)
図5 都道府県ランキング(除く揚げかまぼこ)

 図5によれば、鹿児島県が31位にまで後退し代わって全国トップに躍り出るのは福井県で15000円、ワーストは沖縄県であることには変わりはありません。ちなみに、鳥取県と京都府がそれぞれ2位、3位であることは揚げかもぼこを考慮してもしなくても同じです。

 図6、図7は、食費に占めるそれぞれの都道府県別ランキングです。

図6 都道府県ランキング(対食費)
図6 都道府県ランキング(対食費)
図7 都道府県ランキング(対食費、除く揚げかまぼこ)
図7 都道府県ランキング(対食費、除く揚げかまぼこ)

 沖縄県がワーストから脱出していることがわかります。

おでんへの支出はお年寄り世帯が多い

 世代別でおでんへの支出額を見たものが図8です。

図8 世代別おでん支出額
図8 世代別おでん支出額

 図8によれば、高齢世帯ほどおでんへの支出が大きいことが分かります。おでんにはやわらかい種が多いことも影響しているのかもしれませんが、いずれにしても世代別で見ますと、おでんを好むのはお年寄りのようです。

 もしかしたら、若者はお年寄りとは違っておでんを自分では作らずにコンビニで買って食べているのかもしれませんが、本記事では分析の対象外です(そもそもコンビニのデータが利用できない)ので、不十分な分析とならざるを得ないのが残念です。

おでんは庶民の食べ物

 所得階層別におでんへの支出額を見たものが図9です。なお、世代別の分析でお年寄りほどおでんへの支出が多いのが確認できました。一般的に所得の低い階層にはお年寄りが多いので、そうした影響を除去するため、ここでは勤労世帯での比較を行っていることに注意してください。

図9 所得階層別おでん支出額
図9 所得階層別おでん支出額

 図9によれば、高所得層ほどおでんへの支出額が多いことが分かります。したがって、実はおでんはお金持ちの食べ物だった!とも言えそうですが、お金持ちは総じて様々な項目への支出額が多くなるのは当然ですので、食費に占める割合で見てみますと、所得の低い世帯ほどおでんへの支出割合が大きいことが確認できます。つまり、おでんは庶民の食べ物だと言えそうです。

おでんが恋しくなる要因は気温差!

 ここではいったん図2に戻っていただきまして、青い折れ線グラフの動きを見ていただくと、おでんへの支出は8月から9月にかけてが一番伸びが大きいことが分かります。つまり、コンビニが8月が終わる頃からおでんに力を入れ始めるのも合理的みたいですね。

 気温面にたち戻って考えますと、例年、8月も終わりに近づくとそれまでの暑さは控えめになり、朝晩も涼しくなってきます。平均するとまだまだ気温は高いのですが一日の中でも気温の寒暖差が涼しい方に動き始めるのが丁度このあたりからです。

 以上から、おでんは平均気温が低い冬の食べ物ではあるわけですが、おでんが恋しくなるのは平均気温というよりは気温が急激に低下する頃だと仮説を立てることができます。

 そこで、こうした仮説を検証するために、前月からの気温差とおでん支出額の変化をとったのが図10です。

図10 前月からの気温差とおでん支出額の関係
図10 前月からの気温差とおでん支出額の関係

 図10によれば、確かに前月からの気温が低くなればなるほどおでんへの支出額が増加する関係が存在することが確認できます。

 まとめると、おでんが恋しくなるのは気温が急激に低下し始める頃との仮説は確からしく、やはりコンビニが気温の下がり始める8月中下旬頃からおでん推しを始めるのは至極合理的であると言えそうです。