ドゥメイン投票、年齢別選挙区、平均余命投票など

シルバー民主主義に対抗して若者の政治的発言力を高めるための手段として、しばしば言及されるのが、ドゥメイン投票年齢別選挙区平均余命投票です。今回はそれらについて簡単に紹介したいと思います。

ドゥメイン投票

アメリカの人口学者Paul Demenyが1986年にPopulation and Development Reviewで発表した"Pronatalist policies in low-fertility countries: Patterns, performance, and prospects"に端を発するのがドゥメイン投票です。

簡単に言いますと、未成年の子供を有する親にその子供の数だけ投票権を与える制度です。

この場合、投票権を実際に行使するのは子供ではなく親であることに注意する必要がありますが、親は自らの子育て環境や子供の将来を改善してくれる政党なり候補者に投票することが期待されています。性善説ですね。

もちろん、親が子供の嗜好を正しく認識し投票する蓋然性は不明です。

晩婚化が進む社会にあって未成年の子を持つ親世代の区切りをどうするかという難しい問題はありますが、仮に50歳未満世代を未成年の子を持つ親世代だとしますと、以下の図のように、投票率如何によりますが、そもそもドメイン投票の効果は発現する間もなくシルバー民主主義の前に散ってしまうことが分かります。

ドゥメイン投票の効果(%)
ドゥメイン投票の効果(%)

年齢別選挙区

次は年齢別選挙区です。井堀利宏東大教授と土居丈朗慶大教授がお二人の共著『日本政治の経済分析』(木鐸社)で提案されたのが最初です。

年齢別選挙の発想はかなり明快で、年齢別の投票率の高低にかかわらず、一定の世代代表を議会へ送りましょう、というものです。例えば、議員定数が10で20-30代(青年区)、40-50代(壮年区)、60代以上(老年区)の人口比率がそれぞれ25%35%40%の場合、それぞれの世代別選挙区から選出される議員数は、青年区10×0.25≒3、壮年区10×0.35≒4、老年区10×0.40=4となるわけです。

このやり方ですと、人口構成と各々の代表構成が投票率にかかわらず対応していることになります。

ただし、人口構成の変化がシルバー民主主義には重要なわけですから、例えば、改変型として、代表の数を人口構成に応じて割り当てるのではなく、各世代共通で4にするとかというものも考えられます。

平均余命投票

最後に、平均余命投票です。竹内幹一橋大准教授「年齢別選挙区」で子どもの声を政治に生かせ、小黒一正法政大准教授が提唱されています。

簡単に言うと、残り人生の長さで一票の重さを変えましょう、という制度ですね。

例えば、現在20歳の男性の平均余命は厚労省の簡易生命表によれば60.04年なので60票を与えることになります(竹内先生の元の案では平均余命の違いでウェイトづけする)。

これによって若者の声は政治の場に届くのでしょうか? 一定の仮定のもと計算した結果が下記のグラフです。

平均余命投票
平均余命投票

この試算結果によれば、これまで通りの一人一票方式のもとでは40歳未満の全有権者に占める割合は31%に過ぎませんが、平均余命投票では過半数を超える結果となりますので、確かに、若者の声を政治の場に届けることはできそうです。

積極的な一票の格差の追求が必須

結局、いずれの方法も、人口構成のアンバランスに抗して相対的少数の世代の政治的権利を擁護するには、一票の格差を積極的追求する必要があるのが分かります。この辺りは、過去の記事参議院の存在意義って?でも触れましたので繰り返しませんが、少なくともシルバー民主主義を懸念する側にとってはもはや共通理解されてると言っても過言ではないでしょう。

抽出熟議型投票

これまで他の研究者の方々が提案された投票法について見てきたわけですが、筆者自身も、経済学者(笑)として経済学の末席の末席に連なる身としましては、なにか新しい方法を提案しないといけないという強迫観念がありますので、まだ温め中ではありますが、開陳致したいと思います。

これまで投票は悉皆型であったわけです。つまり、有権者全員に意見を聞くという形式なわけですが(もちろん、棄権者もいますが)、選挙を前に各種マスコミが独自の手法と経験を活かし予想したものと現実の選挙結果を見ますと、かなり高い精度で予測と結果が一致しているのを見ますと、特に悉皆型にこだわらなくてもいいのではないかと最近考えるようにっております。

要すれば、サンプリング調査に変更しても、選挙結果を再現するという意味では、大きなはずれはないでしょうというのが私の見立てです。ただ、サンプル調査にするだけでは、シルバー民主主義には対抗できませんから、これに熟議型の投票を組み合わせたらどうかと思います。そういう意味で、抽出熟議型投票、と呼んでいます。

つまり、有権者を、年齢構成が再現されるように”無作為”抽出して、抽出された有権者に、幾つかの重大な論点に関しては、専門家等から意見形成のための十分な情報提供を受けた上で、自ら各政党候補者のマニュフェスト、公約を吟味してもらって投票してもらうという形式です。

それぞれの論点に関して、利点だけでなく不利な点に関する情報が有権者に行き渡れば、マニフェストに騙された!とかいう悲劇はなくなるのではないかと思うのです。

ご意見お待ちしております。