日本にとっては、まさに「首の皮一枚つながった」という感じだろうか。

東京五輪での大失速からわずか3か月で、メンバーも2人入れ替わった。

しかもその2人は、世界選手権初出場だ。

不安がないといえば、嘘になる。

関係者も選手も、そんな状態で迎えた世界選手権ではなかったかと思う。

しかし、10月29日に行われた団体総合の「ボール×5」では、新生フェアリージャパンは、不安を払拭するはつらつとした演技を見せてくれた。細かい部分では多少の狂いはあったかもしれないが、このチームとしての初舞台、それもプレッシャーのきつい自国開催の演技としては合格点の演技だった。

 「フープ&クラブ」では、落下を含めいくらかのミスが出てしまい、団体総合4位とメダルは逃したが、東京五輪のときの崩れっぷりを思えば、健闘と言える演技であり結果ではなかったか。

そして、今日。

大会最終日に行われた団体種目別決勝には、フェアリージャパンの「5大会連続メダル」がかかっていた。

おそらく。

「失うものはなにもない」捨て身の状態で迎えた団体総合のときとは、少し気持ちが違っていたのではないだろうか。少しばかりの自信と少しばかりの欲。そして、「メダル獲得を途切れさせてしまうかもしれない」という不安。意識はしていなかったかもしれないが、頭のどこかにはあったのではないかと思う。

1種目目の「ボール×5」は、団体総合のときと同様かそれ以上に、いい動きをしていたと思う。中盤で惜しい落下があったが、後にはほぼ響かないミスだったのでそれほど大きなダメージはなく、悪くはない演技だったと思う。得点も44.500と落下があったわりにはのびた。この時点では第1演技者だったRGFに次いで2位。

しかし、その後に登場したベラルーシが素晴らしい演技を見せた。さすがにこれは日本よりは上にくるだろうと思ったが、なぜか44.100。なにしろ常にボールが宙に浮いているような演技だ。ぱっと見ではわからない細かいミスがあったのかもしれない。だとしたらこれで日本は命拾いをした。

日本の「NINJA」をイメージした曲を表現力豊か、かつテクニカルな演技で表現したイタリアが45.600と日本を上回り、この時点で日本は3位。

残る2チーム、中国とブラジルもミスらしいミスのない素晴らしい演技を見せたが、団体総合のときから、印象よりも点数は低く、日本を上回ることはできず種目別決勝でも同様だった。結果、日本はまず「ボール×5」で銅メダルを獲得したが、今ひとつスッキリしないメダル獲得だった。

続く、「フープ&クラブ」は、日本より前に演技をしたスペイン、ベラルーシにミスが出た。とくにベラルーシは「ボール×5」で獲り逃したメダルを! という気迫の演技だったが、最後の最後で大きなミスが出てしまった。

3番演技者だった日本にとってはチャンス到来だった。ここで会心の1本が出れば、今度はスッキリとメダルを獲ることができる可能性はあった。

が、出だしは悪くないように見えたが、演技中盤から見てとれる範囲でも3回の手具落下があった。これはちょっと厳しいな、と思ったが、得点は40.900。スペイン、ベラルーシよりは高い得点だった。

日本の次に演技したアゼルバイジャンは、移動が多く、身体難度のばらつきもあり点数が伸びなかったが、5番目に登場した中国は、ここでもほぼノーミスのクリアな演技を見せた。多少の移動はあったかもしれないが、落下はなかったように見えた。後半に向けてどんどん盛り上がっていく攻めた演技で、オリジナリティーあふれるリフトでも度肝を抜く。これからの中国は上位国にとっても脅威になると感じさせる演技だったが、40.850でわずかに日本に及ばず。

7番目に登場したイタリアは、演技序盤に大きな移動が1か所あったが、その後はキレキレからしっとりとした美しさも見せるじつに芸術性の高い演技で、42.275をたたき出し1位に躍り出た。

最終演技者だったRGFが、そのイタリアを突き放すかと思われたが、演技序盤でまさかの落下。その後も、移動や不正確な投げ受けが見受けられ得点が伸びず、40.950と2位に終わるという番狂わせが起きた。

いや、番狂わせというには、あまりにもイタリアの演技がよかったし、RGFは誰の目にも明らかなミスを犯してしまった。

審判はちゃんと見ているし、公正な採点をしているのだと思う。

だから、ロシアが負けることだってあるのだ。

結果、日本は、「フープ&クラブ」でも銅メダルを獲得したが、こちらは「ボール×5」以上にスッキリしなかったように思う。もちろん、メダル獲得は嬉しいことだ。5大会連続メダルも凄いことには違いない。

が、できることなら、いい結果はいい実施についてほしい。

東京五輪の体操競技個人総合で金メダルをとった橋本大輝選手の跳馬での着地を巡って、「本来は中国の選手が優勝だった」という誹謗中傷が巻き起こったことは記憶に新しいが、あのとき、橋本選手は自らのSNSで「(採点は正しいとFIGが発表してくれたが)疑惑の判定となってしまう演技をしてしまったことは申し訳ありません」と書いていた。

体操も新体操も、一般の観客の目にはわからない採点の基準がある。ミスには見えなくても減点になるところもあれば、見た目ほどには引かれないものもある。

東京五輪では新体操個人でリノイ・アシュラム(イスラエル)が勝ち、団体はブルガリアが優勝した。今回も、団体種目別ではイタリアが一矢を報いた。

こんなことが起きている以上、審判は公正だと思う。「どうせ●●が勝つんでしょ」という時代ではないのだ。

だから、フェアリージャパンが今大会で得た2つの銅メダルも、正当なものであり、新生チームが必死になってつかみ獲ったものだとは思う。

が、できることならば、もっとスッキリした演技で獲れればよかった。

それはおそらく選手たちが一番感じていることだろう。

いずれにせよ。

新チームのデビュー戦としては上出来! だったのではないだろうか。

もちろん、やり切れなかったことはたくさんあると思うが、それは今からの宿題だ。

今回を乗り越えた経験を得て、次のステップに進めばいいだけのことだ。

競技終了後に行われたGALAでのフェアリージャパンの徒手演技はとても心を動かすものだった。うまくいくことばかりではなかっただろうが、得たものもたくさんあった。

そんな貴重な時間を彼女たちは共に過ごしてきたのだな、としみじみ感じさせてくれる演技だった。

今までもこうして、フェアリージャパンのバトンは渡されてきた。

そして、また次に渡されるのだ。