昨年12月の衆院選は違憲状態

本日、1票の格差が最大で2.43倍だった衆院選は無効であると訴えた裁判で、最高裁大法廷は違憲状態だったとの判断を示しました。ただし、選挙は無効との主張は退けられたようです。

2012年衆院選は違憲状態=1票格差訴訟判決―最高裁大法廷

今回の判断を受けて、今年7月に行われた参議院選挙に関する同種の裁判に対する影響も注目されます。

なぜ一票の格差是正か?

では、なぜ一票の格差是正なのでしょうか?この運動を主導するNPO法人一人一票実現国民会議のHPでその設立趣意書を拝見しますと、どうやら基本的人権の一つである参政権に含まれる選挙権の価値の不平等を放置することは民主主義の根幹を揺るがすことになってしまう、という危機感の発露からであるようです。

一人一票は「フィクション」

人類の歴史上、選挙権を誰に与えるかについては、その時代の実情に応じて決められていたという歴史の流れの中で、1925年に普通選挙法が成立し25歳以上の男子に、次いで1945年の改正で日本国民たる20歳以上の男女に等しく選挙権が付与されることになったわけであります。つまり、それ以前の日本においては(事情は各国とも共通)一人一票すら持てなかった時代もあったわけでありまして、選挙権というものはその他の多くの権利と同じくフィクションであると言えます。

まぁ、しかし、フィクションではあるというものの、一度手に入れた一票の権利ですから、「居住地によって一票の価値が異なるのはどうなのよ?それって、制限選挙と本質的には同じじゃね」というのは全く同感でありますし、費用ばかりかさんで一文の得にもならないのに、日本の民主主義を守りたいという使命感からこの運動に携わられている方々には頭が下がる思いでいっぱいです。

選挙権の価値の平等をどこまで追求すべきか?

ただし、さはさりながら、フィクションの線の引き方に異論と言いますか、若干の懸念があるのもまた隠しようのない事実でありまして、要点は次の3つです。

  1. 衆参ともに(人口で測った)一票の格差是正を目指す場合、最終的には全国を一つの比例区とせざるを得ないと思われるのですが、その場合、衆議院と参議院は本質的に同じものとなるので、同じものを2つも維持するのは全くの無駄であり、当然参議院は不要となるので廃止すべきでしょう。現状でさえ衆院のカーボンコピーと揶揄される参院ですが、「代表原理」と「その代表原理に整合的な選挙制度」までもが同一であればカーボンコピーどころの騒ぎではなくなるのは必定です。即刻廃止するのが国民のためであります。
  2. 一院制になると、単なる数の勝負になってくるので、昨日の記事で指摘したシルバー民主主義の弊害が懸念されるのと、地方の利益を守る新たな工夫が必要になること。まぁ、現在は地方が都市部よりも優遇されすぎているという見方もあるわけで、一票の格差是正も都市部の利益を確保するための運動と見ることもできるので、取り立てて地方の利益を守る工夫なんて不要との考えもございましょう(斯く申す私も国土の均衡ある発展の呪縛からそろそろ解き放たれるべき時が来ていると考えておりますし、この辺りについてはまた別途考えを開陳したいと思っております)。
  3. 現有権者内での投票価値の平等もいいけれど、ゼロ票しか持ってない世代の権利はどう考えてるの?つまり、国民投票法における投票年齢を18歳に引き下げるだけでスッタモンダ(国民投票法案「今国会提出は困難」公明・斉藤氏、「20歳」に党内反発)を繰り広げる与党がどこかの国にあるわけですが、そもそも、現在20歳未満の若者たち(世代間不平等の観点からはまだ生まれてない将来世代も含む)は1票未満の票どころかゼロ票なわけでして、意見表明の機会を与えられることもなくそのくせ財政と社会保障の債務だけは押し付けられている状況です。法の下の平等を根拠に訴えるのであれば、ゼロ票世代の権利保護についても情報発信するべきでしょう。

同じ日本人の中に、一票未満の投票権しかもたない「一人前以下の日本人」がいることは、 不正義の最たるものです。正義は速やかに実現されなければなりません。

出典:一人一票実現国民会議設立趣意書

上の引用文には全く賛成でありまして、即刻ゼロ票世代の不平等を取り除かなければなりません!

結局、選挙権の価値の平等を突き詰めるあまり参議院の廃止まで持っていくのか、あるいは適当なところで手打ちして衆参で異なる投票制度を求めるのか(その場合、どちらかの院では投票価値の平等は毀損される)、はたまたもっと他の選択肢でも良いのですが、一大国民運動になりつつある今となっては、格差是正を最終目標とせずに、ちゃんと落とし所を考えておく必要があるのではないか?というのが私の考えであります。

なお、真面目な運動に対するちゃちゃであり重箱の隅をつつく揚げ足取りでしかないという至極真っ当なご批判は当然全て受け入れる覚悟であります。

みなさまのご意見をお待ちしております。

おまけ

選挙権に関する私の考えは以下でも披露してます(少しずつ変遷してきてますのでその当時の考えという限定ですが)