新聞を買わない・読まない・評価しない若者~新聞離れを世代別に検証してみた~

(写真:アフロ)

進む新聞離れ

新聞離れが指摘されて久しい。

まず、供給側のデータから確認する。一般社団法人新聞協会のデータによると、新聞発行部数も、新聞販売収入も、総じて見れば、減少を続けている(図1)。

図1 新聞の発行部数と販売収入の推移
図1 新聞の発行部数と販売収入の推移

次に、需要側のデータを確認するため、総務省統計局「家計調査」により1983年以降の一世帯当たりの年間新聞支出額の推移を見ると、2002年に3.9万円とピークをつけた後は減少を続け足元の2017年には3万円弱と1万円程度減少している(図2)。

図2 一世帯当たり年間新聞支出額と消費総額に占める新聞支出額のウェイトの推移
図2 一世帯当たり年間新聞支出額と消費総額に占める新聞支出額のウェイトの推移

さらに、NHK放送文化研究所が2016年に公表した「2015年国民生活時間調査報告書」によると、国民全体で新聞を読む者の割合も減少を続けている。具体的には、平日に新聞を読む者の割合は2015年では33%と1995年の52%から20ポイント近く減少している。

以上のように、新聞離れの進行は確かに各種データから多面的に裏付けられる。

深刻な若者の新聞離れ

新聞離れは確認できたが、ではいったい誰が新聞から「離れて」いってるのだろうか?

以下では世代という観点で新聞から離れて行っている者を特定してみたい。

総務省統計局「家計調査」により、世代別一世帯当たりの年間新聞支出額を2007年と2017年とで比較してみたのが図3である。

図3 2007年と2017年の世代別一世帯当たりの年間新聞支出額(万円)
図3 2007年と2017年の世代別一世帯当たりの年間新聞支出額(万円)

同図によれば、(1)全世代で2017年には2007年から支出額を減らしていること、(2)2007年に60歳代世代が一番多く支出していたのに対して2017年では70歳代以上世代となっており、10年経ってその位置がほぼそのままスライドしたこと、(3)もっとも支出額が低いのは30歳未満世代であり、しかも2007年から▲77%と、新聞への支出を8割弱も減らしたこと、(4)30歳代でも10年間で支出額を▲60%も減らしたこと、が分かる。

なお、2007年から2017年にかけて国民が貧しくなった結果新聞への支出額を減らしたとも考えられるので、世代別一世帯当たり総消費額に対する新聞支出額の割合を比較してみると、70歳以上世代を除いた全ての世代で総消費額に占めるウェイトを顕著に減らしているため、総消費額が減少した以上に新聞への支出額を減らしていることが確認できる(総消費額は60歳世代を除いて減少している)。つまり、全世代で新聞の支出先としての優先度はそれほど高くなく特に30歳未満世代と30歳代世代ではそれが顕著である。なぜなら、新聞を評価し、支出先としての優先度が高ければ、70歳以上世代同様、収入が減り消費水準を切り詰めなければならなくなったとしても新聞の購読をバッサリ切ることはしないはずだからだ。若者世代は新聞を他の支出項目ほど高く評価していないことの証左と言えよう。

図4 世代別一世帯当たり年間新聞支出額の年間総消費額に占めるウェイト
図4 世代別一世帯当たり年間新聞支出額の年間総消費額に占めるウェイト

若者世代は新聞にお金を使わなくなっただけでなく、新聞を読まなくもなっている。NHK放送文化研究所の「2015年国民生活時間調査報告書」を見てみると、若者世代の新聞離れは深刻で、20代では男性8%、女性3%、30代では男性10%、女性12%となり、95年からそれぞれ▲24ポイント、▲29ポイント、▲45ポイント、▲38ポイントの減少となっている。これに対して、70歳以上の男性では▲7ポイントの減少にとどまっている一方、女性では逆に+3ポイント上昇するなど、やはり新聞離れは30歳代以下世代の若者世代で顕著なことが分かる。

以上より、一口に新聞離れと言ってもそれが誰なのかを世代に焦点を当てることで明らかにしたところ、全世代で新聞離れが進行しているものの、特に若者世代ほど新聞離れの度合いが大きく、(新聞業界から見れば)深刻な状況であることが裏付けられた。

強まる新聞業界の高齢世代依存

若者世代の新聞離れの深刻化により、当然と言えば当然なのだが、新聞の販売収入は高齢世代への依存を強めている。図5は2007年における国民の新聞支出総額(つまり新聞業界から見れば販売収入総額)に占める年齢別のウェイトを試算したもので、図6は同じく2017年における年齢別ウェイトを試算したものだ。

図5 新聞支出総額の世代別ウェイト(2007年)
図5 新聞支出総額の世代別ウェイト(2007年)
図6 新聞支出総額の世代別ウェイト(2017年)
図6 新聞支出総額の世代別ウェイト(2017年)

図5と図6を比較すると、60歳以上の高齢世代は、2007年には新聞業界の販売収入総額に対して48%のウェイトを占めていたのが、2017年には67%へと上昇し、実に3分の2強が高齢世代からの売上となっており、新聞業界は高齢世代への依存を強めていることが分かる。

なお、図7と図8はそれぞれ、2007年と2017年の消費総額に占める世代別のウェイトを示しており、図5、図6と比べることで、高齢世代の新聞への支出ウェイトは消費総額に占めるウェイトよりも大きくなっていること、若者世代はその逆で新聞への支出ウェイトは消費総額に占めるウェイトよりも小さくなっていることが確認できる。つまり、マクロでみると、高齢世代ほど新聞への支出を重視している(もしくは優先している)と言えるだろう。

図7 消費支出総額の世代別ウェイト(2007年)
図7 消費支出総額の世代別ウェイト(2007年)
図8 消費支出総額の世代別ウェイト(2017年)
図8 消費支出総額の世代別ウェイト(2017年)

新聞を買わない・読まない・評価しない若者

以上見てきた通り、若者世代は新聞を買わない・読まない・評価しないことが明らかになった。これを「若者世代は情報はタダだと思ってるから」と切って捨てるのはある意味たやすい。しかし、同時に、全世代的に新聞離れが進行している事実は見逃せない。つまり、このまま行けば、そう遠くない将来に、誰も新聞を買わないし読みもしない時代がやってくる可能性が高い。ネット時代でも一次情報の有力な提供媒体は今のところ新聞であることは間違いない。新聞の黄昏は現在の日本の場合、そのまま情報提供のパイプの先細りを意味する。情報の供給チャネルは多ければ多いほど、ある事象を多角的に比較検討しより確からしい真実にたどり着けるチャンスが増すので、望ましい。そういう意味でも新聞の役割はいささかも減じていないはずだ。いや、フェイクニュースが氾濫する時代だからこそ、そして国民の分断が懸念される時代だからこそ、新聞もしくはこれまで新聞が果たしてきた社会的機能の重要性は今後一層増すだろう。

しかし、上がり続ける購読料、様々な偏向報道、建前だけの不偏不党、報道の自由を振りかざしつつ報道しない自由のステルス的行使、国民には財政再建のための痛み-つまり、消費税引き上げ-の受け入れの必要性を説きながら、自分たちは軽減税率を要求する二枚舌等々、多くの国民、特に若い世代はこうした欺瞞を敏感に嗅ぎ取り、不信を強め、それが新聞離れを惹起しているのではないか、生意気ですが、個人的にはそんな気がするのが、残念でならない。