お盆玉のリアル

(ペイレスイメージズ/アフロ)

定着しつつあるお盆玉

最近お盆玉という言葉を耳にされる機会も増えたのではないでしょうか?

NHKニュースによれば、

お盆休みに帰省した子どもに、祖父母などがお小遣いを渡す「お年玉」ならぬ「お盆玉」が広がりを見せています。

お盆のUターンラッシュが始まったJR東京駅では、帰省先から戻った家族連れから「お盆玉をもらった」という声が相次いで聞かれました。

出典:帰省でお小遣い「お盆玉」 広がる(NHKニュース)

とのことです。

実際、NHKニュースにもありましたが、あおぞら銀行のアンケート「シニアのリアル調査」結果によれば、お盆玉を知っているシニア層は(55歳から74歳まで)毎年増え続け、今年は37.2%に達しているとのことです。

このままいけばお盆玉も、恵方巻のように、日本の新しい風習として定着していくのかもしれません。

そこで本記事では国による家計簿とも言うべき総務省統計局「家計調査」により、お盆玉のリアルについて見てみることにします(なお、本記事では家計調査で把握できる旧盆(8月)に贈られる金員をお盆玉と呼ぶことにします)。

実は昔からある「お盆玉」

日本には古来餞別やお年玉など、何かにつけお金を渡す習慣があります。このようなある世帯から他の世帯へ贈るお金のことを総務省統計局「家計調査」では贈与金として記録されています。

そこで、1年を通してある世帯から他の世帯へ贈られる贈与金についてグラフ化したものが図1です。それぞれ3年間の平均値を記してあります。

図1 受贈金の12か月(円)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成
図1 受贈金の12か月(円)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成

図1を見ると、(1)お盆玉とは呼称されてなかったもののお盆にもお金が贈られていたこと、(2)年末年始、卒業就職そしてお盆の順に受贈金が多いということ、(3)20年前のバブル頃がピークだったこと、(4)お盆に限らずピークからはいずれの月も金額が減少していること、が分かります。

要は、これまでもお盆にお金を渡す習慣がありましたが、それは商業主義のなせるわざ、なにかのきっかけでお盆玉という言葉が人口に膾炙(かいしゃ)されていったのだろうと推測されます。

換言すれば、こうした既存の習慣をあらためてお盆玉と呼んだことにポチ袋業界のイノベーションを感じざるを得ません。

お盆玉をこんなにメディアが取り上げるようになったのだから、減少しているのはおかしいとの指摘も聞こえてきそうです。例えば、失われた20年を経て日本人は総じて貧しくなってしまったため、かわいい孫のためとはいっても無い袖が振れないということも当然あり得ますので、消費支出に占めるお盆玉の割合を見たものが図2です。

図2 消費支出に占める割合で見た贈与金の12か月(%)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成
図2 消費支出に占める割合で見た贈与金の12か月(%)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成

図2によれば、経済低迷を勘案してもやはりお盆玉をはじめ贈与金は減少していることが確認できます(なお、本記事では示してありませんが孫の数を調整しても金額の減少傾向に変わりはありません)。

金額で見ても、割合で見てもお盆玉は減少しているのです。

減少を続けるお盆玉

では、お盆玉はどのように推移してきたのでしょうか。お盆玉だけの推移を取り出したのが図3です。

図3 お盆玉の推移(円)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成
図3 お盆玉の推移(円)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成

図3からは、(1)バブルの頃の1992年がピークで19000円強だったこと、(2)それ以降総じてみれば減少を続けていること、(3)2017年では1万円弱の水準にまで低下しピーク時の半分弱になっていること、が分かります。

ランドセルの早期購入の影響はあるか?

話は飛びますが、私がランドセルを買ってもらったのはもう40年以上も前のことです(遠い目)。はっきりとした記憶がないのが申し訳ないのですが、3月の誕生日頃だったと記憶しています。これはこれで遅すぎる気も...。

何年か前から、夏休み近くなると、ランドセルのテレビCMが流れるようになりました。どうやら、最近は新入学を控えた孫が夏休みに帰省してくるタイミングでランドセルを買ってあげるのが一般的になりつつあるようです。

つまり、お盆玉を減らしている原因の一つに、ランドセル購入の早期化が影響しているかもしれません。

そこで、ランドセルの購入時期の変遷をやはり総務省統計局「家計調査」で見たのが図4です。

図4 ランドセルの購入時期(円)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成
図4 ランドセルの購入時期(円)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成

確かに、10年前と比べても圧倒的にお盆を中心とした夏休みの時期にランドセルが購入されていることが確認できます。さらに、子供の数は減っているのに支出額は減っていませんし、若干増えているようです。これはランドセルの高機能化に伴う価格上昇が影響していると考えられます。ただし、新入学を控えた年長さん人口は他の子供の数に比べるとさほど多くはないので、お盆玉全体に与えるインパクトはさほど大きくはないと考えるのが妥当です(もちろん、祖父母がお盆玉として孫に贈らずに自分たちでお盆玉相当額をそっくりそのまま消費していればインパクトはゼロです)。

祖父母から孫へ贈られるお盆玉

先のNHKニュースにもありましたように、お盆玉は祖父母から孫に渡されるのが一般的なようです。そこで、お盆玉は誰から誰に送られているのかをデータで客観的に確かめるために、世代別に分解したのが図5と図6です。

図5 世代別お盆玉の受贈(円)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成
図5 世代別お盆玉の受贈(円)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成
図6 高齢世代別お盆玉の贈与(円)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成
図6 高齢世代別お盆玉の贈与(円)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成

上の2つ図からは、お盆玉の出し手は高齢世代で、受け手は小さい子供のいる30歳から40歳世代となっていることが確認できます。

地方ほど金額が大きく、都市部ほど金額が小さい

お盆と言えば、帰省です(多分)。都会に出て行った子供たちが幼い孫を連れて地方にある実家に戻る構図です(祖父母目線)。図7はお盆玉の都道府県ランキングです。

図7 お盆玉の都道府県ランキング(円)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成
図7 お盆玉の都道府県ランキング(円)(出典)総務省統計局「家計調査」により筆者作成

上図からは、(1)全国1位の秋田県のお盆玉とワースト1の愛知県とでは格差が5.8倍あること(全国2位の鹿児島県と愛知県でも4.6倍)、(2)上位10県のお盆玉の平均金額と下位10県とでは2.7倍の格差がある、(3)東北6県のうち4県が上位10県にランクイン、(4)大都市の1府3県が下位10県にランクイン、(5)全国平均を上回るのは13都県しかない、ことを指摘できますので、おおむね、高齢化率の高い地方ほどお盆玉が多額であり、都市部ほどその金額は小さい、と言えそうです。

お盆玉の総額は5千億円弱

最後に、お盆玉がマクロ経済に持つインパクトを試算してみましたところ、お盆玉総額のピークは1992年で7330億円、2017年では4270億円とピーク時に比べて▲42%も減少していることが分かりました。

つまり、孫(やそのお盆玉を巻き上げた親)がお盆玉を全額使ったとしても、民間消費総額に与える効果は+0.14%に過ぎず、ほとんど誤差に過ぎないのです。

蛇足:お盆玉の出どころは孫の財布?

最後にいくつか留保(蛇足?)を述べておきたいと思います。

まず、突き詰めて考えていくと、お盆玉は主に祖父母が孫に贈るものですが、お盆玉の出どころは孫の財布かクレジットカードであると言えます。ここでは詳しく触れませんが、赤字財政で賄われている公的年金と国債の60年償還ルールにそのカラクリがあります。

次に、お盆玉は減っていますが、それ以外の支出、例えば、子ども家族との旅行の代金を祖父母が肩代わりしている、あるいは子供が購入するマイホームに資金援助することで事実上お盆玉の前渡しを行っている、ことも考えられ、そうなれば見た目のお盆玉は減少してしまいます。

以上が、お盆玉の金額の推移を考える上では十分留意しないといけない点だろうと思います。

いずれにしても、私のもとにもどこかから20倍界王拳の超お盆玉が降ってくることを切に願ってやみません。