プレミアムフライデーとは結局なんだったのか?

(写真:アフロ)

今回のポイント

プレミアムフライデーは

・フォトジェニックな政策(広告代理店が考えたかのようなキャッチフレーズ先行で見栄えがいい政策)

・お友達政策(仲間内での馴れ合い)

・分断の象徴(自分の階層以外見ざる知らざる聞かざる)

である

はじめに

今年の2月24日から鳴り物入りで導入が開始されたプレミアムフライデーも本日7月28日で6回目を迎えました。しかし、昨日民進党の蓮舫代表と稲田防衛大臣が辞意を表明されたので、当然本日はこれらの話題で持ちきり、誰も今日がプレミアムフライデーだとは思いもよらないのではないでしょうか?それはさておき。

プレミアムフライデーについては、以前こんな記事で、効果はないだろうと指摘しましたが、実際はどうだったのでしょうか。

朝日新聞社さんが行ったアンケート結果に関する記事によりますと、

期待された個人消費の盛り上がりについて尋ねると、「効果をあげていない」が76%で、「あげている」はわずか11%だった。

出典:プレミアムフライデー「効果なし」76%(2017年7月11日 朝日新聞朝刊)

今後について聞くと、「やめた方がよい」が49%で、「続けた方がよい」32%より多かった。年代別では18~29歳だけは「続けた方がよい」が53%と多数派だったが、30代以上のすべての年代で「やめた方がよい」の方が多かった。

出典:プレミアムフライデー「効果なし」76% 朝日世論調査(前掲)

とのことです。

4人に3人がプレミアムフライデーは効果を上げていないと答え、半数近くがやめた方がよい、と答えているのです。肯定的なのは、30歳未満の若者層だけです。この世代は親世代と同居していて自由になる可処分所得が多いからなのでしょう。一方で、30歳以上のすべての世代で「やめた方がよい」が上回るのは、プレミアムフライデーに乗っかりたくても、先立つお金がないからにほかなりません。

また、総務省統計局『家計調査』の「1世帯当たり1か月間の日別支出(勤労世帯)」により、2017年2月からデータが公表されている5月までのプレミアムフライデー当日と前年の最終金曜日における消費金額の違いを見ますと、消費総額では前年より▲678円減(前年同期比▲2.1%減)、外食・衣服・履物・教養娯楽といったプレミアムフライデーで想定されている消費に限ってみると、▲1,023円減(前年同期比▲16.8%減)といっそうの落ち込みを示してしまいます(ダメだこりゃ)...。

もちろん、今年と去年では、天候や所得、日にちなどの諸条件も異なりますし、解釈は分かれるとは思いますが、プレミアムフライデー大勝利!と言える状況でないことだけは確かに思います。

プレミアムフライデー失敗の3要因

経産省と経団連(正確には15の経済団体)がタッグを組んで、言ってみれば安上がりに消費喚起と長時間労働の削減の一石二鳥を目論んで実施した政策が、なぜ虻蜂取らずに終わったのでしょうか?筆者は3つの敗因があると考えています。以下、順に見ていきましょう。

1.フォトジェニックな政策

英語弱者の私が最近知った単語にフォトジェニックというものがあります。私は、要はインスタグラム映えする人々の耳目を集める食べ物や風景などのことを指していて、勝手にキャッチフレーズの写真版だと理解しています。

フォロワー、非フォロワー問わず、一つでも多くのいいね!を獲得したいわけですから、結局、どれだけヴィジュアルで印象に残せるかが成功と失敗を分けるポイントになるのだと思います。で、フォトジェニックな対象を求めて、インスタグラマーたちは文字通り東奔西走あるいは自作されているのでしょう。お疲れさまです。

かなりこじつけですが、そうしたフォトジェニックななにかを求める最近の風潮の政策版がプレミアムフライデーだったのではないでしょうか。

つまり、インスタ受けするフォトジェニックななにかと同様、とにかく目立ってインパクトを残せればよいのです。残念ながらなのか、当然ながらなのかは分かりませんが、プレミアムフライデーの恩恵を受けたのは、ごく一部で、日本全体で見れば大失敗です。これは現時点では国民の誰しもが認めるところでしょう(プレミアムフライデーに関わった人々を除けば)。

しかし、先月のプレミアムフライデーを前にして、「プレミアムフライデー 定着の兆し」という全面広告が読売新聞(!)に出ていました。

「プレミアムフライデー 定着の兆し」 全面広告に失笑...「虚構新聞」もネタに(2017年6月28日 J-CASTニュース)

実際、政策の提案者から見れば、大成功と言えるかもしれません。なぜなら、プレミアムフライデーというキャッチーなフレーズは、それとは無縁な大衆から侮蔑と怨嗟の対象としてであったとしても、華やかなアイドルたちの映像とともに、国民に対して強烈なインパクトを与えたからです。期待された政策効果が全くなかったとしても、当事者の脳内では大成功なのです。まさに、フォトジェニックななにかが社会にどのような影響を与えるかではなく、どのぐらい強いインパクトを与えられたかが全てなのと同じ構図です。

どこかは存じ上げませんが、プレミアムフライデーは、広告代理店お得意のキャッチフレーズ先行で見栄えがいい政策だとツクヅク思います。しかも、クールビズの二匹目の泥鰌っぽいところも個人的には大好きです。

2.お友達政策

プレミアムフライデーの推進母体は、経済産業省と経団連つまり大企業の経営層です。大企業トップの周囲にはもちろん、政策の企画立案に携わる官僚や広告代理店の大学時代の友人知人(周囲)には大企業で正規雇用、しかもそういう有名企業・官庁に就職ができる大学に所属できるのは裕福な層がほとんどですから、中小零細、非正規、非裕福・困窮層の置かれている状況が分からない。知っているにしてもデータの上だけで、一応、政策当局者のたしなみとして知識は持っています。

つまり、お友達同士、仲間内の上方バイアスがかかった情報だけに基づいて政策を作っていて、しかも昭和時代、もしくは官僚たちの夏!のような権威主義の残滓が根強く蔓延っているため、お役所が決めたことをマスメディアを使って大々的にプロパガンダすれば、民が粛々と従うと思っている節が感じられます。

何と申し上げますか、お友達のお友達によるお友達のための政策みたいで、ある意味すがすがしいですね!

3.実は日本でも深刻な分断

日本の経済構造の特徴と言えば、大企業と中小・零細企業、正規雇用と非正規雇用、製造業とサービス業の間にある格差、もしくは二重構造と言ってもよいでしょう。戦前から続く二重構造は高度成長の恩恵を受けて消え去ったかに見えましたが、失われた20年を経て、どっこいリバイバルを遂げたようです。最近は特に、そうした属性の違いの間の賃金格差、福利厚生格差、身分保障格差等さまざまな格差が指摘されています。最強なのは、大企業×正規雇用者×製造業(金融・商社等一部サービス業)ですが、彼ら彼女らがそうした特権を享受できるのは、中小・零細企業に働く方々の犠牲があってなのです。現在の日本のような成長のない経済では、ホワイト企業はブラック企業なしには成り立ち得ません。

こうした状況下で、消費しろ、休みを取れ、と号令されても、それに従える企業や労働者はごく一部の特権階層に過ぎないことぐらい、プレミアムフライデー政策を考えた方々やその周りの人々は分からなかったことが筆者には逆に不思議です。

まさに、自分の属する階層以外見ざる知らざる聞かざる、なのでしょう。

プレミアムフライデー騒動が明らかにしたのは、日本には官・大企業(トップ)とそれ以外には深刻なそして絶対に越えられない壁つまり分断が存在していることだと改めて実感した次第です。さらに、プレミアムフライデーにとどまらず、政策当局がどこの誰の方を向いて政策決定を行っているかがはっきりしたようにも感じました。

なぜ、本質的な解決策にならないのか?

プレミアムフライデーの問題意識は、元々、景気が上向きつつある中、消費が伸びないのはなぜか?それは長時間労働のために消費する時間がないからだ!というものだったと理解しているのですが、前記事に書きました通り、そもそも長時間労働で消費が伸びないのだったら、毎月最終金曜日だけ退勤時間を早めたりしないで、有給を取りやすい職場環境やそもそも長時間労働の是正策をこそ考えるべきでしょうし、所得の持続的な増加をもたらす資源配分を行うのが本筋です。

長時間労働の是正と消費喚起策という政策目標に対して、プレミアムフライデーのような小手先の政策しか出てこないのは、お友達への配慮なのでしょうか?それとも想像力の欠如なのでしょうか?もしかすると、政策立案能力の劣化なのでしょうか?

まさか、天下りが厳しくなったので、現役のうちに名を売って評論家とかコメンテーターに転身するために目立たないといけないから?などではないことを祈ります…。